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[レビュー]The Stone – Kosturnice (セルビア/ブラックメタル)

[レビュー]The Stone – Kosturnice (セルビア/ブラックメタル)

セルビア出身の超ベテランブラックメタルThe Stoneの8thフルアルバム。前身のStone To Fleshの作品を含めると9作目のフルアルバムになります。2021年作品で、ベルギーのImmortal Frost Productionsからのリリース。

CDとアナログの両方がバージョン違いでいくつか用意されていて、自分の様な半分追っかけみたいな人間泣かせのリリースですね(笑

CD盤はデジパックと通常版、アナログはマーブル模様仕様をオーダーして確保しました。

[海外通販記]BandcampでThe Stoneの新作を注文・無事届くのかやってみた[第6弾]

関連情報

The Stoneはセルビア産ブラックメタルの大ベテランというか、もはや大御所中の大御所であり、代表格の中の代表格。The Stoneなくしてセルビアのブラックメタルは語れないという超重要バンドであり、シーンの中心に存在するバンドと言っても過言ではないでしょう。

本ブログでもほとんどの作品を紹介していて、このたび待望の新作である本作”Kosturnice”が投下。非常にありがたく、リリースを心から祝したい限りです!

 

バンドのスタートは1996年、Stone To Flesh時代にさかのぼります。このStone To Flesh名義ではデモ2本とフルアルバム1枚をリリースしています。

2001年にはThe Stoneに改名、バンドの中心人物であるKozeljnik氏主導のもと、コンスタントに作品をリリースし続け、セルビアブラックの大御所という現在の地位を不動のものとしています。本作では彼らの作品のいくつかを紹介していますので、作品ごとの関連情報はそちらの紹介記事に譲りたいと思いますが・・・このKozeljnik氏こそ、セルビアブラックメタル界の第一人者であり、シーンを牽引する人物という事になるでしょう。

 

さて、2017年の7thフル”Teatar apsurda”、それから2019年のEP”Kruna praha”に続く本作、”Kosturnice”。今作の編成は前作にあたる”Kruna praha”EPのラインナップを引き継いだものになってますね。

仕掛け人であるKozeljnik氏(ギター)、Glad氏(ヴォーカル)、Vrag氏(ベース)、Demontras氏(リズムギター)の4人に加え、前作ではセッションメンバー扱いだった、セルビアメタル界の秘かなる立役者Honza Kapák氏(ドラムス)が正式メンバーとしてラインアップに加わっています。

このHonza Kapák氏、本ブログでも度々、完璧超人とかセルビアメタル界の超重要人物の一人とか語ってますが・・・その名声をさらに裏書きするかのように、本作のレコーディングやミックス、マスタリングなどを、自身の所有するHellsound Studioにて手掛けています。

 

Kozeljnik氏Honza氏によるプロジェクトは↓もご参考に

[レビュー]Murder – King of Tyranny (セルビア/ブラックメタル)

それからギターのDemontras氏率いるSamrtも紹介しています

[レビュー]Samrt – Mizantrop Mazohist (セルビア/ブラックメタル)

ということで、安定のラインナップのもとで投下された本作、気になる音の方は如何に。

本編 伝統と新要素。安定感と耳を引く驚き

全体的な質感は最近の作品の雰囲気をかなり引き継いだものになってます。そのへんはメンバー編成の安定感も寄与してるのかも知れません。とりわけ2014年の”Nekroza”アルバム以降の、ほんのり荘厳なメロディー感と仄暗さを全体に纏う感じが、これぞThe Stoneの色彩感覚と言ってよいでしょう。

その安定感は盤石で、良い意味で期待を裏切らない安心感。これまで連綿と紡いできたThe Stoneの香りそのものであり、セルビア産ブラックの筆頭としての威厳を放ちまくってるように思います。

 

思わせぶりな前振りなど一切なし!で、冒頭から押せ押せのブラックメタルの嵐がブラストビートと共に炸裂する1曲目。彼らの新章を告げるトレモロリフの分厚いメロディはもはや荘厳ですらあります。一方でどこか色味を押さえたような妖しさが香ってるのがThe Stoneらしい。曲後半の展開はなんだか暗黒宇宙の渦に引き込まれるよう。。

