[レビュー]Defiant – Era of Substitution (クロアチア/メロディック・デスメタル)
クロアチア出身のメロデス、Defiantの2ndフルアルバム。2012年作品。セルビアの名レーベルGrom Recordsからのリリース盤。
関連情報
バンドの結成は2005年のことで、仕掛け人となるのはKristijan Krpan氏。翌2006年には1stフルアルバム”The End of Beginning”をリリース。この頃は北欧系メロデスを志向していました。精力的にライブも行っていた彼らですが、2009年に一度バンドは解散。
一時的に活動を停止していたのですが、バンドの創始者であるKristijan Krpan氏は2011年に再び活動を再会。メンバーはKrpan氏以外すべて新加入メンバーと交代、新生Defiantとしてバンドは再誕を果たします。
そして2012年に制作されたのが2ndフルアルバムとなる本作”Era of Substitution”。セルビアのエクストリームメタルの名門Grom Recordsよりリリースされることとなります。
本作でのバンド編成は、仕掛け人のKristijan Krpan氏(ギター)、Filip Mihoci氏(ギター・ヴォーカル)、Mislav Gojo氏(ベース)、Leonardo Marković氏(ドラムス)という4人。
本作の後も、2015年に3rd”Morbid Spiritual Illness”、2018年には4thアルバム”Insurrection Icon”をリリースしていて、コンスタントに活動を続けています。本記事執筆時点での最新作は2022年のEP”Vanguards of Misrule”となっていますね。
荒れ狂う暴虐にほんのりメロ
彼らDefiantの作品は本作”Era of Substitution”が初聴きになりますが・・・
音作りのグチャリ感やメロディ感の両方とも、スウェデスあるいはスウェディッシュメロデス勢をお手本にしてそうなデスメタル。例えばIn Flamesをもうちょっと爆裂方面に振ったみたいな質感、といった趣のメロデスでしょうか。
ウェットな声質の低音グロウル時々ハイピッチの絶叫というヴォーカル、低音を聴かせて程よくドロみの効いたギターの歪み具合を通して、アルバム全編に通じる狂暴凶悪性。同時にギターリフの端々で、メロデス的音使いも聴けて、狂暴ながらもほんのりメロディックなところもあるという、甘くなりすぎないメロデス具合のバランス感覚が素敵。スウェデス8:メロデス2くらいの配合かな?
余計な前置きは一切なし。冒頭1曲目から、ドカドカバシバシと刺々しいドラムスのリズムに、緊迫感みなぎる単音ギターリフ、噛みつかんばかりの咆哮が一体となって炸裂。狂暴な音像ながら、要所で奏でられるトレモロリフがほんのりメロウなところが彼らの持ち味で、さっそくいい味を出しています。
続く2曲目も、ブラストビートで爆走しつつ、湿り気たっぷりの不気味なギターリフでうねるように聴き手に攻め入ります。よく聴くとここでも、ギターリフの歌心はメロディック&メロウで、こういうさりげなくメロデスしてるのが好感触ですね。
変拍子を重厚に響かせつつ、ブラストビートも交えながらドスドスと進行して見せる5曲目。曲後半に向けてうっすらメロディアスなトレモロリフやギターソロを配置して、よく聴けば邪悪でありつつ結構泣きのドラマ性を感じさせる一品に。スウェデス風に歪んだ音質で狂暴性が前面に目立ちますが、やはりメロデスらしいエモーショナルな美意識があちこちに散見されるようです。
冒頭のビョーキが蔓延るみたいな音色のギターリフにちょっとドキドキする7曲目。中盤のスローダウンパートのザクザクとした刻みがジワジワと不穏さを投げかけ、その後一気にアツいトレモロリフ&ブラストビートになだれ込む様はなかなかに圧巻。この曲に限りませんが、ちゃんと要所でギターソロが切り込んでくるのも素敵で、楽曲の中に彩りを添えてます。
比較的速度を落としてジワリと迫り、ギターリフの響きにはどこかニヒリスティックさが漂う8曲目。そして9曲目では、曲の幕開けからブラストビートがバカスカ打ち鳴らされ、薄気味悪いトレモロリフに、こだまする絶叫が鬼気迫るよう。これでもかと言わんばかりに彼らDefiant節の異形メロデスが相変わらず炸裂してます。
先ほどは、In Flamesをたとえに挙げましたが・・・ボーナストラックの10曲目はまさにIn Flamesの”Behind Space”のカヴァーが登場。想像通りというか案の定というか、期待を裏切らない選曲で思わず笑みがこぼれそう。本編の楽曲との違和感もほとんどなく収まってます。
こうして聴いてみると、基本はアルバム全編に渡って騒々しい暴虐メロデスに徹していて、作品中での緩急とかそういう事はそれほど考慮されてなさそうな雰囲気。よく言えば統一されててたっぷり爆音に浸れる一方、悪く言えば聴いててやや金太郎飴みたいな感覚に陥る事もなきにしもあらず、です。
甘味抜きメロデスのセンスが良き
メロデスというと、バンドによってはちょっとクサメロが濃すぎて甘くなりすぎたり、デスメタル感が失われたりしてる様に感じられるものも多くて、個人的には結構気分によって好みにムラが出るスタイル。。
そんな中で、本作の様な基本狂暴エクストリームで時々ほんのりメロ、くらいの作風は何時でも美味しく味わえるので良きです。甘すぎない、ビターなメロデスって案外少ないように思うのですが、そんな希少な仕上がりの作品になってますね。
どこかインパクトに欠けるような気もしないでもないですが、余計な混ぜ物をしない潔さって事で個人的には好きですこういうの。
という事で、甘ったるくならないメロデスという、絶妙な塩梅で作品を仕上げてくるあたりに彼らDefiantならではのセンスを感じる気がする良作アルバムでしょう。他のアルバム達もチェックしたくなりますね。
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