[レビュー]The Stone – Закон Велеса(Zakon Velesa) (セルビア/ブラックメタル)
セルビアの首都ベオグラード(Belgrade)出身のベテランブラックメタルバンド、The Stoneの2ndアルバム。2004年作品。改名前のStone To Flesh時代の作品を含めると、3rdアルバムという事になります。
自分がゲットしたのはカナダのSepulchral Productionsからのリリース版で、ギタリストで中心人物のKozeljnik氏自信が運営する、Mizantropeon Recordsにオーダーして入手できました。
Mizantropeon Recordsにオーダーしてセルビアから無事に届いたお話はこちら↓
[海外通販記]セルビアのMizantropeon RecordsにThe Stoneグッズを注文・編[第2弾]
関連情報的なもの
レコーディング時の編成は、Kozeljnik氏(ギター&ベース)とNefas氏(ヴォーカル)と、前作でドラムスを担当していたIlija氏に代わって新加入のAksinomantijan氏(ドラムス)。このAksinomantijan氏は現在Svartgrenというブラック/スラッシュ系のバンドに在籍しているようです(未聴)。
怨念漂う暗い森にたたずむ3つの幽霊(?)という、なんともダークな想像をかき立てるカバーアートは、Jelena Bodrožićという女性アーティストによるもの。この方はKozeljnik氏つながりで、彼の別バントとも言えるシンフォブラック、May Resultの3rd”Svetogrđe”アルバムのカバーアートも手がけています。
アルバムタイトルの”Закон Велеса(Zakon Velesa) ”は英訳すると、 “The Law of Veles”という意味になるそうです。なんでもVelesというのは古のスラヴの神で、地球と水と地下世界を司っているらしい。。
Закон Велеса(Zakon Velesa)
さて、では印象的だった曲の紹介を中心に、本作の内容に触れてみましょう。
1曲目の前半部分はまさに東欧ブラックメタルという雰囲気の、勇壮でありながらどこか異彩を放ち、かつメロウな趣もあるという、必殺のパート。悲劇の行進曲。おそらくこのパート、この曲は彼らの楽曲全体の中で最も冴えてるんではないかと思います。楽曲後半部分はブラストビートも交えたファストな展開になり、荒々しく進み幕を閉じます。・・・冒頭から、この曲のためだけに本作を買ってもいいんではないかと思わせられます、個人的に。
2曲目は強引で嵐のようなトレモロリフでガリガリ進んでいく様子が印象的。あえて例えると、緩急のつけ方が初期Dark Funeralっぽい?気もします。そう思うとやはり北欧勢からの影響もありそうだと、うかがい知ることが出来ますね。一方で、メロディーやリフの質感はやっぱり東欧風なミステリアスさが漂ってる気がします。
その2曲目で、ちょっと北欧勢の影響を感じたのから一転、3曲目ではまさに東欧ブラックというような雰囲気が放たれてます。縦ノリリズムを使うパートはどことなくペイガン系っぽい気もしますが・・・耳を引く儚げなメロディーは確実に存在してて、でも決して甘くないというか、独特のトーンがあるというか。。本当にどう表現したら良いやら難しいですが、やっぱり東欧勢って、こういうジワジワ伝えてくるのが独特の持ち味、という気がします。
続くタイトルトラックでもある4曲目、これはたぶん非常にThe Stone的というか彼ららしい曲と言えそうです。彼らの次作以降の作品ではでさらに、邪悪なだけでなく、ヒネくれた音階やメロディーが現れてきますが、この曲にはその萌芽が見え隠れしてる気がします。特にメロディーとリズムのコンビネーションが、なんだかどうも人を食った様な薄気味悪さを放ってるんですね。。この感じを勝手にStone節と呼ぶことにしましょう。そして後半の”zaahkoon veeleesssaaaaaaaa!!!!”な絶叫が怨念めいてます。
絶叫といえば、ヴォーカルは前作と同じくNefas氏によるものですが、前作でのギャアギャアわめき系から、もう少し中音寄りのスタイルになっています。音質のせいかちょっと存在感は薄めに聴こえるかもしれません。
それから音質は前作に比べ少し良くなっていると思います。ですが基本は前作の延長線上での向上といった感じです。前作はそれぞれのパートの音がぼんやりと不鮮明でしたが、すこしクリアになって、音圧も増していると思います。例えるなら、前作の音は90年代前半のアンダーグラウンド勢の音質だとすると、本作は90年代後半レベルにはなったかな?という印象。
音質がそれほど良くないというのは、個人的には決して悪い事とは思っていなくて、その音質でしか表すことのできない雰囲気や味わいがあると思ってます。特に、上の方でも触れた1曲目の前半部分なんかは、この音質だからこそ醸し出すことの出来る、もやのかかったような独特の風景を連想させて、そしてそれと相まって、あのパートをスペシャルなものにしているに違いないと思うのです。。。
余談ですが音質に関しては、彼らは次作で一気に大幅な進歩を果たします。
彼らの次作のお話はこちら↓
[Review]The Stone – Магла(The Fog)(セルビア/ブラックメタル)
The Stone節の黎明
・・・という”Закон Велеса(Zakon Velesa) “アルバム、全6曲43分。ここで格好良く総評をしてみたいところですが、自分にその能力と表現力があるのかは、ううむ。
比較的わかりやすい展開の美やメロウなメロディー感は前作のほうが冴えてる気もします。ただそれらはたぶん、北欧勢が既に確立したスタイルや手法に則ったもので、その意味でオリジナリティがあるのかといえば疑問。。決して出来が悪いとかそういう事ではないのですが。
一方で、本作では、後の作品に続く彼ららしい良い意味で妙な展開や怪しげな雰囲気を放ち始めてる様に感じられるのです。そう、勝手に呼ぶところのThe Stone節。
彼らThe Stoneの作風のほぼ全てについて言える事といって良いと思いますが、各曲が長めで展開が多めなのは本作も同じ。その点で、時には1曲としてのまとまりを欠いてしまうというリスクを感じたりもしますが、しかしながらそれもまた彼ら独自のドラマティックなスタイルとも言えるでしょう。
北欧勢の影響も感じられるブラックメタルから、彼らThe Stoneサウンドを確立させ始めた過渡期的な1枚のはず。そして個人的には彼らの珠玉の一品の様な1曲目をぜひ推したい作品。
Amazon様↓
彼らの前作はこちらも参考にどうぞ↓
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