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[レビュー]Khargash – Pathway Through Illumination(セルビア/シンフォニック・ブラックメタル)

[レビュー]Khargash – Pathway Through Illumination(セルビア/シンフォニック・ブラックメタル)

セルビアのノヴィ・サド(Novi Sad)出身のシンフォニック・ブラックメタル、Khargashの1stフルアルバム。2012年作品。セルビアの重要レーベルMiner Recordings盤。以前レビューしたセルビアのシンフォブラックSakramentumの音源もココから出てますね。

こちらもセルビア旅行の時にベオグラードのレコードストアでゲットしたもののひとつで、新品なのに日本円で約700円強という驚きのお値段。そして新品にも関わらず袋に入っておらずプラケースむき出しだったので、いきなりスリキズだらけ&開閉のツメ折れというこれまた驚きの素晴しいコンディションでした><

たぶん要注目のバンド周辺情報

このKhargashというワードはバンド名そのものであり、また本作でヴォーカル、ギター、ベース、キーボード、果てはヴァイオリンまで手がけるブレインKhargash氏の名でもあります。同郷のブラックメタルKozeljnikのKozeljnik氏みたいなもんでしょうか。

Khargash氏はまた、セルビアのメロデスBaneの1stアルバム時のメンバーでもあります。他にもブラックメタルのPaimoniaに関わっていたり、デスメタルObscuredやブラック/スラッシュのTerrörhammerにも在籍していたりと、セルビアメタル界の重要人物の1人といっても良いかもしれません。

また、レコーディングメンバーとして、チェコのMaster’s HammerのドラマーHonza Kapák氏がリードギターとミックス&マスタリングを担当。彼はBaneやThe Stoneなどなど、セルビアのバンド達との関わりも相当深い。彼もまた、セルビアのメタル界を支える重要人物といえるでしょう。

さらに、元Baneで、現在はPaimoniaやZloslutで活躍するB.V.氏もセッションギタリストとして参加。今でこそ皆さんはそれぞれに活躍してますが、ほとんどある種当時のオールスターバンドみたいな様相ですね。

 

B.V.氏とKhargash氏がいたブラックメタルPaimoniaの音源は↓で紹介しています

[レビュー]Paimonia – Modern Way of Distraction (セルビア/ブラックメタル)

Khargash氏はBaneの1stアルバムにも参加してますね

[レビュー]Bane – Chaos,Darkness&Emptiness(セルビア/メロディックブラック・デス)

壮麗&ドラマティックなKhargashワールド

1曲目はイントロでインスト。なんだかモワモワとダークな空気を運んできます。

本編幕開けを飾る2曲目は、爆速ブラストビートで聴く者を驚かせた後は一転、ミドルテンポでじわじわと進み、クライマックスでヒロイックなメロディを煌かせる熱い1曲。この決めのメロディが、胸を高鳴らせます。カッコイイ。

3曲目はまるで、地獄の底で微かな光を見、手を伸ばすもその手は空を切るばかり・・・とかなんとか、何かに追いすがる様なメロディーが見事。胸が張り裂けそうな。ヴォーカルはハイピッチの絶叫系と、低音グロウルを使い分けているのですが、曲後半のとある絶叫パートが、DissectionのThe Somberlainアルバムに入ってる“Black Horizons”のサビ(?)パートの、“I was boorrrrn in siiiihn!!!” のところの歌唱と重なります。

曲最後の荘厳なキーボードと鐘の音色、果たしてさまよえる魂は救われたのでしょうか。。。

 

続いて、奇妙なキーボードサウンドに導かれブラストビート全開で幕を開ける4曲目。このあたりの暴虐パートはいかにもメロブラといった感じながら、曲後半では一気にドリーミーで暖かさすら感じそうな展開を見せる振り幅にハッとします。その暴虐パートはBaneの作品でも聴かれる、スウェディッシュメロブラの流れを汲む質感でしょうか。

5曲目は夢の中でまどろむ様な淡いシンフォニックさのインタールード。

冒頭のメロウなトレモロリフが超必殺。ほとんど神懸り的な気のする6曲目。初めて聴いた時にWTF!?って驚くほど印象的だったのは個人的に久しぶりで・・・分かりにくいのを承知で例えるなら、その昔聴いたLimbonic Artの1stの1曲目”Beneath the Burial Surface”の8分過ぎの展開とその後のトレモロメロディー(ソロ?)。あまりの美しさと恐ろしく刺さるメロディーに一発で射抜かれた、あの衝撃に似てます。

聴けば聴くほど、メロディーの持つ魔力に堕ちてしまいそう。

続く7曲目はファストなパートを中心に据えたアグレッシブな一品。この曲もやはりスウェディッシュ方面のメロディ感が漂ってる気がします。なんというか、リフは寒々しい一方で、メロディーはじわりと熱いあの感じ?

本編ラストの8曲目は、エンディングに相応しい、Khargashワールドの終わりに微かな希望を覗かせるようなメロディと展開が配置された(ような気がする)曲。ファストなパートも挟みつつ、雲間から光が射すような切り替えが耳を引きます。その分ブラックメタルの暗黒感は薄めですが、作品全体の色彩感覚はそれほど黒すぎないので、ネガティブな要素にはなりません。Khargashというバンドを表現するトーン、だと思います。

そしてアウトロでインストの9曲目でフェードアウトするように、全9曲37分のKhargashワールドは幕を閉じます。

セルビア産ブラックの名盤(になるはず)

最初の方に書いたように、セルビアのブラックメタル界の才能あふれる重要人物たちが参加してる本作、それを思うと内容は折り紙つきの、セルビアン・シンフォブラック。このメンツで悪いわけが無い、ってやつです。

全体の質感としては、メロ/シンフォ系らしく少々、時には結構甘美な方向に聴こえます、個人的に。一方で十分なアグレッシブさも持ち合わせているので、決して甘くなりすぎないバランスを保っているんではないかと思います。

おそらく筆頭はソングライターでブレインであるKhargashの才能やセンスによるところなのでしょう。彼のイマジネーションあるれる曲構成やメロディ、シンフォニックアレンジが全編に冴え渡っています。

そして豪華なセッションメンバー陣が作品にさらなる彩りを沿え、本作を比類なきものにしている、と書くと言いすぎでしょうか。

いや本当に、時折見せる奇跡のように冴えまくったメロディーとアレンジがお見事。セルビア産ブラックメタル特集がもしあるなら、必聴盤の1枚に入るはず。

 

きっとこれはセルビアが生んだ、甘美さと異形の悪夢が交錯するKhargashワールド。

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Khargash – Pathway Through Illuminaiton

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