[レビュー]Infest – Everlasting Genocide (セルビア/デスメタル)
- 2021.04.05
- セルビア
- Death Metal, Infest, Review, Serbia, Thrash Metal, スラッシュメタル, セルビア, デスメタル
セルビア出身の爆走系デスメタルInfestの3rdフルアルバム。2011年作品。セルビアのGrom Recordsのほか、Zero Budget Productions、Terror Blast Records、Butchered Recordsとの共同リリースの品。
関連情報
バンドのバイオグラフィーやちょっとしたこぼれ話などは、2ndアルバム”Onward to Destroy”の記事で少し紹介していますので、良ければそちらも参考にして頂きつつ・・・
バンドの結成は2002年。ヴォーカルとギターを担当するフロントマンVandal氏を中心に結成されました。Vanldal氏はオールドスクール・デスのDecrepancyや、他にもゲストとして、スラッシュメタルのAlitorやSpace Eater等にも参加していて、セルビアメタル界を牽引する人物の1人と見て間違いないでしょう。
2009年の3rdアルバムである本作”Everlasting Genocide”までに、彼らは2本のデモとEP1作、それからフルアルバム2作がリリースされています。こうしてコンスタントに作品がリリースされているのは、セルビア産バンドとしては少々珍しい。そこからも彼らの並々ならぬ情熱が見え隠れしそうです。
前作”Onward to Destroy”から約2年の時を経てリリースされた本作ですが、バンドの編成は中心人物のVandal氏以外全て代わっていて、そのValdal氏(ギター・ヴォーカル)、Tyrant氏(ギター)、Khil氏(ベース)、Zombie氏(ドラムス)という4人。
実は(?)この編成、皆注目のキャリアを持つ強力な布陣でして・・・まずTyrrant氏はスラッシュメタルSoul In Cageのギタリスト。Khil氏はブラックメタルSvartgrenのベーシストで、同じくブラックのBethorやMay Resultとも関わりのある人物。それからZombie氏はブラックメタルのSimargalのドラマーで、BaneのEPや、May Resultのライブ盤などなど、多くの作品に参加してるという手練れです。
さらにゲスト参加のメンツを見て驚きは続きます。
セルビアのメロデス・ブラック代表のBaneからBranislav Panić氏がバックヴォーカルとギターソロで参加しており、ブラック・スラッシュのVehementerのギタリストで、スラッシュカルトのBombarderにも参加してたGvozden “Glavoseča” Racić氏が前作に引き続きバックヴォーカルで参加。同じくバックヴォーカルには元Keep of KalessinのThebon氏も参加です。
さらにそのBaneやブラックメタルThe Stone等々数多くのセルビア産作品を陰で(?)支えるチェコの仕事人Honza Kapák氏もギターでゲスト参加しています。
そしてレコーディングは、このHonza Kapák氏の所有するチェコのHellsound Studioで、氏のミックス&マスタリングで行われています。他の記事でも何度か触れていますが、このHonza氏はギタリストあるいはドラマーとして、スタジオオーナーとして、さらにはレコーディングエンジニアとして、セルビアのメタル界を支える完璧超人とでも呼ぶべき存在です。
こうしてみると、この”Everlasting Genocide”、その編成について全く話題に事欠かない作品ですね。なんだかため息がでそう。そんな豪華ゲスト陣の参加も相まって、凄まじい布陣での作品となる彼らInfestの3rdフル、その音像は果たして。
本編
全体的には、前作の紹介でも表現したとおり、Valdal氏の咆哮が「めっちゃVader」な、高速爆裂型のデスメタル。デスメタルというか、デスラッシュという表現の方がしっくりくる方もいるかも知れません。
作風としてはほぼ前作でのスタイルを踏襲してる、というか、やってることは全く同じ。高速2ビートでドカドカバシバシ爆走するドラムスに、せわしなく荒れ狂うギターリフが蹂躙の限りを尽くすそれ、です。1曲は2分台から3分台で一気に畳み掛ける構成なので、そのへんはよくある例えの、○○版”Reign In Blood”というイメージそのまんまとも言えそうです。
アルバム冒頭を飾るクリーントーンのギターがぽろぽろとなる不穏なイントロ1曲目のから、爆裂爆走デスラッシュが炸裂する2曲目。ここで既に、本作が期待を裏切らないInfestサウンドをぶちまけてくれるに違いないと、確信。
続けざまに容赦なく撃ち込まれる嵐の3曲目。こちらはコーラス(?)パートで渦巻くメロディが、ポーランドのBehemothを思わせる地獄の業火っぷり。曲後半ではゲストヴォーカルで元Keep of KalessinのThebon氏が参加してます。
4曲目でも基本的に常時全開の暴走ぶりなのは相変わらず。切り込んでくる狂気を孕んだギターソロはたぶんゲストのHonza氏によるものな気がします。クレジットに明記されてないのでほとんどカンですが、例えば氏の本家バンドAvengerで聴かれるフレーズに通じるものがある気がするのです。違ってたらご容赦を。
5曲目にしてようやく少しスローダウン。屈強な軍勢による包囲されてるかのような緊迫感が、いつでも殺ったるで!な趣です。この曲ではゲスト参加のBranislav Panić氏による、怨念渦巻くバックヴォーカルが効果的に効いてます。エコーの聴いた広がり感で、邪悪な雰囲気たっぷりで耳に襲い掛かります。
続く6曲目は作中最速をマークしそうな一品。2分強という尺で一気に駆け抜けます。もはや何弾いてるか拾うのも大変なせわしなさで襲い来るギターリフ、ビシバシ打ち付けるドラムスに、間髪入れず切りかかるギターソロの波状攻撃、ってところでしょうか。なんだか目を回しそう。
・・・と本編ラスト9曲目まで、彼らInfestによる爆撃と蹂躙は鳴り止みません。ここでもBaneのBranislav氏のバックヴォーカルが冴えてます。要所のフレーズだけなのですが、その言霊に封じ込められた魔力たるや恐るべし。Vandal氏のデスメタル的マッスル咆哮と対をなす、ブラックメタル的邪悪絶叫です。
それから10曲目はボーナストラックで、バルカンスラッシュのカルト&レジェンドBombarderのカヴァー。VAトリビュート盤”Hail To Bombarder”に収録されたものと同じ音源ぽいです。原曲に忠実な演奏と思われますが、原曲は相当カルト臭いチープさなので、Infestサウンドで聴くのはまた新鮮。
鳴りやまぬ破壊音
全体の作風としては、前作同様あるいはそれ以上の破壊力で迫りくる爆裂デスラッシュ。全編に渡ってずっと全弾発射状態に近いので、中盤以降ちょっと単調っぽい印象になりがちなのも前作同様。その例えで言えば、オーバーヒートあるいは弾薬切れを起こさないあたり凄まじいとしか言いようの無い有様ですが、逆に言えば塹壕に入ってしまえば対策済みであとはどうってことない、そんな具合。
なんだか意味不明な表現になってそうですが、豪華ゲスト陣の参戦もあって、より強力な一品になってることは間違いないでしょう。結論は前作と同じ、「うるせえ。お前ら早いの好きなんだろ?黙ってコレ聴いて一生首振ってろ」です。漢らしさ満載。
Infest – Everlasting Genocide [Explicit]
前作”Onward to Destroy”は↓で紹介しています。
関連作品は↓。カヴァー曲の原曲が収録されたBombarderの1st↓と、
ゲストBranislav Panić氏によるメロブラBane
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