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[レビュー]Dead Joker – Ambiviolent (セルビア/デスメタル)

[レビュー]Dead Joker – Ambiviolent (セルビア/デスメタル)

 

セルビア出身のベテランデスメタル、Dead Jokerの(事実上の?)2ndフルアルバム。2020年作品。セルビアの名門レーベルGrom Recordsからのリリースで、公式Bandcampからのお取り寄せの品。

関連情報

本作”Ambiviolent”は、フルアルバムとしては通算3作目にあたる作品になるのですが・・・2001年の前作”Act Ⅱ”は、実質1994年の1stアルバムの再リリースになるので、本作は事実上の2ndアルバムと考えて良さそう。

その点では長い長い時を経ての、待望のリリース!という事になりますね。

本作の編成は、1stアルバムの頃から在籍してるGoran Jovanović氏(ヴォーカル)、Marko Sujica氏(ギター)、Zlatko Obradović氏(ドラムス)の3人と、Predrag Spasojević氏(ギター)、Aleksandar Milutinović氏(ベース)という5人。

ブックレットを見るとマスタリングはスウェーデンのFascination Street Studiosにて、名プロデューサーJens Bogren氏によって行われたとのこと。本作のクリア&リッチな音像に多大な貢献を果たしているものと思われます。

それからゲスト陣も数多く参加。担当パートは明記されていないのですが、Burnig CircleのPredrag Pavlović氏、ブラックメタルVapajのAna Popović女史、スラッシュメタルDeadly MoshのMiloš Priestkiller Stošić氏らが参加しています。本編聴くに、ゲストヴォーカルっぽいパートがちらほらあるので、おそらくそれが中心になるものと思われます。

あとは余談ですが、以前セルビアを旅行した時に、彼らのライブ観てます。↓

[ 聖地巡礼??]セルビア&ボスニアひとり旅~Arsenal Fest参戦@クラグイェバッツpart1[メタルツアーも]

セルビアン・オールドスクール

全体的には、やや地味ながらも古き良きデスメタルの味わいの香る、オールドスクール方面のデスメタルといった感じになるでしょうか。

 

1曲目、本作の幕開けは、ふわふわとしたトーンでなんとも怪しく冷笑的な響きでやってくるイントロ。

そしてそのメロディーを引き継いで、同じ音階のギターリフが重厚にうねる2曲目がシームレスに続きます。一種独特の陶酔感と幻惑感を放つ様な響きは、デスメタルでありながらも同時にグルーヴィな横ノリの感触。と思いきや曲後半では一気に速度を上げて襲い掛かかり、オールドスクール・デスの本領発揮。

その勢いをそのままに、高速ビートと破壊のギターリフが炸裂する3曲目。なんだか聴いてて、ついに本編の幕が開けたー!って感じがスゴイ。トレモロリフの不穏な歌心と質感がいかにもオールドスクール。後半の「ウギヤアァァァ!!」みたいな絶叫はたぶんゲスト参加のどなたかによるものと思われますが・・・誰のだろう。。Deadly MoshのMiloš Priestkiller Stošić氏と予想しますが果たして?

4曲目はザクザクとした刻みのリフがスラッシュメタル風味でもあり初期デスメタル風とも言えそうな一品。リズム隊の騒々しさと打数は抑え目ながら、なんだか妙に迫りくる緊迫感が印象的。後半ではワウ(?)の効いたギターリフがキリキリと響き渡ってます。

5曲目はスローに入り、中盤ではスタスタと疾走。リフはシンプル目でありながらも、デスメタル風の重苦しさもしっかり放ってます。印象的なのは緊張感漂うメロディーのクリーンヴォーカルが登場する点で、これもおそらくゲスト陣の歌によるものでしょうが・・・誰かな。。

続く6曲目は、なんだか暗い部屋のすみっこでズーンと憂鬱に沈み込んでるみたいな重苦しさのスロー曲。曲終盤の狂おしいギターソロが美しい。・・・ここでも女性のクリーンヴォーカルが入ってて、これはおそらくAna Popović女史でしょうか。

前曲もそうですが、クリーンヴォーカルと言っても、例えばメタルコアみたいにアツかったりエモかったりするのではなくて、きちんと陰鬱。その意味ではデスメタルのトーンを損なうことなく効果的に配置されてるのではないかと感じます。

続けてダーク&スローに7曲目が続き、攻撃性の点ではやや中だるみみたいな感じも漂った後・・・8曲目ではブラストビートも登場し再び狂暴化。リフとリズムのトゲトゲしい感じが殺人機械みたいな冷たさにも感じますね。曲ラストのトレモロで畳み掛ける一瞬が非常にスリリングです。

10曲目は叩き付けるようなギターリフの感触が素敵な一品で、ちょっとカドの立ったドラムスの響きもそれにマッチしてて、荒っぽさに拍車をかけてる感じ。

ラスト11曲目はミドルテンポでジワジワ進行しつつ、要所で入るクリーンヴォーカルがミステリアスな余韻を残します。確かに(?)このどうもアルバム全体に漂うほんのり湿り気のある感じからすると、このなんとも言えない不思議な響きと共に終わりを迎えるのは、アリなのかも。

 

音質に関しては、音作りそのものはけっして今風にゴージャスでもないけど、分離がいいのは前述したJens Bogren氏によるミックスの賜物かも知れません。そのせいか、音の響きにどことなくスウェディッシュな質感があるような気もします。音の歪み具合、がそう聴こえるのかな。。

やや地味でも記念すべき1枚

そういえば、彼らの1stである前作も、絵に描いたようなオールドスクールデスでクールな一方、イマイチ印象に残りづらい地味さというか、どれも似たような曲ばっかりに聴こえるのがちょっと残念だったのですが・・・

続く2ndアルバムもどことなくそんなやや地味な印象を引き継いでる様な気もしなくもない。1曲1曲は明確に特徴もあるし、曲それぞれのコントラストの明確さは前作の比では無いのだけど、うーむ。

なんか地味っぽいのは、明らかに必殺級の一撃に乏しいから、という事になりそうです。

とはいえ、1stアルバムから数えて20年以上の年を経て、こうして彼らの新作がリリースされたことはたぶん大大変に意義あることでもあって、その点では個人的には音楽的に少々地味だろうが手放しに喜びたい作品。

いやまぁ、セルビア贔屓なのは否定しませんが、セルビアの老舗デスメタルの待望の新作がついに日の目を見た、という事で万歳な1枚なのです。

 

1994年の前作”Venture”は↓で紹介しています。ご参考に。

[レビュー]Dead Joker – Venture(セルビア/デスメタル)

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