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[レビュー]Bane – Esoteric Formulae(セルビア/メロディックブラック・デス)

[レビュー]Bane – Esoteric Formulae(セルビア/メロディックブラック・デス)

↑アナログ盤。350枚限定のうち100枚はご覧のブルー仕様らしいです。綺麗。

 

セルビア北部の都市ノヴィサド(Novi Sad)出身メロディックブラック・デスメタル、我等がBaneの待望の3rdフルアルバム。2018年作品で、2012年の前作”The Acausal Fire”から6年ぶりの新作という事になります。

じつは本作発売に先駆けて、CDとアナログその他グッズを彼らのBandcampにオーダーしていて、到着次第ここで盛大に祝福&レビューようと思っていたのですが・・・

アナログの製造がかなり遅れたらしく、なんと到着したのが本稿執筆の2019年5月。ようやくここでご紹介できる運びと相成りました。音源自体はCD購入特典としてリリース日から聴いてたんですけども。。

 

そのあたりの購入エピソードはこちらもどうぞ↓

[海外通販記]BandcampにセルビアのBaneのグッズを注文・無事届くのかやってみた

関連情報的なもの

セルビアのバンドですが、最近は活動の拠点をカナダに移しているようで、最近では、フィンランドのブラックメタルHorna等と北米ツアー??をやったりしてるみたいです。また、2012年の前作”The Acausal Fire”から6年ぶりの新作という事でもあるので、バンドの中心人物であるBlanislav氏のインタビューから、本作リリースまでのバンドの活動を追ってみましょう。

 

Blanislav氏がカナダに活動の拠点を移したのは2012年。ちょうど前作”The Acausal Fire”のリリースと同年になります。

カナダへ渡った理由として彼は、よりプロフェッショナルな形で自身の音楽を追及する事を挙げています。なんでも、Blanislav氏の出身国であるセルビア、あるいはバルカン地域でそれを成し遂げようとするのは難しいことなんだそう。

どうやら、セルビアでは経済的にとても厳しかったり、たとえどれだけ懸命に活動しても、あるいはどれだけ自身が優れていても、まともなキャリアを積むことが難しかったりする、という事のようです。本人はそれがカナダ行きの第1の理由ではないとも語っていますが・・・。

 

翌2013年ごろには新たなメンバーを迎えて、2014年にかけていくつかのライブも行ったようですが、メンバーのラインナップの問題で、その後一時的にライブバンドとしての活動を休止。

一方で、Blanislav氏は2014年から2015年にかけて、本作”Esoteric Formulae”のソングライティングに着手します。本作の曲のほとんどはこの頃に書かれました。

Blanislav氏の言葉によると、主に日常生活関連(?)的な理由で、活動は一時停滞し、2017年にようやく本作”Esoteric Formulae”のレコーディングがスタート。既に書かれていたマテリアルの再アレンジと歌詞作成を行い、アルバムは完成をみることになりました。

 

そして2018年には、積極的にライブ活動を行うことになります。カナダではInsomniumらとライブを、北米ではUadaとのツアーを、ヨーロッパではバルカン地域を中心にツアーを行いました。

2018年の秋以降は本作のプロモーションに注力。そしてついに11月末に待望の3rdフル”Esoteric Formulae”がリリースになりました。そして筆者も早速オーダー、というお話は本記事冒頭のとおり、になりますね。

 

余談ですが、メタル好きのボスニアのオンライン英会話講師が、2018年の彼らのヨーロッパツアーでのライブを観てきたと教えてくれました。なんでも、講師の地元でちょうどそのライブがあって、それに参戦したんだそう。感想を聞くと、「良かったんだけど、会場の音響が駄目で、あんまり何やってるか分からなくて、しかもその音響のせいで頭痛くなって・・・」って。あとはライブ後友人と飲みに出かけたら、同じ店でBaneのメンバーと遭遇した、とも。羨ましい。。

その講師との思い出はこの記事でもまとめています↓

[オンライン英会話]お気に入り講師が辞めて打ちのめされた話 Part2[突然の悲劇]

Esoteric Formulae

6年もの歳月を経てリリースされた”Esoteric Formulae”。ここでは、作品ににまつわる情報をまとめてみましょう。

本作のレコーディングでは、Blanislav氏がヴォーカル、ギター、ベース、キーボードを担当。ドラムスとミックス&マスタリングをHonza Kapák氏が担当しています。Honza氏はチェコの伝説的(?)エクスペリメンタルブラックMaster’s Hammerのメンバーで、Baneのこれまでのアルバムのレコーディングにも携わっています。

また本作のレコーディングにはゲストミュージシャンも迎えられています。ギターソロのひとつに、イタリアのデスメタルHour of Penance(未聴)のGiulio Moschini氏。彼は同じくイタリアのインダストリアルブラックのAborymにもいたみたいですね。

それからゲストヴォーカルとして、フランスのブラックメタルTemple of Baal(こちらも未聴)のAmduscias氏が参加しています。

また、アルバムオープニングとエンディングのオーケストレーションは、カナダのミュージシャンOphélie Gingras女氏が提供しているという事です。

 

