[レビュー]Bane – Chaos,Darkness&Emptiness(セルビア/メロディックブラック・デス)
- 2018.10.15
- セルビア
- Bane, Black Metal, Death Metal, Review, Serbia, セルビア, デスメタル, ブラックメタル
セルビア北部、ヴォイヴォディナ州の州都でセルビア第2の都市ノヴィサド(Novi Sad,Vojvodina)出身、メロディックブラック・デスメタルの1stフルアルバム。スウェーデンのDissection直系のメロデス/ブラック。
関連情報
2006年に中心人物であるBranislav氏によって結成。初期の3年間は1人プロジェクトとして活動しており、07年にファーストデモをレコーディングするが、リリースには至らず。09年に3ピースバンド体制となり、ライブ活動を開始するとともに、翌10年のEPリリースに続けて本作がリリースされています。
本作の編成をみると、バンドのブレインでありフロントマンを務めるBranislav氏(ギター、ヴォーカル)と、自身のメロディック・ブラックプロジェクトKhargashや、同じくDissection系メロブラPaimoniaを立ち上げるKhargash氏(ヴォーカル、ベース)の2人が中心。
Khargash氏関連作品は↓もご参考に。
[レビュー]Khargash – Pathway Through Illumination(セルビア/シンフォニック・ブラックメタル)
本作の制作にあたっては、ゲスト/セッションメンバーが複数参加していて・・・現在はブラック/アンビエントプロジェクトShadowdreamで活躍してるNocturnal氏(キーボード)は、アルバムのイントロとアウトロを手掛けています。
それから見逃せないのがチェコ出身の恐るべき完璧超人でセルビアの(主にブラック)メタル界を影で支えまくる、Honza Kapák氏。本作ではドラムスを担当し鬼気迫るブラストビートを見せつける一方、作品のレコーディング全般も担当。Honza氏の関わるセルビアのバンドはもはや数えきれない程、と言っても過言ではなく、そのうち本ブログでも個人特集組めそうなくらいです。。。
最近ではブラックメタルThe Stoneの正式メンバーとして活動してるのが記憶に新しいですね。
インタビュー記事では、”DissectionはBaneの存在理由そのもの”であり、”もっとも大きく影響を受けていて、all-time-favoriteなのは疑いようのないこと”、と語る彼ら。ほかには、Naglfar , Setherial , Dark Funeralといったスウェーデン勢の名前を挙げつつ、KatatoniaやParadise Lostにも影響を受けてるんだそうですが、果たしてどんなサウンドになっているのかと言えば・・・
Dissection感満載のメロデス・ブラックに感涙
実際のサウンド・曲も、本人が公言してるとおりDissection愛にあふれるメロディックデス・・・というかDissectionそのまんま。
相当研究したんだろうなぁと、涙ぐましいまでの努力(してたのかは知らない)が聴こえてくる様です。知らない人にDissectionの3rd(になるはずだった)音源だぞって聴かせてもバレないといったら言い過ぎ?
