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[レビュー]The Stone – Kruna praha (EP) (セルビア/ブラックメタル)

[レビュー]The Stone – Kruna praha (EP) (セルビア/ブラックメタル)

 

セルビアの首都ベオグラード(Belgrade)出身のベテランブラックメタルバンド、The Stoneの2019年リリースのEP。本記事執筆時点の最新作になります。

周辺情報的なもの

本作のリリース情報をどうやって知ったのかは、実はよく覚えていないのですが、このThe Stoneはセルビアの、バルカンのブラックメタルを語るうえで避けて通れない重要バンドと勝手に位置づけてるので、頑張って手配しました。

本作はバンドの中心人物であるKozeljnik氏が2017年に立ち上げた、Mizantropeon Recordsからのリリース。Baneの3rdアルバムの手配の時もそうでしたが、これまた日本のショップやディストロに並ぶのかあまり期待できそうにない気がしたので、レーベルに直接オーダーしました。

レーベル関連情報や注文の経緯はこちら↓もどうぞ

[海外通販記]セルビアのMizantropeon RecordsにThe Stoneグッズを注文・編[第2弾]

自分がゲットしたのはCDとアナログの両方。というか、デジパックCD+7インチアナログ+Tシャツのお得セットが注文できたので、迷わずそれをチョイス。

 

CDとアナログでは収録曲数に違いがあって、1~2曲目はCDとアナログどちらも共通。

加えてCD盤のみ収録の3曲目(ここまでが新曲)と、2014年のスプリット”Waiting for the Darkest Day”から1曲、2016年のスプリット”Necrotic God”からもう1曲が追加収録されています。

つまりアナログは2曲入りでCDは5曲入りという事になります。音源的にはCD買えば2つのスプリット音源も網羅できることになるのでお得で、逆にアナログはほとんどコレクター向けと言っても良いかもしれません。

関連情報調べてて気付いたのは、The Stoneのバンド史において長きに渡りヴォーカルと作詞を担っていたNefas氏が脱退し、代わりにMay Resultでヴォーカルを務めたGlad氏が参加していること。

そのあたりの細かな情報は見つけられなくて、おそらく今のところ彼らの最新のインタビューになるのは、岡田早由(2019)さんの『東欧ブラックメタルガイド2』に収録されているものになると思われます。

そこではNefas氏脱退の事実については言及されているのですが、その詳細については触れられておらず・・・。

という事で、本作”Kruna praha”ではGlad氏がヴォーカルの冒頭2曲と、Nefas氏のヴォーカルの残り3曲とが混在しています。

とはいえ、2人とも中音ガナリ系のヴォーカルでスタイルが比較的近いこともあって、実はそれほどギャップは感じません。いやファンなら聴き分けろよと言われそうなくらいですが。。

音質についても同様で、前述のような曲構成なので、新曲3曲以外の録音時期が異なるのは明白ですが、パッと聴いただけではあまり違いを感じず、でした。なんとなくギターのトーンが違うのかな。

また、レコーディングメンバーは各曲の録音時期によって異なるのですが、全5曲のうち4曲で、チェコのブラックメタルMaster’s HammerのHonza Kapák氏がドラムスを叩いています。彼についてはセルビアのメロディックブラック・デスのBaneの3rdでの仕事が記憶に新しいですね。

Kruna praha

本作”Kruna praha”の幕開けを飾るのは、キメに炸裂するメロウなトレモロメロディーの広がりが美しい1曲目。本記事執筆時点では、The Stoneの音源を全て網羅できてる訳ではないのですが、もしかするとThe Stone史上最もメロディアスかつダイレクトな曲かも知れません。

基本疾走するリズムでスタタタと駆け抜けていくのですが、一方でちょっとスラッシュメタル風なパートもあって、メロディアスなパートとの対比も印象的。誤解を招きそうな表現ですが、シューゲイザー方面のブラックメタルが鳴らしてるのに近い空間の感じとメロディー感?

2曲目は割とこれまでの作品で聴いたような、The Stoneのイメージ通りという感じの曲。どちらかというとあんまりキャッチーではないけれど、どこかちょっとミステリアスで独特の妖しさが漂ってる、あの感じ。どの感じ?ですが。。

高速ブラストビートとかきむしる様なギターリフが凶悪な3曲目。これもダイレクトに凶暴性と邪悪さを伝えてくる感じの曲なのですが・・・中盤以降やはりメロウなパートが登場。とても叙情的というか、泣きの雰囲気が一気に広がります。

 

ここまでの1~3曲目が、Glad氏のヴォーカルによるもの。Nefas氏とはかなり近いスタイルと声色なので、前述のようにそれほど違いやギャップを感じないのですが・・・Glad氏のヴォーカルのほうが少しだけ高音スクリーム寄り?で、狂気じみた雰囲気があるのはこちらでしょうか。

一方Nefas氏の方はというと、グロウルと呼ぶほどではないですが、もう少し低音咆哮寄りに思います。その分イカレ感というよりは、威厳に満ちたストーリーテラーの趣かも知れません。

 

4曲目以降はNefas氏のヴォーカルの曲です。まずは2016年の、ノルウェーの歴史あるブラックメタルIsvindとのスプリットから収録。つまり音源がここで変わってるのですが、音質や曲調の違いは非常に小さいので、軽く聴いただけでは全くそれに気付かないほど。曲自体はよく聴くと、ひねくれてて嫌味ったらしい(??)リフが、どことなく中期(?)の頃っぽい感じです。邪悪さというよりは、ジワジワ不快感を伝えてくるような・・・。そのあたりもThe Stone独特の持ち味な気がします。

 

そして本EPラストの5曲目は、2014年の4wayスプリットからの曲。10分近くの大作です。・・・がその割りに本作の中では一番印象に残らない感じかも。その残らない感じ、でもでもなんだかどこか引っかかる、というのがが彼ららしいとも言えそうですが。

 

The Stoneの新たなるアート?

・・・その事を思うと、どちらかと言うと彼らの音楽はジワジワ味わいや良さがが染みてくる作風な気がするのですが、本作に収録されてる新曲は、よりダイレクトな曲調やメロディーを訴えかけてくるように思います。

前半3曲の新曲はこれまでと変化がないようでいて、実はメロディーとダイレクトさという新たな要素も存在していて、彼らの新たな進化を聴いているような。そんな気もします。

もしいつか次なるフルアルバムがこういう作風を引き継いでいるなら、我々は彼らの新たな音楽に触れることになるんでしょうか。ちょっと大げさかもですが。

 

余談ですが個人的には、EPってどうも収録曲数的に、というかランニングタイム的に物足りなく感じる方なので、購入をためらってしまうことが多々あるのですが・・・

本作のCD盤だと、5曲で30分あるので再生時間的には許容範囲で、その辺も満足してます。

 

彼らThe Stoneの新たな姿を提示しつつ、音源としてちょっとレアと思われるスプリット収録曲も収録された、EPながらきっと価値ある作品。

 

過去作品もご紹介しています↓ご参考に。

[Review]The Stone – Словенска крв(Slovenska Krv)(セルビア/ブラックメタル)

[Review]The Stone – Магла(The Fog)(セルビア/ブラックメタル)

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