[レビュー]Draconic – Conflux (セルビア/シンフォニック・ブラック)

[レビュー]Draconic – Conflux (セルビア/シンフォニック・ブラック)

セルビアの首都ベオグラード出身のシンフォニック・ブラックメタル、Draconicの1stフルアルバム。2004年作品。Discogsで本国セルビアからお取り寄せの品のひとつ。今は無きセルビアの重要レーベル、Rock Express Recordsからのリリース。余談ですが裏ジャケの住所が、「ユーゴスラヴィア」のベオグラードになってるのが時代を感じさせますです。。

関連情報 セルビアメタル界の隠れスーパーバンド?

いつものように、あんまり情報源が無い中での紹介になりますが、今回の主なソースはいつものMetal ArchivesとWikipedia。

バンドの結成は、ソースによって記載が異なってますが・・・2002年か2003年。最初は、キーボード担当のBranislav “Antares” Stanković氏のソロプロジェクトとして始まったらしいです。この “Antares”氏は隣国ボスニアのプログレ・メロデスInterfectorでも活動していますね。

2003年にそのInterfector、Amaranthとのプロモスプリットのリリースの後、翌2004年に1stアルバムである本作、”Conflux”がリリースされました。

本作のレコーディング時の編成は、Branislav “Antares” Stanković氏(キーボード・ヴォーカル)、Srđan “Sirius” Branković氏(ギター)、Miroslav “Mira” Branković氏(ギター)、Damir “Procyon” Adžić氏(ドラムス)、Milan Šuput氏(ベース)、Mihaela “Tania” Gačić女氏(ヴォーカル)の6人。

メンバーのうち、ギターの“Sirius”氏と“Mira” 氏は同じBranković姓の通り実の兄弟で、90年代のユーゴ解体後初めてメタル作品をリリースしたバンドで、かつ紛争後のメタルシーンの復興を担った重要バンドと言われる(らしい)Psychoparadoxのメンバーでもあります。

そしてこの2人は、後にセルビアの大御所メロディックメタル(でいいはず)となるAlogiaを率いていったり、またДеспот(Despot)というフォーク風味満載のメロディックメタルプロジェクトの仕掛け人となる、輝かしい実績の持ち主。さらにはエピック・シンフォニックブラックメタルNúmenorも、関連バンドのひとつです。さしずめセルビアメタル界のAmott兄弟といった感じ(?)でしょうか。

さらには、ドラムスの“Procyon”氏も同じく前述のPsychoparadox出身ということで、ここに挙げたバンド名を見るにこのDraconic、セルビアメタル界のスーパーバンドのひとつ、と呼んでも良いのかもしれません。

この1stアルバムのあと、デモやスプリット音源を挟み、2009年に2ndアルバムをリリースしていますが、残念ながら、2011年にシングルをリリースした後に解散してしまっているようです。

 

Wikipediaによると、バンドは彼らが聴いて育った90年代のメタルに主に影響を受けているとのことで、Strapping Young Lad、Soilwork、Meshuggah、Pantera、In Flames、Megadeth、Dream Theaterといった名前が挙がっています。なんだか共通点があるような無いような。

 

Miroslav氏Srđan氏Branković兄弟が後に参加するДеспот(Despot)は↓もご参考に。

[レビュー]Деспот(Despot) – Деспот (セルビア/メロディック・メタル)

 

Key奏者の“Antares”氏関連バンドであるボスニアのInterfectorは↓記事で紹介しています。

[Review]Interfector – The Force Within (ボスニア・ヘルツェゴビナ/ブラックメタル)

煌びやかなKeyが冴えるメロデス/ブラック

ということで、そんな彼らの音楽がどんなものなのか、聴いてみましょう。

全体的な印象は、きらびやかなkeyが全編にちりばめられた、壮麗なシンフォニック・ブラック・デスメタル、という感じでしょうか。

そのkeyの音色は基本的にはピアノ調の音色含め、シンフォニック方面として分かりやすく、実際非常に聴きやすいものですが、ときおりサイバー風というかインダストリアル風な、デジタル風味のアレンジを効かせるあたりが特徴的かもしれません。

ギターのリフ使いやメロディー感は、ブラックメタルというよりは、結構メロデス寄りかも。そこに“Tania” 女氏のファルセットヴォーカルが重なる瞬間は、シンフォ・ゴシックの様にも聴こえますね。美しいシンフォニ-を下敷きに、ブラック~デス~ゴシックあたりの表情が代わる代わる現れます。

・・・と書くと、カテゴライズ的には何と形容したら良いか迷ってしまいそうな気もしますが、ブックレットのメンバー写真を見るに、コープスペイントのお兄様もいるので、やっぱりブラックメタルを志向してる、という事で良いのかも。

 

壮大なkeyによるイントロの1曲目に続き、本編の幕開けを飾る2曲目。楽曲をリードするのは、跳ねるようなリズムが勇壮で高貴なキーボード。2転3転と展開していく曲構成がスリリングで、縦ノリのリズムが心地よいです。ブラックメタルらしいハイピッチのわめき声、華を添える女性Voのバック&リードヴォーカル、弾きまくり系のギターソロと、彼らの持ち技全部乗せで集約したような1曲といえそうです。

個人的な本作の一番のお気に入りが、続く3曲目。ミドルテンポで終始進みますが、ふわふわしたキーボードのメロディーが乱舞する様は幽玄でミステリアスそのもの。この浮遊感?コズミック感?がたまりません。じわじわと楽曲が盛り上がっていき、ピークに女性リードVoが切り込んでくる瞬間にドキッとします。

それから、5曲目はメロデスタッチながら、フィーメイル・ゴシックものに通じそうなロマンティックさやメロウさが満載の一品。中盤では一瞬ブラストビートが飛び出したりと、案外ドラマティックな展開も隠されてます。美しい。

7曲目は後半部分に、サイバー風?インダストリアル風?な風合いが凝縮された1曲。それまでの美麗シンフォニックはどこへやら、一気にデジタルワールドに吸い込まれます。裏拍(って日本語あるのかな)でリズムを取るあたりが妙にダンサブルな雰囲気だったり、うにょうにょしたエレクトロ(?)アレンジが飛び出したり・・・

そしてエンディングの8曲目はピアノ独奏のアウトロ。どことなく孤独を感じる切ない雰囲気です。

 

 

・・・聴いてて唯一残念なのは、音質がちょっとチープな事。ややピンボケ風の不鮮明さというか・・・もうちょっと全体がクリアで、音の分離もはっきりしてると一気に化けそうな。

セルビアメタル界の・・・

ちょっとミステリアスで耽美的な作風は、どことなくノルウェーのCovenant(”C”の方)、とりわけ名盤”Nexus Polaris”アルバムを思い起こさせます。あのアルバムもスーパースター大集合みたいな編成だった気がするので、そのへんの共通項もあって、なんだかイメージが重なります。

ということで、勝手にセルビアメタル界のCovenantと呼ぶことにしましょう。

実はどうやら、後の2ndアルバムでは本作での方向性から一気にモダンな作風に激変してしまうようなのですが(未聴)・・・そう思うと、あれ?どこかのバンドも作風ずいぶん変わったんじゃなかったっけ???

とかなんとか、本作を聴きながらあれこれ考えると、創造性の一瞬のきらめきを封じ込めた様な作品にも聴こえてきそうで不思議です。そしてその儚さというか移ろいやすさといったら!

 

ブラック~デス~ゴシックあたりの表情を、壮麗なシンフォニーで包み込んだ美しい1枚です。

 

Amazon様↓


Nexus Polaris

なんとなくこのアルバムと勝手にイメージが重なります。

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