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[レビュー]Silent Kingdom – In Search of Eternity (ボスニア・ヘルツェゴビナ/メロディック・ブラック・デス)

[レビュー]Silent Kingdom – In Search of Eternity (ボスニア・ヘルツェゴビナ/メロディック・ブラック・デス)

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ出身のメロディック・ブラック・デスメタル、Silent Kingdomの5thフルアルバム。2014年作品。

これはセルビアのレコード店で買ったもののひとつですが、特価だったのか値札を見るとなんと200円強という驚きの値段。現地バンドの現地盤はかなり安い。

関連情報

バンドのバイオグラフィーについては、彼らの1st、”Bloodless”アルバムの記事に詳しいのですが、少し振り返ると・・・

バンドは1999年にバンドのブレインで、Amir Hadžić氏(ギター&ヴォーカル)と、Sead Tafro氏の2人によって結成されました。この2人はこのSilent Kingdomと同時に、ブラックメタルのKRVでも活躍しました(2010年に解散)。

ブラック/デスメタルに、ボスニアのトラディショナル音楽であるSevdahの要素を取り入れ、独自の音楽性を発揮する彼らは、2014年発表の本作”In Serch of Eternity”のリリースまでに、4作のフルアルバムをコンスタントにリリースしています。ボスニアのバンドで、これだけ継続して作品をリリースし続けているのは、結構珍しいかもしれません。

5thアルバムに当たる本作”In Serch of Eternity”のレコーディングメンバーは、本作では唯一のオリジナルメンバーであるAmir Hadžić氏(ギター&ヴォーカル)と、Stefan Komljenović氏(ドラムス)、Amir Ćefo氏(キーボード)、Jasenko Džipa氏(ギター)、Admir Kecević氏(ベース)の5人。

Jasenko Džipa氏はテクニカル・デスのFestival of MutilationやAfter Oblivionにも参加してる人物ですね。

加えて数名がゲスト参加しています。主なところでは、ドイツのブラックメタルDark FortlessのMorean氏や、セルビアのメロディックメタルAlogiaでの活動が有名(?)なSrđan “Sirius” Branković氏。彼はメロデスのPsychoparadoxの結成メンバーであり、ブラックメタルBethorにも参加しています。

 

彼らの1stアルバムと関連バンドKRVについては↓で紹介しています

[Review]Silent Kingdom – Bloodless (ボスニア・ヘルツェゴビナ/メロディック・ブラック・デス)

[Review]Krv – Ograma/U Kamenom Grobu(ボスニア・ヘルツェゴビナ/ブラックメタル)

プログレッシブ化深まる音像

1曲目はアコースティックギターを中心にしたミステリアスなイントロ。これは作曲・演奏ともにゲストのMorean氏の手によるものです。エキゾチックなメロディは少し荒涼とした雰囲気も漂います。

ヒロイックなリフとメロディーでアルバム本編の幕開けを飾る2曲目は、いきなりSilent Kingdomらしさ満載の、リフだかソロだか分からないようなメロディーが要所で乱舞。疾走パートや、変拍子+うにょうにょしたリフの組み合わせが目まぐるしく展開していく様子は、もはやメロデスというよりはプログレッシブ感が濃厚です。

3曲目も、曲の全体を通して単音うにょうにょメロディー?リフ?がたっぷりちりばめられています。ところどころメロデスらしいヒロイックなリフや進行も聴かれますが、多くを変拍子と単音リフによるエキゾチックな演出が占めています。そしてそのメロディー感は確かに、トラディショナル感というかSevdahの曲にありそうな雰囲気も持ち合わせています。

ただエレクトリックギターの音色でのフレーズなので、あまりSevdahに馴染みのない自分のような聴き手にとっては、単に変なメロディーが鳴りまくってるようにしか聴こえないない可能性も。前述の変拍子の多用とも相まって、もしかすると変態メロデスとして認知されてしまいそうな気もします。良くも悪くも。

そして本作で一番キャッチーなと思われるフレーズを冒頭部に持つ4曲目。なんというか、つんのめる様なテンポがかなり印象的。ダークな雰囲気が全体を覆っていて、後ろのほうではうっすらとキーボードがほわんと鳴っているのが聴こえます。そして曲をリードしていくのが、やはりSevdahの音階(?)によるエキゾチックというかオリエンタルというか・・・のメロディ。

曲中にはところどころに、ちょっとジャジーなパートや、ゲストの歌唱によるクリーンヴォーカルのパートもあって、プログレッシブ感も満載。

5曲目のイントロ部のパーカッションのパイプ系(?)のメロディは、Sevdah風、というのが一番分かりやすい瞬間かも。この曲も基本的にうにょうにょした単音メロディがなりつつあれこれ展開していくのに違いはありませんが、部分的にスピード感があったり、メタリックな格好良さが強く出てる気がします。一番メロデス的にストレートに楽しめそうな曲かも知れませんね。でも中盤にはちょっとしたしかけもあって、やっぱりSevdah。

 

全7曲の本作ですが、続く6曲目・7曲目も基本的なところは変わりません。ガリガリとしたメタルをベースに、デスヴォイスの歌唱。音楽の中心に据えられているのはボスニアの伝統的Sevdahのメロディで、アクセントを効かせながらプログレッシブに展開する。そんなところでしょうか。

Sevdahメロデススタイルの集大成

本記事執筆時点では、自分が聴いたのは1stアルバムのみなのですが・・・そこで聴けたのは、メロデス・ブラックにSevdahのメロディを取り入れた作風で、まだデス・ブラックの要素も比較的濃く感じられたように思います。メタルらしさとSevdahらしさの割合で言うと、7:3か6:4でしょうか?

比較して本作は、鳴ってるメロディのかなりの部分がSavdah風味な気がします。割合にすると、メタル3:Sevdah7か、もう少しSevdah寄り?

さらに本作ではプログレ感が大幅増で、そのメロディの特徴もあって、前述のように変態メロデスと紙一重な感じも。その意味では、なかなか理解するのが難しく、とっつきにくい面もあるように思われます。実際、予備知識なしで本作を聴くと、なんだか訳分からないメロディがうにょうにょしてる謎のメロデスになってしまいそうな。。

ただ断言します。好き嫌いは別にして、彼らの音楽は訳が分からないのではなく、Sevdahというボスニアならではの要素に聴きなじみがないせいで、イマイチ入ってこない感じがするだけです。

 

次作では、ヘヴィメタルであることを離れ、ほとんどフォークなプログレロックへと旅立ってしまうのですが・・・本作はその意味でも、メタルとしてのSilent Kingdomあるいは、プログレッシブSevdahメロデスという、前人未到のスタイルの集大成に違いない作品。

 

Sevdahって何?Sevdah関連音源を↓で紹介しています。ご参考に。

[バルカンの音レビュー]Divanhana – Zukva(ボスニア・ヘルツェゴビナ/フォーク・トラディショナル)



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