[レビュー]Psychoparadox – Through the Labyrinths of Sleeping Galaxy (セルビア/メロディック・デスメタル)

[レビュー]Psychoparadox – Through the Labyrinths of Sleeping Galaxy (セルビア/メロディック・デスメタル)

セルビアの東部の都市スメデレヴォ(Смедерево/Smederevo)の出身のメロディック・デスメタルPsychoparadoxの2ndフルアルバム。1997年作品で、自分がゲットしたのは2003年にセルビアのRock Express Recordsから再発されたCD盤。オリジナルはカセットのみのリリースだったようです。

カバーアートは再発にあたって新装になってるみたいで、どおりでリリース年の割にカバーアートが今風なわけです。ゴズミックなグリーンが綺麗。

関連情報

Metal Archivesによるとバンドの結成は1993年。1995年には1stアルバムをリリースしていて、1997年にリリースされた本作、”Through the Labyrinths of Sleeping Galaxy”は続く彼らの2ndアルバムになります。そして翌1998年には3rdアルバムもリリースされています。

この90年代初頭という時代は、ユーゴスラビア解体に伴う紛争が続いていた時代で、なんでも彼らはユーゴスラビア解体後初めてメタル作品をリリースしたバンドになる、とのことです。そして同時に、旧ユーゴスラビア地域のメタルシーンの復興の一翼を担った重要バンドでもあります。

バンドは2008年に一度解散し、2011年には再結成していますが、1998年の3rdアルバム以降の音源のリリースは無いようです。

 

アルバムのブックレットによると、本作のレコーディングは1996年に行われたようです。レコーディング時の編成は、Srđan “Sirius” Branković氏(ヴォーカル)、Miroslav “Mira” Branković氏(ギター)、Branislav Blagojević氏(ギター)、Ivan Cvetković氏(ベース)、Marko Jugović氏(ドラムス)という5人。

ラインアップで注目すべきは、Srđan “Sirius”氏Miroslav “Mira”氏のBranković兄弟。このBranković兄弟は後にメロディック・メタルのAlogiaやДеспот(Despot)、シンフォブラックのDraconicの1stアルバムに関わっていくという、セルビアメタル界の超重要人物です。

 

Branković兄弟関連作品は↓記事でも紹介しています。

[レビュー]Деспот(Despot) – Деспот (セルビア/メロディック・メタル)

[レビュー]Draconic – Conflux (セルビア/シンフォニック・ブラック)

ちょっと不思議系プログ・メロデス?

さて、そんなセルビアメタル界の、ある種のレジェンドとも呼べそうなこのPsychoparadoxですが、音楽の方はちょっとトリッキーというかプログレッシヴ風?でテクニカルな要素もあるメロディック・デス。

基本的にはメロデスらしいメロディ感とザクザク細かく刻んでくるギターリフが中心に据えられてるのですが、1曲の中にあれこれ細かな展開が配置されていて、結構目まぐるしく移ろっていく感じ。

 

曲の出だしから、スタスタと疾走するリズムに乗せてザクザク刻みまくるリフが格好良い1曲目。メロデスらしいメロディ感で、刻みからトレモロリフに切り替えてもそれは同じ、うっすらメロウながらどこかアツいところもあるというそれです。中盤ではスロー・ミドルテンポで展開するパートもあって、そこではなんとなく東欧らしい、程よく聴きなれないミステリアスさが香ってる気がします。

2曲目は、本作収録の曲の中でも一番のダイレクトなアグレッシブさを感じる1曲。イントロのちょっとメロウなメロディはなんとなくDissectionの初期作品を思わせる雰囲気。その後は高速に刻まれるリフがクールです。そして中盤から一気に狂ったようなギターソロで劇的に畳み掛けてくる様子に舌を巻きます。これは早くも本作のハイライトのひとつに数えられるでしょう。

アコーティックギターのイントロに導かれる4曲目。これはちょっとメロウで空虚な空模様を思わせる雰囲気。いろんなメロディーがそこかしこで乱舞してますが、どれをとっとってもなんだかちょっと、うつむき加減というか、どうも明るくなりきれない何かを感じます。

5曲目はアコースティックギターとクリーントーンのギターがぽろぽろと絡み合う、夢見るようなインスト。そこはかとなく切なげなのが良い味出してます。

そして続く6曲目冒頭にギャップ萌え。ここまで、ザクザク刻み系のスタイルから一転、ほとんどブラックメタルかと思うようなメロディ感&ブリザード感のトレモロの嵐です。前曲の静寂から一転してのこの展開に、文字通り驚かされます。曲の中盤以降はまたザクザク刻み系のリフが中心に戻ってきますが・・・ホント曲冒頭のトレモロパートが狂おしい。

8曲目は前半のリフと疾走感がメロデスらしい一品。・・・なのですがやっぱりどことなく、メインストリーム勢とはちょっとズレたミステリアスさというか不思議感が漂うのは東欧産だからでしょうか。。それとも単なる先入観?曲中盤でスローダウンして、ドラマティックなギターソロ&クリーンヴォーカルが入るのですが、そのへんのトーンがやっぱりちょっと違ったほの暗さなのです。

9曲目も導入部分はメロウなリフと疾走感がメロデスしてるのですが、中盤には変拍子&うにょうにょした単音リフのパートが挟まれていて、なにやらプログレッシヴ風。他にもいくつかの展開を交えて進行していって、聴いているとどれがメインのリフやメロディーなのかつかめない迷宮感。

ラスト11曲目は、なんでも4曲目のオルタナティヴ・バージョンとのことですが、雰囲気が違いすぎてどこが同曲なのか全く分かりません(汗)。全楽器がクリーントーンで演奏していて、ヴォーカルはささやき声になってるのですが、なんと形容したらいいのか・・・ジャジーというか、フュージョン風なのかな。特に、フレットレスベースなのかな?・・・がみょんみょん言ってるのがいかにも、です。

やや散漫ながらも重要盤

上述のように、ところどころ印象的な瞬間もあるのですが、一方でプログレッシヴ感というか展開の多さが逆に、つかみどころの無さを生んでいるような気もしてしまうのが、玉にキズ。

もっと聴き込めばひょっとするとまた違う何かが見えてくるのかも知れませんが、今のところハッとされられる瞬間もある反面、大半がするすると流れていってしまうような印象なのです。

もしかすると音質も影響してるのかも知れません。特別音質が悪いわけではないのですが、90年代のメロデス方面らしい、ややパンチとかインパクトに欠けるこじんまりとした音質で、曲の特徴があまり伝わりにくい様な気がするのです。時代ってもんがありますので、それを望むのは贅沢なのかも、ですが。

とはいえ、1997年時点でこの音楽というのは、決して大きく遅れをとるものでもないと思います。最先端というわけにはいかないでしょうが、特にバルカン地域で見た場合だと特に、エクストリーム方面のメタル自体がまだ希少な時代のはずなので、そんな中ここまで堂々とやってのけるのはきっとお見事。

北欧勢に対する東欧からの回答、みたいに表現してもいいのかも。

という事で、やや決めテに欠ける点を残しつつも、セルビアあるいは旧ユーゴスラビア地域のメタルを知る上で重要な作品ということになるでしょう。

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