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[レビュー]Númenor – Draconian Age (セルビア/メロディック・エピックメタル)

[レビュー]Númenor – Draconian Age (セルビア/メロディック・エピックメタル)

セルビアの首都ベオグラード出身のメロディック・エピックメタル、Númenorの4thフルアルバム。2021年作品。イタリアのElevate Recordsからのリリース。

カバーアートは1984年のセルビア版指輪物語の表紙だそうですね。

関連情報

Númenorとしての始動は2009年。バンドのブレインであるDespot Marko Miranović氏を中心に2004年ごろからエピック系ブラックメタルをやっていた、前身のEsgarothがその起源になります。

いくつかのEPやシングルのリリースを経て、2013年に、1stアルバム、”Colossal Darkness”をリリース。

セルビアのメタル界の超重要人物で、メロデスPsychoparadoxやメロディックメタルAlogia等々、を率いるSrđan “Sirius” Branković氏がバンドに参加するのもこの頃。彼らの音楽の90年代スタイルのパワーメタル方面への飛躍は、Srđan氏の手腕によるところが大きいのかも知れません。

[レビュー]Númenor – Colossal Darkness (セルビア/シンフォブラック・エピックメタル)

その後、今に見られるRhapsody、Blind Guardian系パワーメタルに、ブラックメタルのフレーバーをまぶしたスタイルを明らかに提示して見せたのは続く2ndアルバム、”Sword and Sorcery”でした。この頃はまだシンフォブラック風味も残っていて、多少過渡期的な感触もありましたね。

 

[レビュー]Númenor – Sword and Sorcery (セルビア/メロディック・エピックメタル)

 

その後、よりパワーメタル色が強まり、収録曲のダイレクト感もずいぶんと増した印象の3rdアルバム”Chronicles from the Realms Beyond”をリリース。ここで本作に至るスタイルが完全に確立されたといってよさそう。

[レビュー]Númenor – Chronicles from the Realms Beyond (セルビア/メロディック・エピックメタル)

そして2021年に4thアルバムである本作”Draconian Age”がリリース。

バンドの編成は前作と同じく、バンドのブレインであるDespot Marko Miranović氏(ヴォーカル)、曲作りの多くを手掛けるSrđan “Sirius” Branković氏(ギター・ベース)、Mladen Gošić氏(キーボード)、Marko Milojević氏(ドラムス)、Željko Jovanović氏(クリーンヴォーカル)という5人。

クリーンヴォーカルのŽeljko Jovanović氏は、同郷のフィーメイル・メロディック・エピックメタルClaymorean(Claymore)の”Lament of Victory”アルバムと”Unbroken”アルバムで、男性ヴォーカルのパートを担当していましたね。

Despot Marko Miranović氏がデスヴォイスを、Željko Jovanović氏がクリーンヴォーカルをそれぞれ担当し、正邪入り混じるファンタジックなトールキン系メタルはここでも健在。というか基本的には前作で確立されたBlackened Power Metalみたいな作風そのままに、よりダイレクトな構成で仕上げてきた印象です。

以下でその音像に触れていってみましょう。

本編 ブラッケンド・パワー!!極まる

作品の幕開けを飾るのは、Blind GuardianのHansi Kürsch氏がクリーンヴォーカルで参加しその高貴なる(?)歌声が響く必殺のメロパワ。ストレートに熱く、ヒロイックな響きを持つ疾走曲で、ここですでに本作が(おそらく)前作の延長路線の作風でやって来たというのを感覚的に示してみせてる、ナイスなつかみを持つ一品です。さっそく本作のハイライトの1つに数えられる瞬間と言えるでしょう。

・・・前作のボーナストラックでは名曲”Valhalla”のカバーをやってて、そこでも彼らのBlind Guardian愛が見え隠れしてた気がしますが、ここでついにド真ん中のコラボが実現しましたね。フロントマンのDespot Marko Miranović氏とHansi氏とは長いこと友人関係らしいです。

 

2曲目はノルウェーの作曲家グリーグの有名曲のひとつ「山の魔王の宮殿にて」のメロディーを大胆に取り入れた・・・というかほとんどそのまんまメタルアレンジに仕上げた一品。曲名もほぼそのまま”Hall of the Mountain King”。曲冒頭のピアノがほんのりジャジーで、メインの裏打ちリズム、うっすらドゥーミーなギターリフとキーボードの響きがいい感じに不穏なNúmenorカラーです。 Marko氏の薄めのデスヴォイスもここでは魔王さながらの濁り感で、絵になります。

