[レビュー]Nadimač(Надимач) – Nejebanježivesile (セルビア/スラッシュメタル)
セルビアの首都ベオグラード出身のスラッシュメタル、Nadimač(Надимач)の3rdフルアルバム。2013年作品。
たぶん読み方はセルビア語読みで、ナディマッチになると思います。バンドロゴはじっとよく見ると、キリル文字で作られてます。その点でも本来はキリル文字表記がより正式になると思われるのですが、本記事では分かりやすさのため、いわゆるラテン文字表記でNadimačとしたいと思います。
周辺情報的なもの
バンドの結成は2003年。セルビアの首都ベオグラードで、友人同士だったDragan “Draganče” Ristić氏(ドラムス)と、Marko “Zec” Pavlović氏(ベース)の2人で結成。結成当初はジャーマンスラッシュあたりのファストなメタルを目指していたんだそう。
2007年には1stデモ”Vukodlak Metal”をリリース。この時点でのラインナップは結成メンバーのDragan “Draganče” Ristić氏、Marko “Zec” Pavlović氏の2人と、Miloš “Krle Macola” Krstić氏(ギター)、Dušan “Glasna Komora” Koprivica氏(ヴォーカル)。現時点では自分はチラ聴き程度なのですが、確かにこの頃は初期Sodomみたいなジャーマンスラッシュっぽい、ちょっとどろどろしたオカルト風味もするスラッシュメタルを演っていますね。
その後2007年?2008年?頃にギタリストのStefan “Ćora” Ćorovićと、ヴォーカリストのDanilo “Dača” Trbojević氏が加入。”Dača”氏は同郷セルビアはベオグラードのDaggerSpawnというデスメタルバンドでヴォーカルを務めていたようです。
そしてその後は同じラインナップで2009年にEP、2009年と2011年にそれぞれフルアルバムをリリース。さらに沢山のスプリットをリリースしています。そして続くのが3rdアルバムである本作になります。
Nadimačというバンド名は、セルビア国内でさえ普通じゃないとバンド自身が語っていますが・・・ジョーク的に“ancient Slav demon who lurks in virgin woods”という意味なんだそうです。原木に潜む古のスラヴの悪魔?でいいのかな?
一方で、内側から破裂する、みたいな意味合いでもあるようで・・・エネルギーや怒りで満たされて、あるいはビーフシチューを食べすぎたりビールを飲みすぎたりして・・・ドカン!みたいな?バンドはそんな表現をしています。とにかく「クールと正反対」のバンド名を狙ったようですね。
Nejebanježivesile
バンドの公式HPによると、本作のタイトル”Nejebanježivesile”はNot giving a flying fuck?の意味になるようですが・・・たぶんバンドのノリ的に、タイトルには大した意味はないのかも。
どっしりとしたオープニングリフからジワジワとテンションを上げて行き、一気に炸裂する1曲目。ブラストビート寸前(?)というか、2ビートの限界近い速度(?)みたいなスピード感で、いきなり全開です。そして初聴きだとたぶん、ヴォーカルに驚き。
なんというか、素っ頓狂系のヴォーカルスタイルで、時には金切り声も交えてセルビア語で早口にまくし立てる感じが、個人的にはあんまり聴いたことのない感じだったので・・・。いやでもテンション高いというか、キレてるというか、ブッ飛んでます。
おそらくこの、誤解を恐れずに言えば頭悪そうな(褒めてます)ヴォーカルスタイルがNadimač最大の、ハードコアパンクっぽさの要因ではないかとも思います。
ギターリフの感触は、これまで聴いたり触れたりしてきたバルカンスラッシュ勢の例に漏れず、どちらかと言えばあまり湿り気を感じない、比較的カラッとした雰囲気。そのあたりもクロスオーバースラッシュ的な要素の1つになると言えそうです。
全体的にはこんな感じで基本ハイテンションで爆走するクロスオーバースラッシュのお手本みたいな作品で、アルバム全編通してそれは変わりません。以上。
ってまとめてしまうとレビューがそこで終わってしまうので、以下で個人的なお気に入りの曲をピックアップしてみましょう。
4曲目は良い意味であんまりヒネッてないストレート&ファストなリフが、強力なパンク/ハードコアっぽさを醸し出していて印象的。一方で、中盤切り込んでくるギターソロが案外ドラマティックだったりも。
