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[レビュー]Silent Kingdom – Bloodless (ボスニア・ヘルツェゴビナ/メロディック・ブラック・デス)

[レビュー]Silent Kingdom – Bloodless (ボスニア・ヘルツェゴビナ/メロディック・ブラック・デス)

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ出身のメロディック・ブラック・デスメタル、Silent Kingdomの1stフルアルバム。2004年作品。自分がゲットしたのはWalk Recordsというところから出てる再発盤で、ボーナストラック2曲が追加収録されています。

本レビューの執筆にあたり、今回は幸運にも公式バイオグラフィー記事と、バンドの仕掛人であるAmir Hadžić氏のインタビュー記事を発見できたので、それらとあわせて、バンドの秘密?に迫ってみたいと思います。

バイオグラフィーとか

バンド結成は1999年。Urielというデスメタルが前身のバンドに相当するみたいですが、そのドラマーのSead Tafro氏と、バンドのブレインの役割を担うギター&ヴォーカルAmir Hadžić氏の2人によって、はじめはサイドプロジェクイトの位置づけで始まっています。

これまで彼らがやってきたのとは何か違うことをやろう、というのが結成当初のアイデアだったらしく、そのコンセプトは、ボスニアの歴史と、ボスニアの伝統音楽であるSevdalinka(セヴダリンカ)をベースにしたものだったようです。

ブラックメタルとSevdalinkaというこれまで誰も試みなかった組み合わせ、ということで、その音楽的な可能性というか、発展の余地?みたいなものによって、彼らはUrielでの活動を止め、Silent Kingdomで本格的に活動していくことになります。

2本のデモはボスニアのアンダーグラウンドシーンで好意的に受け入れられたようで、これらのリリース後、バンドは彼らのヴィジョンを理解できるメンバー探しをスタートさせます。ライブ活動を視野に入れてのメンバー探しだったようですが、サラエボにはブラックメタルの出来るミュージシャンがいなかったのか、どうやら難航したようです。

しばらくの活動休止期間も経て、2002年にはEPをリリース。その後バンドはギタリストのEdin Čehović氏をメンバーに加えることになります。しかしながらバンドにはベースプレイヤーが不在だったため、Edin Čehović氏は一時ベースを担当することになりました。

また同年には、本記事の本題である1stアルバム、Bloodlessの製作を開始、そして2年後の2004年にリリースと相成ります。そしてその後、Edin Čehović氏の兄弟であるEmir Čehović氏がベーシストとして加入、これでEdin Čehović氏は本来のギタリストポジションを担うことになりました。

これでようやく、本作リリースまでの彼らの軌跡を、なんとなくフォローできましたね。

KRV関連

本ブログでは、このSilent Kingdom関連で、同郷のブラックメタルKRVのレビューを載せているのですが、この記事書きながら資料読んでて、ようやくSilent KingdomとKRVの関係性が少し見えてきました。

なんでも、Bloodlessアルバムのリリースの翌年である2005年(2006年という情報もあり)、ドラマーのSead Tafro氏がKRVの活動に専念するためにSilent Kingdomを脱退。この時期が、実質的なKRVの活動のスタート地点になるのかも知れません。そしてそれ以降、KRVとして本格的に作品をリリースしていくことになります。

ただドラマーのSead Tafro氏はSilent Kingdomを辞めてまで、2010年ごろのKRV解散まで活動してた様なんですが、他のKRVメンバーは上記の2004年時点のSilent Kingdomと全員同じで、そのラインナップは2010年ごろの解散まで不変という・・・同メンツの別バンドとでも言うべき構成。。なんというか、なるほどですねぇ。

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Black/Death + Sevdalinka

Metal Archivesのカテゴリ分けでは彼らはメロデスという分類になってて、また彼らのインタビュー記事などでは当時のスタイルをブラックメタルと呼んでて、表記にちょっとズレがあるので・・・ココではブラック・デスと表記することにしましょう。

バイオグラフィーの項でも少し触れましたが、Silent Kingdomの音楽は、ブラックメタルとSevdalinkaを組み合わせたものということになります。

そうするとここではまた、Sevdalinkaについて触れなくてはならないのですが、自分も未だに勉強中の身で・・・一言で言うなら、ボスニアのトラディショナル・フォーク音楽という感じで、おそらくそこには、西ヨーロッパ風+中近東風メロディーの要素が含まれている、そういうやつのことで合ってるんではないかと思います。多分。

これについては、ボスニアの英会話講師の皆様にも確認取ってみたいところです。

 

実は本作を聴いてみての第1印象というのは、正直それほど良いものではなかったのですが、こういう前置きの下で聴くと・・・確かに、メタルに、トラディショナル音楽のメロディーが加わっている様に、聴こえてきます。

サウンドプロダクションは、率直に表現してやや貧相な感じ。例えばギターはクリアながらちょっと線の細い感じ、ドラムスはまるで打ち込みかのような音がしてます。

これ書くのにリピートしてたら、結局慣れてしまって、それほど気にならなくなってしまいましたが、初聴きの瞬間は、この音質でネガティブな印象を持ってしまうかも知れませんね。

 

それから肝心の曲ですが、音楽の下敷きにあるのはやはり、ブラックメタルあるいはデスメタルという事になるんだと思います。その上に、トラディショナル音楽のメロディーを乗せていて、パッと聴いた印象としては、変なメロディー満載の、よく分らないメロデス、みたいな。。

こうして少し彼らの音楽に対する理解も進んでくると、Sevdalinkaの香るメロブラ・メロデスという事は分りました。このことを意識しておけば、それほど当惑することもないだろうと思います。

・・・が通して聴いてると、曲単位で印象に残るものが全然ない><

どのパートを切り取っても、キャッチー度が低いというか、大量にメロディーが鳴ってても、案外アグレッシヴにブラストビートが取り入れられてても、どうも耳を引かないのが弱点?

 

これぞボスニアの香り、という事で。

また、プログレッシヴとでも呼びたくなる曲展開もあったり、実際10分近い長さの曲もあったりで、ある意味難解というか・・・彼らの音楽にトラディショナル要素が取り入れられていると知らずに聴けば、ただただ理解に苦しむ謎盤なだけだったかも。

逆に言えば、この意味不明さと紙一重のところに、彼らの、とりわけボスニア出身というオリジナリティーがあるとも言えるんでしょう。

そういえば実際、ボスニアのメタル英会話講師が、トラディショナルな要素のあるバルカン産メタルのひとつという事で、このSilent Kingdomを取り上げてくれてました。

こうしていろいろリサーチしながら深掘りして聴くまでは、その真意に全くピンときてませんでしたが汗。。

本作Bloodlessは彼らの1stフルという事になるので、この後の作品たちがどんな進化を遂げているのかも、気になりますね。

 

例えばヴァイキングモノとか、ペイガン系とか、フォーク系などなど、自らの出自?ルーツ?を取り入れたメタルって結構出てきてると思いますが、彼らSilent Kingdomもそういった要素を持つバンドであると言えるでしょう。

それがやや聴きなれない音であるのは、なぜなら我々がバルカンの、とりわけボスニアの伝統的な音楽に無知であるからに他ならないという事で・・・

バルカンの地、ボスニアが香る、これぞ辺境系と断言できそうな作品。

 

↓参考にしたソースたち↓

Silent Kingdom Official (Biography)

Dvije decenije crnog sevdaha(Interview with Amir Hadžić)

 

↓Sevdalinka関連作品。ご参考までに。↓

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