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[レビュー]Nemesis – The War Is On (セルビア/メロディック・デスメタル)

[レビュー]Nemesis – The War Is On (セルビア/メロディック・デスメタル)

セルビアの首都ベオグラード出身のガールズ・メロディックデスメタル、Nemesisの1stフルアルバム。2020年作品で、本ブログ的には待望のデビュー作であり、ようやく入手&レビューとなります。

自分がNemesisの存在を知ったのはリリースの数か月(?)前でしたが、その頃からちらほらとリリース情報の断片が出だしてたので、待ちに待ったアルバムな感じです。

リリースはセルビアのGrom Recordsから。よくぞリリースして下さいました。実際にゲットしたのはCD盤。どうやら日本ではあんまり取り上げられていないようで、Discogs経由で入手となりました。

 

その時のお話は↓記事で紹介しています。

[海外通販記]再びDiscogsでセルビアのセラーに注文・編[第4弾]

バンド結成のお話

本記事の準備にあたって、いくつかバンドのインタビュー記事を読むことができたので、その内容も参考にしながらバイオグラフィー的なものをまとめてみましょう。

バンドの結成は2013年で、Sanja Drča女史(ヴォーカル)とAleksandra Petrović女史(リードギター)の2人で結成されました。

結成後ほどなくして、2人はSelena Simić女史(ドラムス)にコンタクトを取り、バンドへの参加をオファーします。このSelena女史はガールズ・メタルのJennerのライブメンバーを務めたり、メロディックメタルのÆterniaにも参加していた人物ですね。

当初はArch Enemyのトリビュートバンドといった感じのスタートだったようですが、同時に、全員女性メンバーによるメロデス、という方向性もこのころに固まりつつあったようです。

そして2016ごろには新たに、Tijana Milivojević女史(リズムギター)と、Biljana Sovilj女史(ベース)の2人が加入して、現在のラインナップが完成。音楽面でもよりシリアスになり、ライブ活動やオリジナル曲への取り組みで活動を本格化させていきます。(一時、ベーシストとしてAnja Tvrtković女史という人物が参加していたようですが、加入・脱退時期など詳細情報が見つからず。。。)

待望のフルアルバム

Metal Archivesによると、2018年には“Promo”と題するEPがリリースされているようです。そして2020年に、ついに待望の1stフルアルバムである本作“The War Is On”がリリースとなりました。

レコーディングメンバーは前述の5人。加えてゲストとして、バックヴォーカルにフィーメイルシンフォ/ゴシックAuriumのシンガーMilica Jovanov女史と、Centurion(未聴)やSigma Epsilon(こちらも未聴)のStefan Tomić氏の2人が参加しています。

アルバムのレコーディングはセルビアのCitadela Sound Productionで、Luka Matković氏のプロデュースにより行われています。このLuka氏、調べてみると結構なキャリアの持ち主というか、かなりセルビアメタル界で役割を果たしてる人物の様で、関わったバンドの数々は枚挙に暇がない程。。。個人的に目に付いたところで、Bombarder、前述のSigma Epsilon、Pollution、Space Eaterといったスラッシュメタル勢への参加に、ゲストとしてはInfest、KozeljnikにSvartgren、それからНадимач(Nadimač)・・・。うーん、スゴイ。

Arch(以下略)。。。

そんな訳でようやく我々の元に届いた本作、“The War Is On”。ここからバンドの音楽に耳を傾けてみましょう。

本作を一言で表すなら、ズバリAngela期のArch Enemy。その具合は、例えば「○○っぽい」とかそういうレベルではなくて、もはや完コピというかクローンというか、の域。もはや崇拝どころか憑依してるかの様な・・・というと大げさでしょうか。

実際聴いててその特徴の捉えっぷりといったら、楽曲のメロディやギターソロの思わせっぷりさや泣き加減に香るアモット感に、ハイピッチ気味に叫びつつ噛みつくようなうねりのヴォーカルのアンジェラ感、打数を(あえて?)抑え目にしてシンプルに撃ち込まれるドラムスのダニエル感。。。等々。

加えるなら、メロ”デス”な割に全体のタッチがいわゆるヘヴィメタル然としすぎてて、単にデスヴォイス乗せの正統派メタルの様であまりデスメタルを感じない(個人的に)というあたりも全く一緒。そしてそれらは本家にはちょっと及ばず、というのがミソ。

 

アルバム冒頭から、ズドーンと重厚な鋼鉄をぶつけてくる1曲目、その名も“Wake Up”。まさに「起きやがれぇ!!!」の怒号を聴いているかの様。サビ?というかキメ?のギターリフの、ちょっとMegadethみたいなトリッキーな刻みが結構ツボ。

そしてどこかで聴いたようなメインリフと、続くギターのコード感がやっぱりArch Enemyがやってそうな2曲目。中盤の、「Rise!Rise!Rise!…」のコールはライブできっと盛り上がりそうなキメのパートですね。そして続けざまに繰り出されるスラミング風なうねりに乗せてみんなでモッシュ、と。

3曲目は運指の細かな切れ味鋭いギターリフと、ヴォーカルの「Oppresion!!」咆哮の連続が印象的。やっぱり曲展開やリフのあちこちに本家のネタを思わせるのですが・・・そろそろ、何度もArch(以下略)って打つのもダルくなってきます><