そしてアルペジオ風のギターリフの装飾がそこはかとなくメロウであり呪術的なタッチの2曲目。この曲はアルバムリリースに先駆けて公開されていたので、本作中でも代表曲の1つに数えられるかも知れません。曲中盤から、ギターはトレモロ主体からザクザクとした刻みに、ドラムスブラスト主体から2ビート主体に移り、曲の表情を変えた姿は、前作”Teatar apsurda”アルバム(だったかな)で聴かれたThe Stoneのデスメタル風味を思い起こさせます。ラストはまるで暗黒の世界に星が瞬くような幻想が描かれてシメ。これはちょっと新しい瞬間かも。

仄暗い水の底から(笑)、何かがうごめいてるような揺らぎのアルペジオで幕を開ける3曲目。単音トレモロリフと疾走ドラムスのコンビが、ほんのりメロディアスでありながら、甘くなく駆け抜けていくという絶妙な加減を見せます。そこから一転して、中盤で重苦しく爆裂凶悪化してブン回してくる展開美が素敵。

4曲目はちょっと前(?)の彼ららしい、人を食ったようなヒネクレ感というか、冷笑的な(いい意味での)うさん臭さが漂ってます。リフの質感はデス/ブラックな感じというのもそのへんに通じてる気がする一品。

続く5曲目、曲中盤のなんだか悲哀に満ちたリフの音色から、壮絶なトレモロ&ブラストビートになだれ込む様が劇的。これまでも薄暗い中で移り変わるドラマ性はあったけど、こんなエモーショナルだったっけ?と思うような一味違う振り幅な気もします。

ちょっとスラッシュメタルみたいにリズミカルなリフが耳を惹きつける6曲目。その点で作中ではちょっと異彩を放つ1曲でもあります。曲中盤ではブラストビートの嵐に、高音弦が絡んで掻きむしるような肌触りのギターリフが炸裂。ブラックメタルですねぇ。曲ラストは再び表情を変え、ミステリアスなリフと爆裂ブラストビートが幽玄な狂気をまとい、視界が歪んで落ちていくよう。。。

7曲目は作中でも割とダイレクトに狂暴性を露わにしてる一品でしょうか。構成もそれほどあちらこちら行ったり来たりではなく・・・。ブラストビートと邪悪トレモロリフの瘴気の嵐、です。

ラスト8曲目はエンディングにふさわしいドラマティックな一品。攻撃性よりも、だんだんと迫りくる終焉の足音をじわじわと描き出すような作風です。終末の世界に響く断末魔に、滅びゆく者の悲哀、何かに当てられたような狂気・・・なんかいろんな色合いの何かが混ざり合った混沌ともいえる不可避の終焉が、容赦ない破壊力で迫ります。

The Stoneらしさ全部入りの良作

個人的には2019年のEP”Kruna praha”でのメロディ感が結構印象的で、続く本作はそのメロディの質感を押し出して新たな要素として盛り込んできそう、と勝手に予想してたのですが・・・その予想はおおむね正解、ってところでしょうか。

上の方でも少し触れましたが、2014年の”Nekroza”アルバムあるいは、それ以降の作品群で聴けるThe Stoneの感じの延長上で想像できるそれに、味わいを増すようなドラマ性とメロディ感のブラッシュアップが見られる様な。。。一方で明らかな変化でもないというのが、「半分正解」と表現した理由でして。

メロディ感はそのままに、というかこれまでのThe Stone感そのままに、セルビアブラックメタルの深淵を描く新作になりました。つまるところ、安心感満載の超安定盤で、The Stoneの持つ仄暗さとほんのり荘厳でちょっともやのかかった様なミステリアスさに、さらなる深みを増した一品です。

 

それからこの記事仕上げるのにさらに聴き直してみると、これまでのThe Stoneっぽさはだいたい含まれてるので、とっかかりの1枚に選んでもよさそうな充実度の様に思えます。とりわけ2006年の“Mgla”アルバムからの中期The Stone(と勝手に理解してる)以降の音楽性を網羅してるような。

という事で、これからThe Stoneに触れる皆様には最初の1枚としても紹介できそうな崇拝すべき良作。

[レビュー]The Stone – Kruna praha (EP) (セルビア/ブラックメタル)

[レビュー]The Stone – Teatar apsurda (セルビア/ブラックメタル)

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