[レビュー] Diluvium – From Always (セルビア/フィーメイル・ゴシック)
セルビア南部の都市、Niš(ニシュ)出身のフィーメイル・ゴシックメタル。プロCD-R仕様。個人的にはプロCD-Rって初めて見ました。なんだか作りがチープだなぁと思ったら、そういうことでした。
関連情報
2007年の作品で、Metal Archivesによると2ndアルバムのようです。・・・というのは予備知識ゼロでセルビア産ってだけでゲットしたので(苦笑
ちょっと調べてみようといろいろサーチしてみたのですが、マイナーなバンドなのかあんまり詳細な資料を見つけられず。。。
バンドの結成は1995年という事で、セルビア産のメタルバンドとしては比較的古くにキャリアをスタートさせてるバンドと言えそう。95年と言えば、現代のシーンというかユーゴスラヴィア紛争後のシーンの黎明期になりそうですね。
デビュー作となる1st”Aurora”をリリースするのが2001年のこと。その後6年の時を経てリリースされたのが2ndフルアルバムとなる本作”From Always”です。
本作の編成はMilica Plavšić女史(ヴォーカル)、Milorad D. Mladenović氏(リードギター)、Vladan Božilović氏(ドラムス)、Andreja Pešić氏(ギター)、Miodrag Stevanović氏(ベース)、Aleksandar Stevanović氏(キーボード)という6人。
ドラムスのVladan Božilović氏は今は同郷セルビアのエピック・フォークメタルДеспот(Despot)でも活動しているようですね。
バンドは今でも解散はしていないと思われますが、作品のリリースは本作が最後になっています。
そんなセルビア産フィーメイル・ゴシックの先駆けとも言えそうな彼ら彼女らDiluviumですが、その音像はいかに。。。
案外多彩、でも控えめ?なゴシックワールド
全体的に欧州産らしいフィーメイル・ゴシックを基本にしつつも、なんとなくLana Laneっぽい(?)メロディアス・ハード風の雰囲気が漂ってたり、エピック・シンフォニックメタルやメロスピ風の曲があったりと、全体に起伏のある作品になってると感じます。
印象的な曲を拾っていくと・・・
2曲目はスピーディーな疾走感を持つ、メロスピ風(?)の一品。トレモロ風にかき鳴らされるリードギターのメロディがなかなかアツいです。キーボードもふわりと楽曲をカラフルに彩っていて、とりわけ曲後半の響き方はNightwish風の透明感も漂います。
メランコリックな歌メロと歌唱ぶりがなんだかいい感じに気だるいのが素敵な3曲目。一方でサビではほんのり熱っぽい感触もあって、なんだかいい雰囲気。
続く4曲目は、涼風の吹き抜けるようななめらかさで、フィーメイル・ゴシックの典型みたいなスタイルの曲といえそう。よく聴けば、物静かなパートと、ドライブ感の同居した構成になってて、その対比が案外ドラマティックかも。
5曲目はやっぱりNightwishをお手本にしてそうな物語感というか・・・ストレートなメロディック・チューンかと思いきや、曲中盤ではちょっとドキドキするようなシンフォニックパートが飛び出したり、突如プログレ風味に転調&ネオクラ化したりと、美しくもミステリアスな展開を見せる一品になってます。
メランコリックな質感たっぷりに響く6曲目。サビの歌メロは、Milica Plavšić女史のいい意味で淡いヴォーカルと相まって非常に切なげで涙を誘います。個人的に作中でのお気に入りのひとつ。こういうどちらかと言えば物憂げな方向の曲が彼らにはハマッてる気がしますね。
7曲目は作中でも比較的ヘヴィなうねりを伴った鋼鉄感。なんだか音作りのせいであんまりそんな風には感じませんが、リフに耳を澄ませば、曲中盤では結構ガツンとメタリックなパンチを利かせてます。ヘヴィメタル的アグレッシブさがクール。
そしてふわりとたゆたう静けさが甘美な8曲目。夢見るようなバラードで、静の面での本作のハイライトとも言えそうな瞬間です。メタル的な音ではないのですが、個人的には一番好きかも。
ラスト10曲目は8分に届こうかという大曲。淡々としていながらも、どこか熱を帯びたエモーショナルさが滲みます。曲後半で乱舞するキーボードはワルツの様なアクセントで、トドメのネオクラ風ギターソロが火を噴く瞬間もドラマティックなエンディングにふさわしい。
紙一重の淡さ
・・・と、あれこれ書いてきましたが、全体に音というかプロダクションがこじんまりとしてるせいで、いまいち曲の魅力が伝わりづらいのがちょっと残念。ヴォーカルも残念ながらちょっと線が細くて、聴いててパンチに欠けるのが惜しいのです。。。
要所要所でカッコよさげなリフや聴かせるギターソロ、いろどりを添えるキーボードが鳴ってるのに、意識してないとただただ通り過ぎていってしまうという感じ。アレンジも悪くないというか、曲構成もいい感じじゃないかと思うので、ううむ。
これがブラックメタルだったら、チープさは邪悪の象徴!とかなんとかで理解できてしまうんでしょうけど笑 もしもっとリッチな音で作られてたら、きっと印象は違ってるはず。
ただ、個人的にはセルビア産補正で、こういう残念なところも許してしまえるんですけども・・・普通に表現するなら、完全にB?C?級メタルになってしまうんでしょう。
逆に言えば、その薄っぺらさこそゴシックメタルならではの淡く気だるい魅力であり魔力である、とも言えそうなので・・・なんかさっぱりしたモノ聴いて眠りに落ちてしまいたい、そんな時ににはきっと重宝するはず。そういうの嫌いじゃないです、自分。
あとは英会話講師にNiš在住のメタルリスナーの先生がいるので(しかも自分と同じ大のブラックメタルファンという!!)、知ってるかそのうち聞いてみようと思います。新情報などあれば追記したいと思います。
※2021年追記・・・上記の件、英会話講師に訪ねたところ、「知らんかった」と一蹴。。。
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