[レビュー]Bane – The Acausal Fire(セルビア/メロディックブラック・デス)
- 2019.05.28
- セルビア
- Bane, Black Metal, Death Metal, Review, Serbia, セルビア
セルビア北部の都市ノヴィサド(Novi Sad)出身メロディックブラック・デスメタル、Baneの2rdフルアルバム。2012年作品。
関連情報的なもの
本作のレコーディングメンバーはバンドのブレインであるBlanislav氏(ギター&ヴォーカル)、セルビアのプリミティブ系ブラックメタルAngelgoatにも在籍していたOccultum Malleus氏(ドラムス)と、Nokkturno氏(ベース)の3人を中心に、ゲスト/セッションメンバーがクレジットされています。
特筆すべき(?)なのは、レコーディングのミックス&マスタリングを、チェコのエクスペリメンタルブラックMaster’s HammerのドラマーであるHonza Kapák氏が手がけている点でしょうか。
このHonza氏はBaneの1stアルバム”Chaos,Darkness&Emptiness”と、3rdアルバム”Esoteric Formulae”でドラムスを担当しているほか、同じく3rdアルバムのエンジニアリングも担当していて、バンドと非常にゆかりの深い、キーパーソンと言っても良いでしょう。
また、カバーアートは、3rdアルバムのカバーも手がけることになる、インドネシアのアーティストBahrull Marta(Abomination Imagery)氏によるものです。彼らのアルバムジャケっていつもバンドロゴやアルバムタイトルが一切載せられていないのですが・・・何かこだわりがあるんでしょうか??
今のところ、そのことに触れているインタビュー記事などを見かけたことがなくて、謎です。
The Acausal Fire
本作リリース頃のインタビュー記事でBlanislav氏は、この”The Acausal Fire”アルバムについて、より背成熟した仕上がりになっている、と語っています。
また、前作にはなかった新しい要素として、クリーンヴォーカルやキーボードサウンド、240bpmにもなるテンポでの演奏を挙げています。
果たしてそうした要素が彼らの音楽にどのように作用しているのかにも注目(耳?)しながら、本作を味わってみることにしましょう。
アルバムの導入はオーケストレーションのインスト。
続く2曲目から本編が始まりますが、単音トレモロリフが切り込んできて、続けてブラストビートが炸裂していく様子は、Dark Funeralを思い起こさせます。何度聴いても、ブラスとビートの嵐に邪悪なトレモロリフが絡みつくこの感じ、やっぱりDark Funeral。それにしても速い。。Blanislav氏が240bpmとインタビュー中で触れているのは、このあたりでしょうか。
曲は3曲目に進み・・・。ここでDark Funeralモードになった耳と心に肩透かしを食らうように聴こえるのは、Dissectionが香るちょっとヒロイックで、でもどことなくメロウなメロディー。案外小さくないギャップがあって、あぁやっぱり彼らの下地はDissectionに違いないと再確認させられる思いがします。I watch human race DIE!!! 終末の匂い。個人的にはこの曲が1番のお気に入りかも。
彼らの言う新機軸、クリーンヴォーカル&コーラスが聴けのるが4曲目。イントロはまるでDissectionの名曲”The Somberlain”。この曲も基本爆速ブラストと2ビートメインで進む曲なのですが、途中スローダウンしてメロディーを聴かせるパートもあり、非常にドラマティック。Blanislav氏の言葉では、アルバム中最もプロフェッショナルな音の曲だそうですね。この曲だけに限りませんが、彼らのDissectionぽさというのは、ほとんど遺伝子レベルで刻み込まれてるんじゃないかと思ってしまうほど。
やっぱりファストなパートが多くを占めつつも、どこかドゥーミーな雰囲気も漂う5曲目。そのフェードアウトしてくエンディングに続いて、聴くものをちょっとハッとさせるドラムロールから始まる6曲目。そのドゥルルル・・・な感じが、これまたDissectionの神曲(?)”Night’s Blood”のイントロのアレを思わせます。ここでも”アーァー”みたいなクリーンヴォイスのコーラスがミステリアスに聴こえてきます。
そして7、8曲目と彼らの音楽は炸裂を続け・・・
アルバムのアウトロを飾るオーケストレーションの後は、ボーナストラック的に配置された、Dissectionの”Night’s Blood”のカバー。本編のアルバムの音を聴いてると、演ってくれたらハマるだろうなぁと思わずにはいられない彼らですが、期待を裏切らず、やってくれます。
これはほぼ原曲に忠実な完コピという事でいいんではないでしょうか。違うのは本家のドラミングで個人的に印象的だったキメのドラムロールがない事くらい?しかもアルバムの本編と並べてもほとんど違和感がないという・・・彼らBaneの、誤解を恐れずに言えばクローンっぷりが見事に現れているかのよう。
Dark Funeral + Dissection? そして・・
全体的な印象は、前作1stに比べてよりファストブラック寄りになったように感じます。前作ではもっとデス/ブラックという表現にマッチしたバランス感覚だったように思うのですが、本作ではもっと純ブラックメタルな成分が強く出ているというか・・・。
アルバム全体を通して、ブラストビート+強力なメロディーでブッ飛ばす曲がほとんどなのですが、要所でちょっとスローダウンしてじっくり聴かせるパートを挟む、というが基本的な本作のスタイルですね。
例えるなら、Dark Funeralのあの地獄の炎が吹き荒れるようなギターサウンドの壁&爆裂ブラストビートにDissectionテイストのメロディーや曲の味付けを乗せたような感じ?
という事で、聴いてると文字通りある時はDark Funeral、またある時はDissectionを聴いてるかのような錯覚に陥りそうなのです。
余談ですが、以前に「昔メタル聴いてた」とおっしゃるセルビアの英会話講師にこのアルバムの↑みたいな感触を伝えたら、「Dark FuneralとDissectionじゃちょっと違くね?」みたいに言われた覚えがあります。いやまあその通りなのですが、でも自分の耳にはどっちも聴こえるんだもの。。です。
本作リリース後のインタビュー中で既にBlanislav氏は、カナダへ拠点を移して、彼らの音楽を北米へ広めることについて触れています。同時に3rdアルバムのリリースについての見通しについても・・・
そのあたりのバンドの物語は、彼らの3rdアルバム”Esoteric Formulae”の記事で触れていますが、この後長い道のりになろうとは・・・です。
また、上記のインタビューでBlanislav氏は、ライブDVDを製作する予定はあるか?という質問に対して、「今はまだ早すぎるけど、たぶん4thアルバムをリリースした後くらいには、少しは考えるようになるんじゃないかな」と答えています。
つまり、本記事執筆時点で3rdアルバムがリリースされているので・・・あと1作ですね分かります(笑)
Blanislav氏の音楽に対する熱意みたいなものを想像すると、きっと成し遂げてくれるに違いないと、個人的に思います。期待してます&信じてます、Bane。
Amazon様
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