[レビュー]Bombarder – Speed Kill(ボスニア・ヘルツェゴビナ/スラッシュ・スピードメタル)
ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ出身のスラッシュ・スピードメタル(カルト?)、Bombarder(英会話講師はボンバルデルと発音してました)の記念すべき1stフルアルバム。2008年のボーナストラック入り再発盤。オリジナルは1989年作品ということで、クレジットはユーゴスラヴィアの国名表記になっています。
偶然中古で激安でゲットしました(笑)
関連情報
ほとんど資料を見つけられなくて、もっぱらMetal Archives情報頼りになってしまいますが、現在はセルビアの首都ベオグラードに拠点を移しているようです。なんでも、凄惨を極めた90年代のユーゴスラヴィア紛争でギタリストとドラマーを亡くしているようで、当時の悲劇はこういうところにも見え隠れしています。。
自分自身は当時の紛争について語れるほどの知識は持ち合わせていないのですが・・・勉強不足です。
予備知識的なもので言えば、Nuclear War Nowから本作と2ndアルバム,Bez MilostiがLPで再発されているようです。・・・ということはやはりメタル界、とりわけバルカンスラッシュ界においては重要な位置を占めている、ということになるのでしょう、たぶん。
追記:彼らの経歴やバイオグラフィー的なものは↓記事がちょっと詳しいので、あわせてご参考にどうぞ
クセになるカルトの香り
さて、内容はというと、まるでAMラジオのようにRawな音質のもと繰り広げられる、アーリーエイジ(?)スラッシュ・スピードメタルです。
Metal Archivesに載ってるレビューには”Lemmy@Motorhead in Sarajevo”みたいなニュアンスで表現されてますが、確かに、Motorheadっぽい感じもするのかな。実は自分はそれほどMotorhead通ではないのですが・・・
・・・その分個人的には、パンクっぽい雰囲気も醸し出しつつ、Kill ‘Em All の頃のMetallicaが一番連想されます。リフなのか音質なのか、例えばSodomとかKreatorといった、ジャーマンスラッシュ勢の初期作品のような湿り気みたいなものはあまり感じず、もっとカラッとしたノリを感じます。
戦闘機の爆撃音のSEに続いてコード進行2つ?3つ?だけで疾走してく1曲目。なんだかこれ、もっと邪悪な音でやったらUSブラックメタルカルトVonみたいになりそうな雰囲気。プリミティブ・ブラックならぬ、プリミティブ・スラッシュとでも言うのか、香しい地下臭しまくりの音質も相まって、カルトな雰囲気がアルバム冒頭から満載。
能天気風なリフで弾んでいく中、中心人物であるNenad”Neso”Kovacevic氏のダミ声絶叫が炸裂する2曲目。タイトルは「Metalni Bog」で、英訳するとたぶんMetal God。これだけ唯一解読できました。ここはスラッシュというよりはもっとハードロック的なカラリとした雰囲気とノリ。
3曲目はスローにまったり入り、突如Venomの代表曲「Black Metal」を黒くしたかの様なリフで、再びスピードメタルが炸裂。どこか殺伐とした無機質感?も漂っていて、なかなかスリリング。そんなファストでスラッシーなパートと、ユルめのスローパートが行ったり来たりのギャップ萌え。曲ラストではキリキリとギターソロをかき鳴らしてフェードアウト。
続く4曲目は、ちょっとコミカルなイントロから、パンキッシュな感じも香るイケイケのギターリフで飛ばしていきます。ギターの音が薄めなので、ベース音がブンブンしてるのも良く聴こえて心地よい。
高音弦がカラカラ鳴ってる様なリフでシャカシャカ疾走する5曲目。弦をミュートしてカサカサと鳴ってる響きがここでのアクセントですね。Nenad”Neso”Kovacevic氏のヴォーカルもここでは声をひっくり返して絶叫しまくりのハイテンション。ストレートにクールな一品。
哀愁のアルペジオとメロディーでシリアスに迫る、1分程のインスト6曲目を挟んで、ザクザクと刻むリフがスラッシーな7曲目になだれ込みます。このへんがどことなく初期Metallicaみたいな雰囲気?でしょうか。
それから9曲目では、スピード感はやや控えめに、メタリックな質感を押し出しながら進みます。なんというか、在りし日のヘヴィメタル、かのようなノスタルジック感もほんのり香るのかな。
ラスト10曲目は高揚感とかドライブ感たっぷりのリフ&リズムでぐいぐい進む一品。曲タイトルSpeed Metalの名に恥じぬ名曲の1つになりそうな、文字通りのスピードメタルチューンで素敵。最後のうわぁぁぁってダミ声絶叫がマジなのかギャグなのか、ハッとさせられる余韻を残して終了。
バルカン・スラッシュレジェンド始まりの1枚
さて、そんな感じ(?)で吹き荒れるバルカン・スラッシュのカルトの嵐。いい意味でうさん臭い香り満載で鳴り響くレジェンドのデビュー盤。
自分はバルカン補正効きまくりなので、音の悪さは良い意味でのカルトな証で、リリース年を考えると彼らはバルカンスラッシュのパイオニアであり、前述したようにNuclear War Nowからの再発がそのすべてを物語ってると勝手に高評価してます。
ただきっと、無音部分でサーッってノイズが入るほどの音質(オリジナルはカセットなので当然?)や、演奏自体の粗さから、初聴きの印象の大半は、C級ポンコツスラッシュになるんだろうなと。時代背景を考えると、十分すぎるクオリティだと思われるんですが、音だけだとたぶんそうなる気がします。
おそらくバルカンスラッシュを理解するうえではマストな1枚。実際現地セルビア周辺では伝説的バンドとして今も活躍してます。
ポンコツスラッシュ(笑)な向きにはネタとして。
新ジャケ再発盤↓Bombarder – Speed Kill [Explicit]
続く2ndフルアルバムは↓記事で紹介しています。
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