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[レビュー]Mor – Храм крви и празнине (セルビア/ブラックメタル)

[レビュー]Mor – Храм крви и празнине (セルビア/ブラックメタル)

セルビアの首都ベオグラード出身のブラックメタル、Morの1stフルアルバム。2009年作品。

関連情報

レビュー記事を書くときはいつも、関連情報やインタビュー記事を調べているのですが、このバンドにはあまり情報源がなく、ほとんどMetal Archivesの情報が頼り。公式Facebookページは2015年あたりで更新が止まっていますね。。

本作”Храм крви и празнине“(Hram Krvi i Praznine)は彼らの1stフルアルバムで、本作リリースの前にはデモ1本とコンピレーション盤が1本リリースされています。そして本作リリース後の2014年には2ndアルバムをリリース。というのが現時点での彼らのディスコグラフィーです。

アルバムタイトルの、”Храм крви и празнине”(Hram Krvi i Praznine)は、英訳すると”Temple of Blood and Emptiness”ということで、「血と空虚の寺院」という感じでしょうか。それからバンド名のMorはセルビア語の古い言葉で死に相当する語だそうです。

Metal Archivesによると本作のレコーディングメンバーは、L氏(ベース、キーボード)と、Starac氏(ギター、ヴォーカル)の2人ということです。また、バンドラインナップとしてAsbn氏(ドラムス)の名前も書かれていますが、本作に関与しているのかは不明。

さらにCDのブックレットにはラインナップについて記載されていないので、それが本当のところなのかも不明、と謎だらけです。公式Facebookページには、過去のThe StoneやPaimoniaらとのライブ告知が載ってたりするので、スタジオ作品のみのプロジェクトだったというわけでもなさそうですが・・・。

Burzum meets Satanic Warmaster?

さて、いろいろ謎が多い、というかあんまり情報もない彼らMorですが、音楽についてはどうでしょうか。。。

一言でいえば、昔ながらの北欧勢のブラックメタルそのままのスタイル。バンドに関しては謎が多いですが、音楽的には特別カルトな感じというのはなく、例えば初期Burzumの雰囲気を思い起こさせたり、メロディアスなパートはフィンランドのSatanic Warmasterっぽい荒涼としたメロウさを湛えていたり、あるいは時おり“Under a Funeral Moon”アルバムの頃のDarkthroneみたいなちょっと病的なリフやメロディが聴こえてきたりする、そんな感じです。

 

ミドルテンポでじわじわと入るオープニングの1曲目。さっそく荒涼とした風景が広がって、ちょっとデプレッシヴの入った不協和音風のリフは、初期Burzumの香りです。基本はこの気だるいリフがメインで、ほわんとしたキーボードの音色と共に進行しますが、時々思い出したようにドカドカと疾走。意外とメロディアスなパートもある、東欧の闇も感じそうな曲。

ヴォーカルはちょっと後ろの方で、ギャーギャー言ってます。中音わめき系でしょうか。あ、あとは部分的にドラムのリズムがアヤしいです。

2曲目は冒頭のうっすらとしたキーボードの音色がどことなく、暗い空模様を連想させます。この曲もちょっと昔のBurzum風味、でしょうか。特にギターのコード4つ弾き(でいいのかな)のダーダーダーダーな単調感。中盤ではスタスタと疾走するパートも部分的にありますが、ここでは全体を通して、2転3転、暗いリフが続いていきます。

3曲目はスタスタと疾走しながら悲しげなメロディを撒き散らす様子が、かなりSatanic Warmaster。なのですが、後ろでほんのり鳴ってるキーボードの音色が、ウクライナ勢というかNokturnal Mortumなどで活躍したSaturious氏のあの音色そのままで、なんだかいろんな情景が錯綜します。良い意味で。淡いながらこれは強力。

そしてまんま“Under a Funeral Moon”アルバムの頃のDarkthrone、みたいな冒頭のリフが飛び出す5曲目。かと思いきや直後に鳴り響くメロウなメロディーがかなりSatanic Warmasterという、さらに驚きの展開。中盤以降はガリガリと疾走と、個人的にはこの曲が本作のハイライトです。

ラストの7曲目はダン、ダン、ダンとキメのパートを作り迫力を出しつつも、続くリフは意外とオカルティック。これもBurzum風の香りをちょっと漂わせつつ、スローパートで聴こえるキーボードの音色は、なんだか怨念が漂ってるよう・・・。このあたりのパートは個人的にはなんとなく、Burzumの”A Lost Forgotten Sad Spirit ”を思い起こさせます。

一方、曲の中盤以降では一気にアグレッシヴさとメロディアスさが増して、ブラックメタル的メランコリーが炸裂してます。作品のシメにふさわしい必殺級のメロディーで、きちんとエンディングにこういう演出(?)を持ってこれるあたりがなかなかのブラックメタル巧者ではないかと思わせられます。ちょっと”○○っぽさ”が露骨な気もしますが。

 

さんざんBurzumとかSartanic Warmasterみたいと書きましたが、音質についてはもっと現代風。派手さはなく、モノトーン風ですが結構クリアな部類だと思います。

北欧スタイルの安心盤

こうして聴くと、特に目新しさのない、伝統的なブラックメタルの手法に忠実な作風ということで、その点である意味安心感抜群の作品ではないかと思われます。逆にそれは面白みに欠ける部分があるという事と紙一重でもありますが。。。

ただそんな風にやや地味ながらも、全体を覆う荒涼とした雰囲気というのは、やはり確立されたブラックメタルの手法ならではの味わいで、存分にそれに浸ることが出来ます。

そしてところどころに邪悪なパートやメロウなパートが配置されていて、よく聴けば決して単調ではなく、ぐっと胸を捉える瞬間も多く、案外侮れない音世界を作り上げてるように感じます。

ちらと書いたように、ちょっと露骨な取り入れ方というのに賛否あるかも知れません。その分オリジナリティーはほとんど感じられないのですが、それでもなかなか隅に置けないのはやっぱり、その荒涼とした雰囲気と、メロウなメロディーが素敵だから。

なんというか、(基本に忠実な)ブラックメタルってやっぱりいいね。なんて存分に浸って安心させられる作品。



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