[レビュー]Speedclaw – Beast in the Mist (クロアチア/スラッシュ・スピードメタル)
クロアチア出身の4人組スラッシュ・スピードメタル、その名もSpeedclawの6曲入りEP。2017年作品。アメリカのShadow Kingdom Recordsというところからのリリース。確か中古で転がってるのをゲットしたんだっけ。
関連情報
ほとんどいつものお約束で、ほとんどバンド関連情報が見当たらない彼らSpeedclawですが・・・
バンドの結成は2015年。翌2016年には1stEP”Iron Speed”を自主リリースしています。この頃から現在まで(おそらく)不変のラインナップは、Silvano Ćosić氏(ヴォーカル・ベース)、Luka Hrelja氏(ギター)、Luka Jurišić氏(ギター)、Dorian Perušić氏(ドラムス)の4人。
Dorian Perušić氏は同郷クロアチアのフォーク・ペイガンメタルVolohでベーシストとして在籍してますね。
1stデモの後、2017年にリリースされた2ndEPが本作、”Beast In The Mist”。本記事執筆時点での最新作という事になってます。
良い香りの80’sサウンド
さて、某所では(どこだったか忘れました><)NWOBHMの文脈で紹介されてたりもするこのSpeedclaw、もはやある種ヴィンテージ感すら漂いそうな80’sサウンドまっしぐらといった香り。自分そのへんはJudas PriestとかIron Maidenくらいの知識しかないのであんまりピンとこないのですが・・・個人的には、その頃のスピード・スラッシュメタル、例えばMetallicaの”Kill Em All”アルバムみたいなドライブ感とロック/メタルスピリットを感じます。
1曲目は、アコースティックギターによるイントロ。なんでも、アコギのイントロを持つ(スラッシュ)メタルには名盤しかない説があるとかないとか・・・で、それを思い出して期待に胸が膨らむという、見事な補正。
それから、胸のすくドライブ感を放つギターリフが、聴く者のメタル魂を熱く焦がす2曲目。中盤では、ダーン・ダーン、とブレイクを設けて、その後に待ち受ける展開のさらなる盛り上がりを予感させ・・・再びアツく大爆走。そして白眉は、このテのメタルのお約束、Luka Hrelja氏とLuka Jurišić氏のダブルLucaコンビによるツインリードによるギターソロバトル。今となっては古典的に過ぎる、という事になるのかも知れませんが、これこそが古き良き時代の様式美ってな具合で、思わず笑顔になりそう。
スリリングな裏打ち2ビートと、ちょっとIron Maiden風のツインリードのメロディがヒロイックでクールな3曲目。本作中では比較的ダイレクトなスラッシュメタルらしい構成の曲と言えそうな印象。
続く4曲目もフルスピードの疾走とギターリフの刻みがアツイ一品。要所で切り込んでくるギターソロも気合入ってます。それから曲後半では表情が一転、これまたIron Maidenを思わせるツインリードがドラマティックで美しい展開が登場。こういう構成がNWOBHM路線として語られるゆえん、ってところなのでしょうか。そして再びギターソロの応酬が炸裂、そこでの瞬間的なハモりのなんと甘美なこと。
5曲目は突撃型のスラッシュチューンと呼べそう。こちらはSilvano Ćosić氏によるヴォーカルのトーンも相まって、どことなくMetallicaを思わせる緊迫感。ここまで聴いてて、彼らの音楽は邪悪さ方面の色合いをほとんど感じない作風なのですが、この曲は作中でも少々不穏な雰囲気が漂ってます。
そしてラストの6曲目。跳ねるようなリズム&リフから、2ビート爆走、そしてキメのコーラスパートまで、表情豊かな構成を持つ一品で、中盤に切り込んでくるギターソロにやっぱりハッとさせられます。ホントいつも非常に良いタイミングで炸裂するうえに、そのフレーズには得も言われぬメタリックなアツさが。Luka Hrelja氏とLuka Jurišić氏のダブルLucaコンビが笑顔で弾きまくってる姿が目に浮かぶようです。。
それから、収録曲のうち3曲は6分強の長さを持ちますが、聴いてて爽快なリフとリズム、たっぷりと配置されたキメのギターソロ等々のおかげで、あんまり曲の長さが気になることはありませんでした。
懐古系メタル好盤
全体的には、カバーアートからの印象や、バンド名と作品のタイトルの語彙から連想される通りのスラッシュ・スピードメタルになるでしょう。今となってはこのスタイルって野暮ったさと懐古主義との紙一重になりそうな気もしますが、彼らはそのあたり非常に巧みなバランス感覚で仕上げてると言って良さそうです。
あんまり最近のリバイバル勢みたいな方向のバンドって詳しくありませんが、なんだか彼らこういうスタイルめっちゃ好きなんだろうなぁと思わずにいられない作品。全6曲30分のEPという事になりますが、その中には磨き上げられて現代に蘇った、古き良き香りのアツいヘヴィメタルが封じ込められています。
どこかの記事に書いてたかも知れませんが・・・個人的には最近は、例えばギターソロって重要視しなくなっていたのですが・・・これ聴いてて、あぁ昔はギターソロ、ソロバトル、ツインリード聴いてわくわくしてたなぁ、なんてちょっとノスタルジックな気分。
なんだかメタルのメタルたる所以というか、これぞメタルそのもの、みたいな質感の音楽で、今となっては多すぎる(?)サブジャンルに拡大したメタル音楽の原石を思い出させるような一品。いや原石とか源流はもうちょっとさかのぼるので、在りし日の香しさをを運ぶ逸品、というところでしょうか。
本ブログではところどころで、バルカンスラッシュ勢のクオリティの高さに驚かされてますが、本作もその例にもれず、スラッシュ巧者っぷりを見せつけてる好盤です。
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