ちょっと対照的なのは8曲目。運指の細かい、目の回りそうなリフがぐるぐるなった後は、ちょっと邪悪な響きのリフで、これまた爆走。これは文字通りイーヴルでカッコイイ。聴いててとてもスリリング。ドラムスのバカスカ叩きっぷりも素敵です。
メロウなイントロを持つ10曲目。これはちょっと昔のジャーマンスラッシュっぽい感じがする気がします。瞬間的にですが、これKreatorか何かの曲にこんなパートなかったっけ?となる場面も。リフに合わせてギャァ!ギャア!ギャア!って金切り声で叫ぶあたりがキレてます。。
全体の音質はクリアで分離も良く、特別文句のつけ所もありません。存分にザクザクしたリフ、爆走ドラムビート、ぶっ飛びシャウトに酔えると思います。
壊れ系のテンション激高スラッシュ
バンド自身、自らの音楽を、ハードコアパンク・オールドスクールパンク・デスメタル・グラインドコアの影響を受けたクロスオーバースラッシュと語っている通り、実際のサウンドも一発でそれと分かる音になっていると思います。
個人的にはパンク方面の要素はあまり詳しくないのですが、例えるなら、Slayerが”Undisputed Attitude”アルバムで演ってた様な感じもあるというか・・・。
過去作品はちょい聴きした程度なのですが、バンドの初期作品では前述のように初期Sodomみたいなスラッシュメタルの要素が強いように思えますが、現ヴォーカリストのDanilo “Dača” Trbojević氏の加入後は徐々にハードコアパンクの要素を強めて、よりクロスオーバースラッシュ色が強く出るようになっている、という印象です。
実際、セルビア人”メタル”英会話講師、彼はVrljikaというミクスチャー系メタルバンドでベースをやってて、このNadimačとライブをやったこともあるらしい(!?)のですが、その講師曰く、ヴォーカルが “Dača” 氏に代わってからは一気にクロスオーバー的になって特徴的になったと思う、とのことでした。
彼らのインタビュー記事読んでて一番印象的だったのが、以下の
Get a life! Get a real metal/music experience, be part of the scene or fuck off! You can`t compare 20000000 mp3 albums at home with one LIVE show experience, one beer in your neighbourhood with your friends, or one mosh pit! - Obliteracion Webzine
という発言。要するにダウンロード音源で通ぶってないで、マジの”メタル”を体験しやがれ!みたいな?
この発言が彼らの、メタルに対する姿勢のすべてを物語っているような気がします。2千万枚のmp3アルバム聴いたところで、そんなの1回のライブ体験と比較にもならないって。
この発言、彼らの情熱というか熱意みたいなものを感じずにはいられません。残念ながらセルビアでメタルをやるというのはいろんな面でかなり大変な事の様なのですが、その中でコンスタントに作品をリリースし続けているのが、その何よりの証拠でしょう。
・・・と時にタイトでエクストリームであり、時にイケイケのパンク/ハードコア風味だったり、また時には(いい意味で)非常にバカっぽいノリのある、情熱あふれまくる壊れ系のテンション激高クロスオーバー・スラッシュ。本作もまたバルカンスラッシュのレベルの高さを見せつけてる1枚だと思います。ホント、バルカンスラッシュ勢のリフ使いの巧さといったら、ですねぇ。
amazon様↓
Nadimac – Nejebanjezivesile
1stアルバム”Državni neprijatelj broj kec”も↓記事で紹介しています
[レビュー]Nadimač(Надимач) – Državni neprijatelj broj kec (セルビア/スラッシュメタル)
参考にした記事たち↓
Nadimac Biography – Official
Interview: NadimaC – Metal Jacket Magazine
Interview: Nadimac (Serbia) – Obliteracion Webzine
Interwiew to Danilo Trbojevic from Nadimac – Arsenal Del Metalero
Danilo Trbojevic (Nadimac) – metal-temple.com
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