そして4曲目は、バックヴォーカルで前述のゲストMilica Jovanov女史Stefan Tomić氏の2人が参加してる一品。といっても、ふわふわと漂うようなコーラスが後ろの方で聴こえるだけなので、あまり目立たず、サンプリングか何かかと思ってほとんど聴き流してしまいそうな感じ。曲の方はややおとなしめながら、ちょっと青空が広がりかけ、みたいな薄らポジティブなメロディ感のするあたりがArc(以下略。。。

続く5曲目はなんだかヒロイックなギターリフが、聴くほどにジワジワと胸に響くかの様。デスメタルなのかどうかはともかく、所謂ヘヴィメタルの1曲として、素直に格好良さげです。そしてエンディングに炸裂するギターソロもやっぱりアモット兄トリビュート?リスペクト?な泣きとタメがたっぷり。

7曲目は確か自分が初めてこのNemesisを知った曲だったと思うのですが・・・シンプルなドラムスのリズムに、ほんのりヒネりを聴かせたスリリングなリフや、切り込んでくるメロディの質感がまさにAr(以下略)。当時「モロAr(以下略)やん」と思ったその印象は今でも変わらず、です。

8曲目はバンド&ヴォーカル入りのスローな曲ながら、イントロとソロパートは本家のインスト曲にありそうなメランコリーが大爆発。

そしてシメの10曲目は本作中でも上位に入りそうなアグレッシブさの、タイトル曲”The War IS On”。スタスタと疾走するパートあり、変拍子あり、地を這うようなうねうねしたグルーヴィなリフありと結構多彩。さらには後半一気に重苦しいムードが晴れ渡るようなクリーントーンのギターメロディが飛び出したり。

 

Ar(以下略)、とばかり書いてきた気がするので(汗)、なんだかArch Enemyの単純劣化盤みたいに聞こえそうですが、曲それぞれは結構粒よりでキャッチーなので、聴いてて退屈させられる場面がほとんどないのはお見事。全10曲収録のうち、特に1~5曲目まで(って半分ですね。汗)、曲それぞれがちゃんとアピールどころを主張しながら続いていく様は、なかなか秀逸と言ってよさそう。それ以降も、ダレてくる前に次の注目(注耳?)ポイントが表れるので、やっぱり曲の出来のばらつきが小さいって理解でいいんだと思います。

個人的にはもうちょっとブルータルだと言うことないのですが、そこは本家にしても同じ事、なので。

筆者とArch EnemyとNemesis

・・・とここまであれこれ書いてきましたが、実は筆者は今現在Arch Enemy(やその周辺のカテゴリ)に関してもうあんまり興味ないのが現実。

Arch Enemyの思い出を語ると、リアルタイムで聴いたのは4thアルバム”Wages of Sin”で、当時はデスメタルに女性ヴォーカルって事でAngela女史の加入には相当驚かされ、結構熱心に聴いてました。2006年のLoud Park初開催の時の”Snowblind”に涙しそうになったのはいい思い出です(笑)

しかしながら音源買ってフォローしてたのは確か7thの”Rise of the Tyrant”あたりまで。聴いててもなんだかこう今一つ盛り上がりに欠けるというか、アツくなり切れないまま、興味を失っていった感じです。なんだかこう、もっと全体的にブルータルであって欲しいのです、”デス”メタルと付くからには。

今では、「ヴォーカル代わって、確かThe Agonistの人だっけ?」くらいなもんです。ファンの皆様には申し訳ない。

 

・・・という少々冷ややかな筆者のテンションなので(苦笑)、こちらのNemesisの音の方もAngela女史期の超Arch Enemy型、というかほとんどクローンな勢いの作品ということで、個人的な趣味でいえばまあそれなり、という感じ。

しかしながら一方で、セルビアの地から、こんな風に元気一杯というかエネルギッシュというか・・・そんなバンドがデビューしてきたことが意義あることなんではないか、とも思うのです。作風のオリジナリティはともかく。

あとはそれこそArch Enemyまっしぐらなスタイルで、しかも全員女の子というガールズメロデスって、日本でもウケそうじゃね?みたいな安直な推測。いやもう手垢のつきまくったカテゴリなのかな。ウケるんならもうとっくに取り上げられてるか、はたまた実はこのNemesis、ブルーオーシャン的な何かなのか。。。

今後にも期待大なデビュー作

そんな訳で、オリジナリティみたいな観点からはきっとあんまり評価されないのかもしれませんが、一方で結局なんだかんだで結構聴き込みました。

個人的には、バンドのキャリアの出発点としてとらえるなら、本作は見事な出来栄えといっていいと思います。文章がどうもややネガティブなトーンになってしまってるのは、書きながら重々承知なのですが、作品としてのクオリティは上々、のはず。

それから期待したいのは、今後継続的に活動が続いていってNemesisならではのちょっとした独自性が表れてくる事、でしょうか。ほらバンドって2枚目3枚目が出るにつれ、良くも悪くも変化が見られたりすると思うんですが、そういう彼女達自身の内側から生まれてくるオリジナリティみたいなものを、今後の作品で聴ける事を願いたいのです。気の早い話ですが。(そしてその”継続”ってのがセルビアのメタルバンドにとっては環境として厳しいみたい)

あるインタビュー中では、日本でも演奏したいと言及していますが、ここ日本はArch Enemyの火付け役になった場所(で合ってるはず)。きっと可能性はありそうに思います。Nemesisの音楽がもっと広まることを願います、心から。

 

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Nemesis – The War Is On
 

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