[レビュー]Murder – King of Tyranny (セルビア/ブラックメタル)

[レビュー]Murder – King of Tyranny (セルビア/ブラックメタル)

セルビアブラックメタル界の超超重要人物Kozeljnik氏率いるブラックメタル、Murderの2014年の4曲入りEP。そのKozeljnik氏の本家バンドThe Stoneの作品もリリースしてる、ドイツのFolter Recordsからのリリース盤です。

関連情報

Metal Archivesによるとバンドの結成は2001年にさかのぼるらしい。セルビアのブラックメタル界の超重要人物であるKozeljnik氏と、当時Stone To Flesh(現The Stone)で組んでいたAdmiron氏、それからSablast氏の3人でスタートしたようです。それからほどなくして、ヴォーカルのGlad氏が加入して初期のラインナップが完成した模様。

その後の足取りについての情報は見当たらないのですが、本作”King of Tyranny”のリリースは2014年になります。ブックレットによると、収録曲が書かれたのは1999年~2002年と2010年~2012年という事になっているので、これまでの活動で培ってきた曲たちを集約して収めたのが本作、ということになりそうです。わずか4曲ですが特にKozeljnik氏は本家The StoneやMay Resultをはじめ膨大な作品に関わってますからね。。。

 

本作のラインナップは、Kozeljnik氏(ギター)、Glad氏(ヴォーカル)、Honza Kapák氏(ベース、ドラムス、ギター)という布陣に加え、ドイツのブラックメタルWinterblutのL’Hiver氏がヴォーカルでゲスト参加しています。

もはやセルビアブラックメタルではおなじみの超重要メンバー揃いとも言えそうですが、改めて紹介してみると・・・

Kozeljnik氏はブラックメタルThe Stone、May Resultの仕掛け人であり、その他数多くのブラックメタル作品を手掛けているセルビアブラックメタル界の筆頭人物。それからGlad氏は同じくThe StoneとMay Resultのヴォーカリストであり、そのバンドの作品を高みに引き上げてる人物。

それからHonza Kapák氏はチェコ出身、セルビアブラック界を支えるスーパー超人で、セルビアのメロブラ筆頭BaneやKozeljnik氏のサイドプロジェクトの多くにその名を刻む人物。ギターからドラムスまでこなすミュージシャンであり、自身のHellsound Studioというスタジオを所有し、セルビアのメタル作品の多くの制作にレコーディング面からも関わっています。本作”King of Tyranny”Honza氏の手によるレコーディングです。

またライブではThe StoneやSamrtのDemontras氏や、Ophidian CoilでKozeljnik氏と組んだINIMICVS氏らが参加。ある種セルビアブラックというか、Kozeljnik氏周辺オールスターズみたいな勢い・・・。

ブラック&スラッシュの構成美

・・・とセルビアのブラックメタル界の奥深さというか、恐るべき深淵をうかがわせる本作ですが、音の方はどうでしょう。4曲16分の短い再生時間ですが、心して聴いてみましょう。

全体的には、なんだかやたらカッコいい、スラッシーな質感もあるブラックメタル。普通に聴いてて単純にストレートに格好良くて、初聴きの時は素直に「カッケェ!」ってなりました。

 

不穏なピアノの音色と怪しいナレーションから、スタスタ2ビートで疾走して幕を開ける1曲目。ガリガリとブラックメタルらしい邪悪トレモロリフが正真正銘ブラックメタルでありながら、切り返してザクザク刻まれるリフがクールなスラッシーさで、対照的なコントラスト。中盤では3連のリズムに代わって、一気に勇壮な雰囲気に空気が変わります。この展開がメチャ格好良い。ブラックメタルの様式美さえ漂います。

Glad氏によるヴォーカルは、ここでは気合の入ったわめき絶叫系の表現をしていて、最近のThe Stone作品で聴けるやや抑え目のトーンのディープさとは少し表情が違うのが印象的。

そして続く2曲目は裏打ち2ビートの疾走感と共に、流れる風景が目に浮かびそうなセピア色のトレモロリフが響きます。どことなく本家The Stoneっぽい色合を感じる気もします。中盤ではちょっとメロウなアルペジオから曲が展開していき、再び3連のリズムでうねるような縦ノリで進行。クールさと、そこはかとないメロウさが漂う構成美が光ります。

3曲目はどちらかというとオーセンティックなブラック/スラッシュ感が濃いめの一品。つまりスラッシュメタル的刻みのリフが中心の構成。と思いきや後半では例えばフィンランドあたりのモノトーン荒涼系ブラック勢みたいな(?)寒いトレモロリフが飛び出したりして、単調にならない構成にハッとさせられるあたりがお見事。

ちょっと人を食ったような響きのギターリフが、昔のThe Stoneの感じを連想させるミドルテンポ中心のラスト4曲目。ここでゲストヴォーカルのL’Hiver氏が登場。深くうめくような歌唱が印象的です。直前の3曲目と同じく、後半ではほんのりメロウで荒涼としたトレモロリフと高速ビートが飛び出したりして、ブラックメタルの質感と、スラッシュメタルの格好良さの融合を美しく見せつけ、作品は幕を閉じます。

恐るべきKozeljnik氏周辺作品のひとつ

聴いてて白眉なのは、やはりブラックメタルの邪悪さや寒々しさと、スラッシュメタルのクールでストレートな格好良さを、美しい構成美でまとめ上げてるところになるでしょう。

例えばThe Stoneの曲にするにはちょっとスラッシュメタル寄りにすぎる気もする、なんて考えると、Kozeljnik氏にとってはこのMurderとのすみ分けもあるんだろうなと、分からなくもない感じがするのは、勝手な妄想でしょうか。

本家The StoneやMay ResultといったKozeljnik氏中心の作品の派生の品、として聴き捨てならない作品という事になるでしょう。あれだけの数の作品群に関わっていて、こちらも含め駄作が全くと言っていいほど無いのが恐ろしい、そんな逸品。

ひとつ贅沢を言わせてもらえるなら、この作風でぜひフルアルバムを聴かせて頂きたい><

内容が素晴らしいので4曲16分はあまりにあっという間で、物足りないのです(涙

Kozeljnik氏周辺作品↓

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