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[レビュー]Nadimač(Надимач) – Po kratkom postupku (セルビア/スラッシュメタル)

[レビュー]Nadimač(Надимач) – Po kratkom postupku (セルビア/スラッシュメタル)

 

セルビアの首都ベオグラード出身のスラッシュメタル、Nadimač(Надимач)の2ndフルアルバム。2011年作品。

先に紹介した彼らの1stアルバム”Državni neprijatelj broj kec”と同じく、本作も2017年リリースのコンピレーション盤”Iz Keca U Kec”からのレビューになります。

このコンピは2009年の1stアルバム”Državni neprijatelj broj kec”と、この2nd”Po kratkom postupku”をカップリングしたお徳盤。後半部分にこの2ndアルバムの楽曲が収録されているので、そちらをご紹介します。

1stアルバム”Državni neprijatelj broj kec”については↓記事をどうぞ。

[Review]Nadimač(Надимач) – Državni neprijatelj broj kec (セルビア/スラッシュメタル)

周辺情報

本作のオリジナル盤のリリースは、前作と同じ中国のAreaDeath Productionsというレーベルから。

加えてメンバーも前作と同じ編成で、Danilo “Dača” Trbojević氏(ヴォーカル)、Stefan “Ćora” Ćorović氏(ギター)、Dragan “Draganče” Ristić氏(ドラムス)、Marko “Zec” Pavlović氏(ベース)の4人。

ちなみにこの編成は現時点での最新作である5thアルバム”Besnilo”まで不変で、セルビアのバンドとしてはかなり珍しいケースです。時としてバンドの存続さえ困難だったりするセルビアで、この不動のラインナップはその意味で抜きん出てているように思われます。

本作発表時期のインタビュー記事によると、リハーサルを通しての音作りや機材のセットアップを自分たちで行うなど、かなりDIY的な手法でレコーディングが進められたようです。そしてその後のレコーディングそのものは、4~5日で行われたとのこと。

エクストリーム・スラッシュ再び

バンドのコメントによれば、本作はもっとエクストリームなクロスオーバースラッシュになっていて、スラッシュメタルだけでなくパンクやハードコアあるいはグラインドコアの要素がもっとある作品、とのことですが・・・果たして我々にはどう聴こえるのでしょうか。

 

印象的な曲を挙げていくと・・・まずは4曲目。グラインドコアにも通じそうな、アグレッシブで強引なリフで押しまくる様子が際立ってます。運指の細かいグリグリしたリフもテクニカルで格好良い。前作同様、本作は部分的なスローパートを除けば、基本的に全曲がスラッシュ大爆走な雰囲気ですが、この曲は中でもスピード感と攻撃力が際立ってるように感じますね。

それから7曲目の冒頭、ちょっと悲鳴のようにも聴こえる叫び声。若干声がひっくり返りそうになってるあたりが、個人的にミニオンみたいに聴こえて仕方がなくて、聴くたびに笑いそうになります>< 曲そのものはスローパートをはさんでタメを作りながら、その後せきを切ったように炸裂する、コントラストが聴いたもの。

11曲目は導入部などいくつかのパートで使われている、ロックンロール風(?)のノリノリでダンサブルなリフが耳を引きます。ライブでやるとお客さんのモッシュも盛り上がりそうな。

そして続く12曲目は、Kreatorの”Pleasure to Kill”のカバーなのですが、いやこれ誰もカバーだって分からないだろ、というある種の破壊ぶりです。具体的には、ドラムロール→「プレジャトゥキル!!!」ってスネア3つ、ギター3ストロークで終了。プレイタイム6秒。これってNapalm Deathの”You Suffer”ってことなのか??

このマジなのかギャグなのかがよく分からないあたりが彼ららしいというか、広く言えばセルビア産スラッシュらしいというか、です。

 

楽曲のスタイル的には前作と比べて(良い意味で)何も変わっていないと思います。つまり全編に渡ってハイテンションぶりを見せていて、せわしない曲展開とリフ&ソロの応酬、グラインドコアばりのファストなリズム、早口でまくしたてるナイスなすっとん狂ヴォーカル・・・どこをとってもNadimač。

全体の音質は基本的に前作とほぼ同じ、ちょっと懐かしさも感じそうな、いかにもスラッシュメタルといった音作りですが、若干クリアになって厚みも増したようにも思います。ただ自分の入手したコンピ盤だと、音質の違いで1st音源と2nd音源の境界を判別るのはたぶんかなり難しい、そんな差なのですが。

にじみ出るスラッシュ愛と情熱

全体的には、彼らNadimačのファストでアグレッシブなエクストリーム・スラッシュがこれでもかと炸裂しまくる、彼らのスタイルど真ん中な作品。

全曲がスラッシュ爆走チューンで、常にテンションがピーク状態なおかげで聴きどころを見逃しがちだったり、もうちょっとキャッチーさが欲しい気もしてしまうという点もあるにはあるのですが・・・前作を紹介した記事でも書いたように、それはちょっと贅沢な注文でしょうか。

というのは、クロスオーバー風のライトなノリの良し悪しはともかく、アルバム全編をこれだけのテンションで突き抜けていく作品というのは、なかなかお目にかかれないように思うのです。

手垢の付きまくった例ですが、Slayerの”Reign in Blood”が全編アグレッシブの典型として語られるとすると、彼らNadimačの音楽というのは、それをクロスオーバースラッシュの(良い意味での)ライトなノリでやってのけたような、そんな風にすら思えてきます。

そして何より驚かされるのが、どうやら彼らにとってはそれが自然っぽいこと。「やってやろうぜ!」って意気込んで企画したものではなく、普通に好きなことをやってたらこうなったみたいなナチュラルさを感じさせるあたりが見事で、彼らのスラッシュ愛というか、情熱というか・・・の大きさを思わずにいられません。

ちょっと大げさになりすぎかもしれませんが、とにかく爆走クロスオーバーぶりはきっと折り紙つき。クロスオーバーファンはきっと気に入る作品でしょう。そしてセルビア産スラッシュを知るにはきっとマスト。

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Nadimač – Po Kratkom Postupku
 

3rdアルバム”Nejebanježivesile”は↓記事で紹介しています。

[レビュー]Nadimač(Надимач) – Nejebanježivesile (セルビア/スラッシュメタル)

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