ブルー基調の美しいアルバムのアートワークは、前作に続きインドネシアのアーティストBahrull Marta(Abomination Imagery)氏によるもの。彼が手がけた作品、自分にとっては未知のものばかりなのですが、例えばセルビアのVader型デスメタルInfestの”Cold Blood War”アルバムや、スウェーデンのベテランデスメタルCentinexのDoomsday Rituals”等が彼の手によるものです。

 

各曲・音楽

Ophélie Gingras女氏による魔界のオーケストレーションが美しいイントロの1曲目に導かれて続く、アルバム本編のオープニング曲の2曲目。相変わらずDissection感満載のメロディーと冒頭のブラストビート、一転スローダウンし堂々たる風格を見せつけながら徐々にテンションを上げて、長い眠りから目覚めたBaneの再来を思い知らせます。いきなり彼らの持ち味が炸裂する、胸の熱くなる曲。

しかし3曲目にして直ぐに、彼らの新たな面にも気付かされます。中盤のメロディックなパートのドラマティックさが見事な曲で、なんだか暗黒の夜空に吸い込まれそうな、ダークな甘美さを感じます。

ミドルテンポのパートの割合が多く、一瞬持ち味の攻撃性を失ったのかと思いそうになるのですが、きっとそうではなく、彼らはより強力なメロディーとドラマ性で訴えかける術を見い出したという事に気付くのに、それほど時間はかからないでしょう。

本作のリリースに先駆けて新曲としてPVが公開されていた4曲目。ヒロイックなメロディとブラストビートが印象的な曲。割とストレートな耳ざわりというか・・・後述の、Dissectionが3rdで向かった方向に近いかも、という気がしたのは、始めてこの曲を聴いた時でした。

前述のGiulio Moschini氏がギターソロでゲスト参加する5曲目は、本作で最もデスメタル寄りのテイストの曲と言えるでしょう。ギターリフは甘くなり過ぎない邪悪なトーンと、Giulio氏の流麗なギターソロのコントラストが素敵です。

Amduscias氏がゲストヴォーカルとして参加する6曲目、どことなく破滅と落下のイメージが香る7曲目が続きますが、ここまで聴いてて、やはり本作、ほぼ1曲ずっとファストに爆走しっぱなしという曲はなく、ファストなパートとムーディなパートが緩急つけながら1曲の中に配置されてることに気付きます。その対比が見事で、聴いててあまりダレる事もないのではないかとも思います。

そして本作最大の新機軸となるのが8曲目でしょう。ロックンロール風なテイストも漂う、ミドルテンポのストレートなメロデス風な曲。個人的にはDissectionの3rdに入ってそうに思えるこの曲を聴き、本作がそれと同じベクトルにあるという事を確信。Blanislav氏がどう考えてるのかは自分には分かりませんが・・・。

ヴォーカル無しでちょっとドゥーミーに進む9曲目も、新しい試みの1つ。他の曲に比べるとそれほど印象的ではないかも知れませんが、きっと無視できない新要素だと思います。

そしてエンディング。再びOphélie Gingras女氏のオーケストレーションでジワジワと幕を閉じ・・・。

 

バンドの成熟を見せるドラマティックな作品

・・・過去作品と比較すると、ファストなパートは減少してて、攻撃性を求めるリスナーにはちょっと物足りない感じに聴こえるかもしれませんが、一方でメロディーや曲構成はより印象的になったように思います。

前作なんかは特に、ブラストビートがズババババ・・みたいなパートの割合も多く、ほとんどDark Funeralのようなブラックメタルストームの様相でしたが、本作ではそうしたファストなブラストビートを用いつつも、同じくらいの割合でもっと大人びた、ムーディな曲展開・構成とメロディーも配置されていて、バンドの成熟を感じさせます。

語弊を恐れずに言えば、よりキャッチーに聴きやすくなったと言えるかもしれません。

 

個人的には、Dissectionの後継者みたいなイメージもあってかやはり、そのDissectionが名盤の2ndから長い時を経たのち、3rdアルバムで提示して見せた、あの変化というかベクトルというか・・・を思い起こさずにはいられません。

2ndアルバムは1stの延長。時を経て世に問う少し(?)趣の異なる3rd。BaneよそこまでDissectionをフォローしてみせるのか、みたいな。とはいえDissectionのアレほど面食らいそうな違いではないのですが。

 

Blanislav氏自身は本作の出来を、これまでの作品に比べてメロディーや曲の構成・アレンジの点で進歩してると語っています。同時に、全体的な作風やスタイルは1stアルバムの頃から変わっていない、とも。

個人的には実際その通りだと思います。アルバム全体の印象はBlanislav氏の語る通り、前作まで提示してきた、Dissectionをはじめとする90年代のスウェディッシュ勢の流れを受け継いだブラック・デス、というスタイルを保ちつつも、より印象的なメロディーとドラマティックな曲構成に磨きをかけた強力盤だと思います。

DissectionやDark Funeralのファンの方、メロブラ・メロデスファンの方はきっと気に入るはず。個人的には一体なぜ日本ではほとんど露出してないのか謎。そのくらいの思い入れになったバンド&作品です。

本ブログThe World Wont Hold Your Handでは、我等がBaneを勝手に全力でプッシュします!

 

参考にした記事たち↓

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