[レビュー]Evolucija – Baklja slobode(セルビア/フィーメイル・ゴシックメタル)
セルビア出身のフィーメイル・ゴシックメタルEvolucijaの1stフルアルバム。2007年作品。セルビアのTake It or Leave It Recordsからのリリース。
関連情報
バンド公式HPによれば、バンドは2007年にスイスで結成された、という事になっています。仕掛け人は結成時から現在まで在籍する唯一のメンバー、セルビア出身のDragiša Marinjes氏。同年には本作”Baklja slobode”をリリース。
1stアルバムである本作”Baklja slobode”についてもう少し掘り下げてみると、ラインナップは仕掛け人のDragiša Marinjes氏(ベース)、Tanja Apostolović女氏(ヴォーカル)、Boban Marinjes(ギター)、Saša Damnjanović氏(ギター)、Dragiša Marinjes氏(ドラムス)という5人。
よく見ると同じMarinjes姓が3人いますが、Boban Marinjes氏とDragiša Marinjes氏は、Dragiša Marinjes氏の2人の息子さん。インタビュー記事でもそう述べられています。-
それから、本作のあとシンガーがTanja女氏からIlana Marinjes女氏に交代するのですが、Ilana女氏はDragiša氏の奥様になる人物。・・・と見てくと、結構ファミリーバンドな感じもしますね。
2009年にはドイツの”The Templars”なる映画のオフィシャル曲を制作。曲にはビデオトラックも制作されたようです。
それから2012年には活動の拠点をスイスからセルビアに移し、2016年には2ndアルバム“Igra Pocinje” (“the game begins”)をリリース。同年にはセルビアの首都ベオグラードでのBeer Festに出演しています。
2018年には3rdアルバム”Hunt”をリリース。これは実際は3rdというか、2ndアルバム英語詞でのリレコーディング盤という感じな気もするのですが、詳細はそれぞれの紹介記事に譲ることにしましょう。。。
というのが彼らEvolucijaの大まかな経歴です。本ブログ的ではセルビアのバンドという扱いにしてますが、バンドのスタート地点はスイスだったんですね。
さて、本作はそんなEvolucijaのキャリアのスタートを示す記念すべき1stアルバムのはずなのですが、実はかなりの問題作と言わざるを得ない内容を含んでいて・・・
パクり疑惑?
いつもは曲順に従って聴きながらあれこれとご紹介していくのですが、今回はまずその”問題”に注目してみたい。
まずは作品の3曲目に収録された”Tražim Spas”なる曲。ギターリフやアレンジ等の違いはあれど、歌メロがWithin Temptationの“Stand My Ground”とほぼ同じでしかもカヴァーとの表記は一切なし。
同じく4曲目”Oproštaj”は、歌メロがEvanescenceの”Bring Me To Life”。。。
つまり、「パクってるやん。」ということです。証拠がないので真偽のほどはアレですが。。。でもここまで露骨だと気付かれない訳ないよな、という程の一致ぶり。
そして、Within TemptationやEvanescenceの代表曲&名曲ともいえるこれら2曲なので、こちらEvolucija版?はもはや超絶劣化コピーみたいな有様。
本家には遠く及ばない演奏、アレンジ&音質に、特筆すべきはヴォーカル。歌声の質もあるかも知れませんが、ハンパないのっぺりした棒読み感に、聴く者を不安にさせる危うい音程の揺れがヒドイ。
本ブログでは基本良い面に注目してご紹介できるように努めてますが、このあたりは残念ながらもはや擁護不能です。初めて聴いた時は衝撃のあまり変な笑みがこぼれました。「これダメなやつやん」って。
・・・自分が気付いたのはこれら2曲なのですが、ひょっとすると他の曲も何か元ネタが存在するのかも知れません。詳しい方いらしたらぜひ教えてください皆様。。。
本編
ということで、かなりの問題作っぷりを放ってる本作ですが、上記の点を除けば、まあまあよくありそうなマイナー系フィーメイルゴシック・シンフォメタル、と言っても良さそうな気もします。
Nightwishの“Bless the Child”のイントロの引用から始まる1曲目。そこからシームレスに・・・とはいかないなんとも言えない違和感とギャップから、メタリックで案外重厚な質感のギターリフ&シンフォニックアレンジで曲は進行していきます。前述したようにのっぺりと平坦なヴォーカルに苦笑しつつ、その危うさと相まって(?)サビの”いぇるさりめ~”って歌唱が良くも悪くも不穏。。。
2曲目も歌い出しのメロディがどこかで聴いたような気がする怪しい一品。なのですが、サビでは一転、雲が晴れて青空が見えそうな高揚感を持つ旋律が登場。アップテンポなリズムと合わせて、なかなかハッとさせられる瞬間でもあります。中盤ではウェットなタメが甘美に響くギターソロも切り込んできたりと、やっぱり案外捨て置きならない意外性も封じ込められてる気がします。
そして前述したパクリ疑惑の3、4曲目で面食らって・・・
続く5曲目ではどことなくちょっと前のWithin Temptationを彷彿とさせる、愁いを帯びた風が吹き抜けるようなメロディが響きます。・・・というかこのへんも限りなくグレーな気が。どの曲かはちょっと思い出せないのですが、なんかそのWithin TemptationとEvenescenseのメロディーの組み合わせみたいな、どこかで聴いたことある感がプンプン。。ううむ。
サビの感動系の歌メロが印象的な7曲目はスロー・ミドルテンポでじっくり聴かせる感触。バンドサウンドの、チープさを感じさせない重厚さもあって、威風堂々とした雰囲気さえ漂いそう。
ひんやりとしたピアノ音色が切なげに響くイントロから、派手めのオーケストレーションがジャジャンと響く流れが、Nightwish方面のイメージを思わせるラスト8曲目。押し殺したような低めのトーンの歌メロが、これまた(前述の理由で)怪しいヴォーカルの響きと合わせて、本作で一番の不穏さをスリリングさを放ってます。これはいい意味でヴォーカルの持ち味が引き立ってるのでは??棒読みまっ平ら歌唱が、なんだか人を突き放したような冷徹さで迫るようです。本編ラストにして本作のハイライトと言えそう。
アングラ系超問題作?
なんだか書いてて、ヴォーカルの怪しさと、曲のパクリ疑惑ばかりに焦点がいってしまってる気がしますが・・・
作品としては総じて、Within TemptationやEvanescense、それからNightwithあたりのフィーメイル系をお手本にした、というかトレースした様な作品。その点では、曲自体は可もなく不可もなくといった印象でしょうか。
もっとも、問題の曲以外の歌メロもパクリなのか否かで、評価は全く正反対になりそうですが、仮にオリジナルとするなら、そのメロディーには案外高揚感も漂ってたり。
最初はしかめっ面で聴いてたのに、例えばヴォーカルの危うさも慣れてくればまぁ案外そんなもんかと、聴けてしまう様な。。。”慣れ”ってのは恐ろしい。
歌メロ含むヴォーカルまわりに、恐るべき危うさを疑惑を放つ問題作でもある本作、これはひょっとするとヒドイ(笑)系のネタとして聴くのが良いのかも知れません。
実は自作ではかなりキャッチー&メロディアスなフィーメイルメタルとして進化を遂げて再来することになる彼ら彼女らEvolucija。なので文字通りその進化の原点の作品として、バンドの出自を示すある日の姿ということで本作をとらえてみるのもあるいは良いのかも知れません。
参考にした記事
EVOLUCIJA: Not just a Swiss-Serbian Metal band
彼らの後の作品たちは↓でご紹介しています
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