[お知らせ]本ブログ発!ネットラジオ番組 ”WWHYH Radio Show” がはじまりました![Undergrand Radio]

[レビュー]Zloslut – Pustoš i prevare izgubljenih duša (セルビア/ブラックメタル)

[レビュー]Zloslut – Pustoš i prevare izgubljenih duša (セルビア/ブラックメタル)

セルビア出身、Hunterなる人物による(当時)一人ブラックの2012年の5曲入りEP。当時そのHunter氏自身が運営していたSilent Scream RecordsからのリリースのプロCD-R盤。

関連情報

バンドのスタートは2010年。全ての楽器を手掛けるHunter氏(後にUtvara、Agnarionと改名)によって始動しました。

Metal Archivesの情報によると、バンド名のZloslutは英語ではおよそOminous(不吉な)という意味になるそうで、邪悪がやってくるのを感じる、みたいなニュアンスの言葉だそうです。

2011年にはデモとスプリットをリリースしていて、それに続くのが2012年の本作、”Pustoš i prevare izgubljenih duša”EPになります。英訳すると”Desolations and Deceptions of the Lost Souls”だそうですね。

本作のブックレットによると、レコーディングは同郷セルビアのブラックメタルKolacのメンバーZlorog氏のホームスタジオで、2011年冬に2日間で行われたとあります。このコラボレーションは後の作品でも続いている模様。

本作の後は、2013年と2015年、2019年にフルアルバムをリリースしているほか、いくつかのシングルやスプリットもリリースしていて、セルビア産ブラックの中では比較的コンスタントに作品をリリースしてるバンドと言えそう。

それから最新作である2019年の3rdアルバムでは、初めてフルラインナップのメンバー構成での作品となっているのが特徴。実は未聴なので、早めにゲットしてその進化にも触れてみたい。

北欧系プリミティブ

インタビュー記事中で、バンドの始動にあたって影響を与えたバンドとして、Taake, Burzum, Judas Iscariot, Peste Noire,Baptismが挙げられていますが、彼(ら?)Zloslutの本作のサウンドは、確かにこれらのバンドの香りもする、プリミティブ&オールドスクール系。

なかでも、2ndウェーブ期ノルウェー方面、“Under a Funeral Moon”アルバムあたりのDarkthroneみたいなイメージが近いかも。あそこまでノイジーではないですが。延々と繰り返される奇怪なリフがジワジワと染みてくる感触が最も色濃く出てるような印象です。

 

1曲目は、ちょっとたどたどしい感じもするクリーントーンのギターがぽろぽろと鳴り響く、物憂げで思わせぶりなイントロ。

すぐさまファストなドラムスと単音トレモロリフがキリキリと病的に響く2曲目へ。プリミティブ方面の音らしく、色味を押さえつつ殺伐とした感触で冷たく進行します。ベースがゲロゲロうねってるのがはっきり聴きとれるのはブラックメタルにしては珍しい?

ジワジワとスローなテンポで圧殺しにかかるような空気が漂う3曲目冒頭。延々と繰り返されるリフが聴く者の精神を蝕む感じがちょいデプレな香り?中盤からは平坦なリフで疾走したりもしますが、基本この曲を覆うのは荘厳風に見せかけた邪悪というか、ビョーキっぽさでしょう。Hunter氏のヴォーカルは中音のうめき系で、それほど耳を引く部類ではないものの、しっかりと湿り気を帯びた妖しさを表現して見せてます。

プリミティブ、というかRawブラック方面らしい、ミステリアスなトレモロのメロディが乱舞する4曲目。本作中では最も北欧流ブリザード吹き荒れる感が際立ってます。一方で単音のメロディはなんだか妙に孤独感を感じさせるのは一体・・・。一人ブラックの悲哀、でも滲み出てるんでしょうか。。。

 

ラスト5曲目は、1stデモ収録曲のリレコーディングだそう。曲冒頭のアルペジオ風の導入部は、「え?何、ギターチューニングでもしてんの?」ってな響きで、メロウさとポンコツさの紙一重な危うさな気もしますが・・・その後曲本編になだれ込んだ後の空気はまさに古き良きノルウェーの香り。BurzumのAske EPのあのへんのモノトーンの荒涼感です。

それから、放課後のチャイムみたいな(?)メロディがほろりとなった後は、一気にメランコリックなブラックメタルの嵐。バシバシと打ち鳴らされるドラムスに、ザラザラと掻きむしるギターの、うっすらとした音階とハーモニーが甘美です。そしてエンディングでは再び曲冒頭の様にギターのチューニングを合わせて終了(汗)

凍てついたブラックメタルを激しくかき鳴らした後はチューニングもズレるかもだし、多少はね。。。

伝統に忠実な初期作品

・・・と冗談はほどほどにして、本作は全般的に古き良き北欧勢の香りと伝統を踏襲した、ど真ん中のプリミティブ・ブラックと言って良さそうです。

多少粗削りというか、ミス?らしきものもある気もするのですが、そのへんはアンダーグラウンド作品という事で、ご愛嬌?

あとは例えばセルビア産らしい特徴だったり目新しさってのは皆無に等しく、北欧勢の忠実な崇拝者でありフォロワーってのは良くも悪くもその通り、という事になるでしょう。

安心・安定のブラックメタル作品。新鮮味とかは案外二の次で、この暗黒面に安心して身を委ねていられる恍惚とした甘美さこそが安定度の証。バンドのキャリアの出発点を知る良き1枚です。

Amazon様↓Zloslut – Pustos I Prevare Izgubljenih Dusa

↓参考にしたインタビュー記事

Interview: Zloslut

Translate »