[レビュー]Alogia – Priče o vremenu (セルビア/メロディックメタル)
セルビアのメタルシーンの超重要人物である、Branković兄弟率いるメロディックメタルAlogiaの1stフルアルバム。2002年作品。セルビアの大手One Recordsからのリリース。
関連情報
セルビアのメタルシーンでは、おそらく最も有名あるいはメジャーなバンドの1つと言えそうな、彼らAlogia。2020年の現時点での最新作”Semendria”での待望の日本盤デビューも記憶に新しい彼らですが、バンドの結成は2000年にさかのぼります。
それまで、メロディックデスメタルPsychoparadoxで活動していたSrđan “Sirius” Branković氏とMiroslav “Mira” Branković氏のBranković兄弟、Damir “Procyon” Adžić氏、Branislav Dabić氏を中心にバンドは結成。
このPsychoparadoxは、90年代のユーゴ紛争後初めてプロフェッショナルに音源をリリースしたバンドで、紛争後のセルビアのメタルシーンの草分け的存在。
2014年頃の彼らのインタビュー記事(記事末リンク参照)によると、Psychoparadox時代から彼らはIron MaidenやJudas Priestといったメロディックなメタルにも入れ込んでいたようで、そのことからよりメロディックなメタルを志向して、Alogiaを結成することにしたんだそう。
バンド名のAlogiaは、前身バンドともいえるそのPsychoparadoxの楽曲からで、ロジカルでないもの、というラテン語から来ているとのこと。彼ら自身、自身の心に従うことは時にそうである、としつつも、セルビアでメタルをやることはまさに”Alogia”であるとやや皮肉めいたニュアンスで回答していますね。
こうして自身のキャリアをスタートさせた彼らAlogiaですが、活動を開始した2000年というのは、セルビアのメタルシーンのまだ黎明期。プロフェッショナルなバンドはまだまだ少ない時期で、とりわけメロディックメタルバンドとして、彼の地のメタルシーンを開拓していくことになります。
そうして2002年にリリースされた1stアルバムが本作、”Priče o vremenu”。
当時の編成は前述のPsychoparadox組、Srđan “Sirius” Branković氏(ギター)とMiroslav “Mira” Branković氏(ギター)のBranković兄弟、Damir “Procyon” Adžić氏(ドラムス)、Branislav Dabić氏(キーボード)のPsychoparadox組の4人に加えて、現在は英国のEden’s Curseでも活躍するNikola Mijić氏(ヴォーカル)、Ivan Vasić氏(ベース)という顔ぶれ。
Branković兄弟の関連バンド・プロジェクトの多さもさることながら、他のメンバーも様々なバンドに関わっていくことになる人物ばかりで、このAlogiaから派生していくバンドも数多い。その点で、セルビアのメタル界における開拓者という立ち位置はゆるぎないものと言ってよさそうです。・・・そのうちもうちょっと系統立ててまとめてみたいですね。
この1stアルバムの後にも彼らは、5枚のフルアルバムとライブアルバム等、コンスタントに作品をリリースしています。詳細は各作品の紹介記事に譲りたいと思いますが、多少のスタイルの変化を交えつつも、プログレッシヴ感も漂う感触が特徴のAlogiaのセルビアン・メロディックメタルは現在まで変わることなく受け継がれています。
・・・前置きが長くなりましたが、そんなセルビアメタル界の重鎮であり開拓者Alogiaの音像は果たして。
関連のPsychoparadoxは↓記事でも紹介しています↓
正統派+バルカンの香り
全体的には、ややB級メロスピ系のクサみも感じつつ、ネオクラシカルな要素とバルカン産らしいエキゾチックなメロディ感がちょいプログレッシブに行ったり来たりしてるメロディックメタル、といった雰囲気。
なんだか微妙な表現ですが、音質や音圧的には90年代のメロスピ系で聴けたようなややこじんまりとした感触で、歌メロのクサみも(個人的には)その頃の作品の持つイメージと重なる気がします。
