[レビュー]Osmi Putnik Dva – Krvavi pir(セルビア/スラッシュメタル)
セルビアの首都ベオグラード(Belgrade)出身のスラッシュメタルOsmi Putnik Dvaの2ndアルバム。2005年作品。セルビアの英会話講師が教えてくれたベオグラードのレコードショップでゲットしたもののひとつ。
値札をはがさずそのままにしてますが・・・金額は549セルビアディナールで、600円くらいになると思います。セルビア盤は安い。
周辺情報的なもの。8番目の乗客2???
バンド名のOsmi Putnik Dvaというのは、直訳英訳で8th passenger two、日本語に直訳すると↑の見出しの様に意味不明になるのですが、少し調べると謎が解けました。
まずOsmi Putnikというのは、映画「エイリアン」のユーゴスラヴィアでのタイトル。そして参照したネット情報によると、ユーゴスラヴィア(の現クロアチア)にOsmi Putnikというハードロック/メタルバンドがいて、それをパロったもの、という説もあるそうです。つまりバンド名は直訳よりは、「エイリアン2」とでも理解すると分かりやすそう。
これまで彼らは3作のアルバムをリリースしていて、冒頭で触れた通り、本作は彼らの2ndアルバムになります。”Krvavi pir”は、英訳でBloody Cerebration(とかfeast)、血まみれの饗宴とかそんな意味になりそうです。
ちなみに、バンド名に関してボスニア・ヘルツェゴビナやセルビアの英会話講師に確認したところ、バンドの意図は不明なままですが、映画「エイリアン」のユーゴスラヴィア版のタイトルについては正解でした。
12曲15分の血まみれ饗宴
Metal Archivesによると、Crossover/Thrash Metal/Hardcore Punkという風にカテゴライズされてる彼らの音楽ですが、果たしてどんなエイリアンっぷりあるいは血まみれっぷりを聴かせてくれるのでしょうか。
・・・と、もったいぶった導入分を書いてはみたものの、たぶんこの作品についてはあれこれくだらない能書きを垂れ流す事はしないほうが賢明かも。12曲15分というランニングタイムが全てを物語っているんじゃないかと思わせる、ある種怒涛の一品。
基本的にはMetal Archivesにもあるように、クロスオーバースラッシュという事になるのですが、ときおりブラストビートも交えて炸裂する様子は、グラインドコアの様にも聴こえます。音作りは思わずニヤついてしまいそうな、いかにもスラッシュメタルな80年代~90年代風のそれでありながら、個人的には時々Napalm Deathを思わせる瞬間もちらほら。
一方で、バルカンスラッシュならでは(?)な独特の能天気さもあって、そのあたりは同じくセルビアのNadimačともつながる感触ですね。バルカン地域の、特にスラッシュメタル方面には独特の(いい意味での)能天気さがあって、独特のバルカン風のノリ(??)を生み出してる様に感じられます。そのおかげで、クロスオーバースラッシュみたいな事をやらせたら右に出るものがいないというか・・・。
グラインドコアについてはそれほど詳しくはないのですが、ハードコアパンクの先鋭化みたいな文脈のカテゴリだった様な気がするので、その点ではクロスオーバースラッシュとグラインドコアというのは親和性があると言っていいのかも。
↓セルビアのNadimačはここでも紹介してます
[Review]Nadimač(Надимач) – Nejebanježivesile (セルビア/スラッシュメタル)
これぞバルカンスラッシュのノリ?
スラッシュメタルとカテゴライズされてはいるものの、どちらかというとパンク/ハードコア方面のそれに見えるカバーアートからして、実はそれほど内容には期待せずゲットしたのですが、結果的には当たりでした。思わぬ発見というか、新たな知見というか、そんな意味で。
全12曲15分という内容はまさに一瞬で、気が付けば再生が終わってる勢いですが、中身はスラッシュ/クロスオーバーだったり、時にはグラインドコアだったりと、密度は高いはず。加えてにじみ出るバルカンのノリ。
・・・なんだかまたとりとめのない文章になってる気がしますが、実際は能書き不要の一撃必殺爆裂グラインドスラッシュ、何も考えず聴いたまま暴れるのがよろしい、そんな1枚。
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