[レビュー]Annathema – Decibel(セルビア/スラッシュ・スピードメタル)
旧ユーゴスラヴィア(現在のセルビア)のノヴィ・サド(Novi Sad)出身のスラッシュ・スピードメタルAnnathemaの4thアルバム。2012年作品。
首都ベオグラードを訪れた時にゲットしたものの1つで、リリースは地元セルビアのMiner Recordingsから。値札は699ディナールで700円強という、セルビア盤ならではのお財布に優しい価格でした。
ちなみにこれはきちんとビニールに包まれてたので、ちょっと古くなってますが状態は良好。一緒に買ったKhargashやDemetherなどとは雲泥の差です。
関連情報的なもの
関連情報についてはいつもの通りあれこれ調べるのですが、長いキャリアを持つバンドの割に、ほとんど情報を見つけられないので、またMetal Archivesのお世話になります><
バンド名のスペルのnが重なってるのは、ミスではないので、カタカナ表記にするとアンナセマ?アルファベットで検索すると英国のアレばっかり引っかかってしまいます。。。
バンドの結成は1982年。89年に1stアルバム“Annathema”を、91年に2ndアルバム“Empire of Noise”を、97年に3rdアルバム”Don’t Go Down”をそれぞれリリース。もしかすると2作目と3作目の間の隔たりは・・・ユーゴ紛争の影響によるものかも知れませんが、はっきりした関係性は不明です。
そして本作”Decibel”がリリースされたのが2012年。リリースまでの活動についても全然情報がありませんが、長い沈黙の後、我々は再び彼らの新しい音楽に触れることが出来るようになりました。
・・・がMetal Archivesによると、本作リリース後の現在のバンドの状態はUnknownとのこと。どんな状況なのか、気になるところです。
本作のメンバー構成は、BlazaMAD氏(ヴォーカル)、Marko Milanovic氏(ギター)、Milan “Vuja” Vujokov氏(ギター)、Mirko “Žile” Živković氏(ベース)、Miodrag “Stavra” Balaban氏(ドラムス)の5人。このうち”Vuja”氏、”Žile”氏と”Stavra”氏の3人が結成当時からのメンバーのようですね。
スピードというよりマッスル?
という事で、本作”Decibel”の印象的な曲を中心に聴いてみましょう。自分の趣味からして、アグレッシヴなテイストの曲ばかりピックアップすることになるかも知れません(汗
ナレーションのイントロから一転、ドスドスと重く響くドラムビートに載せて疾走する1曲目。アルバム1曲目というと、たいていインパクトが強めな曲が配置されてるのがセオリーですが、そのセオリー通り、つかみはナイスです。
スラッシーなリフと、うおおぉああ!!みたいなBlazaMAD氏のヴォーカルが、良い意味で暑苦しい(笑
そして同じくセオリー通り、ちょっと大したことのない2曲目が続くのもお約束というか、ある意味予想通り。グリグリと重量感を前面に押し出して迫るこの曲で、なんとなくアルバム全体の作風というか、ベクトルが見えてくる気がします。
ミドルテンポの3曲目はどことなくJudas Priest風?ここまでくると、スラッシュメタルというよりも、いわゆるヘヴィなメタルだなぁと、確信します。
4曲目や6曲目では少しテンポを上げて、R&R風味のリフに熱いヴォーカルが炸裂。音作りは低音のビート感が聴いた響きで、やはりスピード感よりは、一音ごとの打撃感(?)が印象的です。スタスタ疾走というよりは、ドムドム殴打、というか・・・です。
7曲目は、ちょっと能天気な縦ノリのギターリフから入り、中盤ではメタリックなリフが結構冴える、なかなかクールな曲。掛け声パートもあるので、ライブ映えもしそうな一品。
続く8曲目はちょっとパンキッシュ?ヴォーカルは相変わらず暑苦しい感じながら、シンガロング風な要素もあり、そのあたりがパンク方面を連想させるのかも。
ラストの11曲目はなんというか、ちょっとネジの緩んだ・・・ゆるヘヴィ??酒臭いおっさん達も結構酔いが廻ってきたんじゃないかしら?全く音楽を表現できてませんが、そんなイメージでアルバムは締めくくられます。演奏のキレは全編通じてバッチリなので、そのあたりは心配ありません。単純に自分のイメージです。
バルカンのメタル、とりわけスラッシュ方面のバンド達には、やっぱり独特のノリがある気がします。未だにそれをどう表現したらいいのか分からないのですが、良い意味でのテキトーさというか能天気さというか、変なハッピーさというかお気楽さというか。。。
しかも決してギャグとかネタ的にやってるんではなく、内からにじみ出るものが、自然と音楽にそんなタッチを加えてるというか。いやホントにそうかも分かりませんが、このAnnathemaにも、そんな雰囲気を感じます。
スピードというよりマッスル?
スラッシュ・スピードメタルというカテゴライズになっている彼らAnnathemaですが、本作を通して印象に残るのは、スピード感よりはもっと骨太で筋肉質なヘヴィさ。スラッシュメタルというよりは、ちょっと酒臭い直球系のヘヴィ・メタルという感じでしょうか。あるいは、モダン・ヘヴィネスのイメージというと近いかも知れません。
例えば、若さに任せて勢いだけで駆け抜ける作風、というのは多くのバンドの初期作品では多く聴かれますが、作を経るごとにある種の落ち着きというかコントロールを見せるようになる。作品間の年月の隔たりは大きいですが、彼らもそんな流れの中にある様に思えます。
スラッシーなスピード感が控えめになった分、現代風のリッチな音作りも含めて、よりヘヴィ方面に舵を切ってるというか。
彼らの過去作品は、YouTubeでちょっと聴いただけなのですが、時代も含めまさにスピードメタルという言葉がぴったりの音楽性な気がします。たぶん年代的には、セルビアの、というか旧ユーゴスラヴィアのメタルレジェンドのひとつ、と呼んでもよさそう。
そんな彼らの作品という事で、ゲットしてここにあれこれ書ける事に感謝したい一品。
個人的な趣味だけでいえば、もうちょっと攻撃的で邪悪なテイストだったらもっと良かったですが、良い意味での酒臭さと汗臭さのあるマッシヴな1枚でしょう。
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