もしDissentionの”Rainkaos”アルバムがああいう経緯の後のリリースでなかったら、あるいは1998年くらいに”Storm of the Light’s Bane”アルバムの延長上で3rdアルバムが作られていたら、こんなサウンドになってたんぢゃないかと思ってしまう様な、まさにDissectionそのものな雰囲気。
アルバムの幕開けを飾るのはゲスト参加のNocturnal氏の手による不穏かつ神秘的なイントロ。
そしてダダダダンと重厚な冒頭に続き始まる2曲目。低音グロウルとハイピッチ絶叫が交錯するヴォーカルはなんだか地獄からの雄叫びの様で、中盤から登場するメロディックなリフというかメロディが、あのころのDissectionの再来を強く連想させます。
3曲目は、単音イントロのメロディーからの疾走が、めちゃ「The Somberlain」(曲の方)。悲哀に満ちたメロディ感がまさにメロデス/ブラック的であり、モロDissectionのあの感触。一転して曲後半、ブレイクの後のブリザードリフ+ブラストビートはまるでDark Funeralみたいな爆走っぷり。そしてラストにはマーチ風の不穏なリズムとリフで仄暗い余韻を残してゆきます。
4曲目はアコースティックギターによる小品・・・ってアルバム構成まで合わせてきてるんでしょうか。おかげで期待を裏切らない安心感ですけど。
続く5曲目は、うねるトレモロリフの響きがデスメタル的マッチョさで迫ります。続けざまにブラストビートとなんだかほんのり病的で殺伐&荒涼としたリフの嵐が駆け抜けます。そして切り込んでくる魔術的なキーボードの音色にドッキリ。ここでもヴォーカルは低音系と絶叫系が交錯してますが・・・よく聴くとたぶん高音絶叫の方はKhargash氏の声っぽい。
曲中盤で見せる、夢見るようなメランコリックさというかドラマ性が甘美に響く6曲目。要所では邪悪な疾走パートも配置されていますが、ここではそれと対を成すスローミドルテンポでジワリと迫る儚さが秀逸ですね。
続く7曲目、8曲目もメロウなメロディー感が心に刺さるような一品。悲壮感を漂わせつつ、どこか深いとこで炎がくすぶるような屈強さも見え隠れして、非常にエモーショナルです。そしてそのメロディ感はやっぱりどこかそのクサみ?がDissectionのそれと同系統で、安心感たっぷりに陶酔できそう。
ラスト9曲目は、再びNocturnal氏による、キーボードのアウトロ。嵐の後の静寂とでもいうのか、これまで炸裂してた壮絶なブラック/デスの暴風のあとの虚無。
「あの頃」のその続き?
総じて、メロディーが非常にDissection的、スウェデイッシュなのが肝になってるように聴こえるメロディック・ブラック/デス。カコイイ!
その意味では、彼らは完全なるDissectionのフォロワーであって、もしあれこれ批評するんだったら、結局フォロワーの域を出ないとか、オリジナリティーの議論になりそうですけども・・・
たぶんバンドのブレインたるBranislav氏に言わせれば、”うるせえ。俺は大好きなんだよ文句あるかよ。”って事になるんだろうと思います。
あ、自分は決して”Rainkaos”アルバムアンチのつもりではないのでどうか殺さないで下さい。。。
参考に軽くDissectionも聴き返してみましたが、このアルバムで唯一再現できていなかったのは、”Storm of the Light’s Bane”アルバムの、あの冷たさあの寒さだけかも知れません。
音作りとも関わってるんでしょう、Baneの方は完全に現代の1級品の音なので、ブリザードといえどもう少し音の粒に温かみがあるというか・・
一方Dissectionは・・・今にして思えば、90年代の音なのでちょっと古さというか粗さというかが見え隠れしそうで、そのおかげで凍えそうなほど冷たい音がしてます。聴き返して、こんなに氷点下だったっけ??って。打ちつける吹雪が肌の上でどんどん凍ってくみたいな。。寒い。
あ、Dissectionの音にケチをつける意図は全くないのでどうか殺さないで下さい。。。
という事で、あの頃のDissectionの肌触り(?)を現代に蘇らせた見事な作品だと思います。
例えば、”The Somberlain”アルバムや、”Storm of the Light’s Bane”の頃の、「あのころ」の続きを期待してたのに残念ながらそうはならなかったのを嘆く皆様(自分も。)にとってはよくぞやってくれたと、拍手と感涙が起こりそうな気もする作品。
Amazon様↓Bane – Chaos, Darkness & Emptiness
本作以降のフルアルバムたち
~参考にした資料たち↓
http://pestwebzine.com/index/bane/0-104
https://www.metalcrypt.com/pages/interviews.php?intid=313
http://www.fobiazine.net/article/10783/promo-etef-2018:-bane–8222;10-questions8220;/
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