それからプログレ風の変拍子感なんかはどことなくDream Theater風、でしょうか。あんまりプログレメタル詳しくないのですが。
という事で以下では印象的な曲をピックアップしてみましょう。
ミステリアスなギターのメロディ&ほわんとしたキーボードの音色から静かに入り、音の壁がズドンと立ちはだかる劇的なイントロの1曲目。その後はプログレ風味のリズムでジワジワと迫りくるイメージ。
2曲目はそこからシームレスに続きます。パーカッションのチャカポコとしたリズム&後ろの遠くでほろぽろと鳴ってるアコースティックギターがエキゾチック。このへんはセルビアという彼らの出自が香ってるといえそうです。
そして”メタル”的な本編の幕開けが3曲目。輪を描くようなギターリフ&リズムがちょっと聴く者を翻弄させるようなスリリングさ。やっぱりどことなくエキゾチック風味なテイストが香ります。
甘美な音空間の広がりを持つインストの4曲目を挟んで、雷鳴とどろくようなギターソロが冒頭に炸裂する5曲目。曲自体はジワジワ系のゆったりしたもので、セルビア語でしっとりと歌い上げるNikola Mijić氏の歌唱が、言語の語感(?)も相まって独特のタッチのウェット感。
そしてメロディックモノ好き待望の(?)スピードチューンが6曲目。ネオクラ大炸裂のキーボードのキラキラ感に、いい意味でのクサみたっぷりの歌とギターのメロディ、疾走するドラムス・・・典型的なメロスピ感と香しいB級臭。。。
そして続く7曲目でスピード感は一転、しっとりと歌い上げる哀愁のバラードが響き渡ります。
9曲目は涼しげな透明感と纏うスピードチューンが再び登場。同時に歌メロはどことなくメロウな雰囲気を漂わせていたりも。やはりメロディック系メタルならではのカッコつけ感というか、いい意味でメタルらしいイモっぽさというか。。。
壮大なインタールードの10曲目を挟んで、続く11曲目はメタルというより、メロディアス・ハード的なスムースな質感の一品。Nikola Mijić氏のハイトーンヴォーカルもいい感じにハマッてて、程よいリラックス感、歌メロとリズムのきらびやかさが結構素敵。
そして再びヒロイックな疾走を聴かせる12曲目。中盤のちょいとデジタル風味のリフ(?)のテレレレ・・・な切り返しからの、なんだかちょっとロマンティックなギターソロのメロディ、そして
13曲目は2分弱のインストですが、その短い尺の中にエピックファンタジー風のドラマティックさが封じ込められてます。Srđan “Sirius” Branković氏が後に参加するトールキンメタル、Numenorにも通じるファンタジックさですね。
ボーナストラックのラスト15曲目は、なんだかこれまでとは雰囲気が結構違う、カラリとした爽快感のインスト。晴れ渡る青空に舞うような奔放なギターソロが清々しさ満点。この曲のタッチはSrđan氏のプロジェクトExpedition Deltaの爽やかなメロディアスさに通じるかも。
Alogia伝説(?)の始まりの1枚
全体通して印象的なのは、ほとんどの楽曲がシームレスに繋がるように収められていて、聴いてて非常にスムースな事。
一方で一撃必殺のキラーチューン、みたいな衝撃度はあまりない気もするのですが、セルビアあるいはバルカン産というタッチがほんのり香る瞬間もある、伝統的なメロディックメタルの手法に忠実な作風と言えそうです。
やや発展途上な感触もないではありませんが、それはたぶんそのセルビアでの先駆者だからこそ、かも知れません。個人的にはそうポジティブにとらえたい。そしてここに、数多くのバンドやプロジェクトに派生していく、その源流があるのです、きっと。
伝統的なメロディックメタル、メロスピのフォーマットを踏襲しながら、彼らの独自性としてバルカンはセルビアという出自が程よく香る、全15曲47分です。
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↓参考にしたインタビュー記事たち
Interview with Srdjan Brankovic (Alogia, Expedition Delta) and Nikola Mijic (Alogia, Eden’s Curse)
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