クリーンヴォーカル担当Željko Jovanović氏の「ふぇぇあのーーーる!」の歌声が印象的な3曲目。前曲の薄暗い雰囲気から一転、ここでは再び熱く血のたぎる?ジャーマン味の骨太感のメロパワが鳴り響きます。

4曲目は本作中で最も暗黒寄りのトーンな気がする1曲。ほんのりデスメタル風味でもあるというか、スピード感は控えめに、ヘヴィにうねるギターリフにMarko氏の邪悪ヴォーカル、要所で切り込むキーボードの響きが一体になって、なんだか雲行きの妖しい空模様。魔王サ〇ロンは見ているぞ・・・?

6曲目のメロディーはまんまBlind Guardianみたいなヒロイックさというか、メタリックな熱さを滲ませてます。一方で邪悪風味のスローパート、デスヴォイス&語りで陰りのあるパートもあって、そういう構成は彼らNúmenorならではのBlackened Power Metalらしいところかも知れません。

8曲目は個人的に本作で最もお気に入りの曲。高速裏打ちビートとふわりとしたキーボードの響きが幻想的で、目まぐるしく風景が流れ去っていくような感覚が甘美。かと思えばマッチョなギターリフがゴリゴリ鳴ってたりと、耳を引く瞬間も満載。このスタイルの曲は2nd”Sword and Sorcery”アルバムの頃から毎作収められているのですが、毎回うっとりさせられますね。彼らのブラックメタルの起源が一番出てる曲と言えそうです。

ラスト10曲目はエンディングにふさわしい(?)ほんのり哀愁を漂わせつつもさわやかな風が吹き抜ける感触の一品。ヘヴィなリフに、重厚なリズム、のびやかなクリーンヴォーカルと、胸のすくメロディーと、聴いてて心地よいメタルチューンです。・・・で聴いててなんだかちょっと雰囲気違うなと思ったら、ヴォーカルが違ってました。歌声が柔らか&滑らかで、AlogiaのNikola氏みたいな感じもしたのですが、実際はBoris Jekic氏なるゲストシンガーが歌ってる模様。とっても爽快感のある伸びやかな美声で素敵。

キープコンセプトのブラッシュアップ盤

インタビュー中でも、本作の制作にあたっては実験的な要素は省きよりダイレクト&シンプルに、という方向性を取った旨の発言もあり、確かにその通りの音像という感じ。彼ら自身、90年代のパワーメタルのファンで、それを下敷きにしてると語ってますが、実際彼らの音楽から感じられるメタル感というのは、まさにそんな感じ。

その点で言えば、彼らの作品たち、あんまり新鮮味がないのも否定できませんが・・・前作の延長上で、そうしたパワーメタル感をブラッシュアップしてきた作品、ともいえるでしょう。

それから本作では曲それぞれのコンパクトさも印象的。調べると曲のすべてが3分台で、聴いてて非常にさっぱりもしています。それは決して味わいのなさを意味するのではなく、1曲1テーマ、みたいな明確さがあって、曲構成を変にイジって焦点がぶれるみたいな事のない明快さといえそう。

そのあたりの分かりやすさでは、本作”Draconian Age”は現時点で、彼らNúmenorの音楽に触れる最初の1枚としてもぴったりかもしれません。Blind GuardianやRhapsodyみたいな90年代のメロパワを下敷きに、ブラックメタル風の邪悪デスヴォイスも交えたスタイル・・・もはやデス声入りブラガ系って趣ですが、それをよくよく表してる作品でしょう。

Amazon様↓Númenor – Draconian Age

あ、あとは余談ですが、本作CDとTシャツを取り寄せるのにフロントマンDespot Marko Miranović氏と絡んだ話は↓で紹介していますのでご参考に。

[海外通販記]BandcampでNúmenorの新作を注文・無事届くのかやってみた[第7弾]

参考にしたインタビュー記事↓

INTERVIEW W MARKO DESPOT MIRANOVIĆ of “NUMENOR”

Interview with Marko Milojević from NUMENOR

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