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[レビュー]The Loudest Silence – Aesthetic Illusion (ボスニア・ヘルツェゴビナ/フィーメイルゴシック・シンフォ)

[レビュー]The Loudest Silence – Aesthetic Illusion (ボスニア・ヘルツェゴビナ/フィーメイルゴシック・シンフォ)

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ出身のWithin Temptation型フィーメイルシンフォ・ゴシックメタル、The Loudest Silenceの1stフルアルバム。2018年作品。長いこと欲しかった作品ですが、ようやく入手できました。

自主リリースらしいですが、バンド公式HPによると日本ではS.A.MUSIC様が配給元になってるみたいですね。ヨーロッパではNuclear BlastとNapalmだそうで、なかなかメジャーな扱いなのでは。

関連情報的なもの あのWackenに出た。

バンド公式HPによると、バンドの結成は2010年。シンガーのTaida Nazraić女氏と、キーボードのDenijal Ćatović氏によってスタートしました。以降、Džemal Bijedić氏(ベース)、Mirza Ćorić氏(ギター)、Damir Sinanović Bumbar氏(ドラムス)を加えています。

驚いたことに、彼らは過去にドイツのWackenでライブを行っているんですね。調べてみると、WackenにはWacken Metal Battle Competitonというのがあって、そのボスニア大会に勝利し、続けてスロヴェニアやセルビアのバンドが参加する旧ユーゴスラヴィアエリア大会にも勝利、見事Wacken本番で演奏するためのチャンスを手にした、という経緯らしいです。

残念ながらWackenでの決勝では入賞を果たすことができなかったものの、おそらくボスニアのメタルとしてはかなり大きな成功といえるのではないかと思います。

そして2018年に、ついに本作”Aesthetic Illusion”がリリースされました。収録曲のひとつでは、あの(?)EpicaのMark Jansen氏がゲストヴォーカルで参加していて、ちょっと驚き。他にもフルートやヴァイオリンなどのパートでゲストミュージシャンが作品に参加しています。

 

・・・本作に関しては、非常に個人的な思い入れというか、淡い思い出があって、本題から多少離れてしまうことは承知のうえで、触れないわけにはいきません。彼らThe Loudest Silenceの音楽と自分とをより強くつなぐ、ボスニアのWood Nymphと、出会っていたのです。。。

(次のパートはちょっとパーソナルな話題なので、個人的な事が不要な場合は、読み飛ばしてもらうと良いかも知れません。)

ボスニアで見たWood Nymphの夢

The Loudest Silenceの音楽を最初に発見したのは、オンライン英会話がきっかけでセルビアやボスニア産のメタルを探し始めて少し経った頃。

特にシングル曲でもある、”Wood Nymph”を初めて聴いた時のインパクトは、むかしむかし、Within Temptationの神盤”Mother Earth”アルバムを聴いた時の事を強く思い起こさせるものでした。特にタイトル曲の“Mother Earth”や、“Ice Queen”は、たまに聴くと、いまだにちょっと泣きそうになる程。

“Wood Nymph”の方はというと、まさにその頃のWithin Temptationとそのまま重なる神懸かり的な1曲。比較すると、ダークなトーンは控えめで、まるで絵本のようなフェアリーテール感ですが、その色彩を完璧に描ききる説得力やキャッチーさが凄い。

春風が吹くようなイントロのフルートのメロディに、美しい森の木漏れ日のようなキーボードの音色、ちょっと陰りを見せながらもサビでは暗い雲を一気に振り払うヴォーカル。曲聴きながらコレ書いてても、なんかうるうるしてきます><

 

そして、あるボスニアの”メタル”な英会話講師と出会ったのも確かこの頃。ブラックメタル方面の趣味が自分と完全に重なる方で、毎回いろんなメタルトークに花が咲きます。

The Loudest Silenceの事を話してた時は、講師もWackenの事知ってて「Wacken出たよねー。ボスニアのバンドとしては凄い成功例だよねー」。

「自分は“Wood Nymph”がチョーお気に入りっす」とYouTubeリンクを送りつつ紹介すると、その講師、なにやら概要欄見つつ、「あれ?このフルートの人知ってるよ?直接じゃないけど、友達の友達だね。でも参加してるのは知らなかったわ」って。ボスニアは決して大きくない国ですが、なんという偶然。

他にもどんなメタルネタでもさらりと反応が返ってくるあたり、かなりの通っぷりを感じさせる方でした。

 

・・・がある日、ほとんど何の前触れもなく、その講師は姿を消してしまいます。残されたのは1通のメッセージだけで、そこにはもう講師がいないことが記されていました。

このあたりの話は、↓の記事

[オンライン英会話]お気に入り講師が辞めて打ちのめされた話 Part2[突然の悲劇]

に詳しいのですが、オンライン上の、画面越しのリアリティが果たして現実だったのか、あるいはボスニアにいたWood Nymphの夢でも見てたのか、もはや定かではない感じもします。

そしてこの曲“Wood Nymph”を聴くたび、その淡い思い出が想起されて胸がちょっと痛むのです。。。嗚呼。

涙を拭いて・・・(笑)、アルバム本編

かなり脱線してしまいましたが、本作は紹介した見事な1曲”Wood Nymph”に代表されるような、初期Within Temptationほぼそのまま?のスタイルを受け継ぐフィーメイルシンフォ・ゴシックという事になるでしょう。

何よりWithin Temptationっぽく聴こえるのが、ヴォーカルのTaida女氏の歌声。意識してるのかどうかは分かりませんが、Sharon den Adel女氏にかなり似てるのです。特に高音ファルセットの透明感抜群な声色と、ビブラートの揺れ方が本当にそっくり。

そして曲の多くは、ゆったりしたテンポを持ってるので、それがまた、ポップ度を増してくる前の、特に1st~2ndアルバムあたりのWithin Temptationと重なります。

 

ということで、あれこれ語ってしまった4曲目“Wood Nymph”以外で印象的な曲についても、みてみましょう。

7分とちょっと長めの再生時間の3曲目。それほど大きな盛り上がりのない曲の様にも聴こえますが、そのぶん、淡いトーンで淡々と進行しつつ、その上にTaida女氏の悲しげなヴォーカルメロディが重なってる様子が、フィーメイルゴシックらしい甘美さです。うっとりするようなTaida女氏のファルセットと、その揺れ具合が素敵。

5曲目はこれまた歌メロといいアレンジといい、まさにWithin Temptation。序盤のハミングなんかがモロ、です。中盤ではゲストの手によるヴァイオリンソロが聴けます。どことなく薄暗いトーンは、その中で少しでも明るさを捜し求めようと苦闘してる様。

続く6曲目はスローなテンポとイントロのピアノ音色が切ないバラード。中盤からは楽器隊もフルに参加して、「ダダン・ダン・ダダン」!○ーミネーターかは分かりませんが、物悲しさ漂う一方で、折れてしまわない力強さも感じます。

そして9曲目は本作の中でもキャッチーさが印象に残る一品。ヴォーカルの繊細なファルセットは変わらず浮遊感と物悲しさ満載ですが、ここではバックヴォーカルに少しグロウルが入っていて、コントラストを引き立てています。

10曲目は12分近い大作で、EpicaのMark Jansen氏をはじめ、”Wood Nymph”で美しいフルートの音色を披露したAjla Subašić女氏や、他にもヴァイオリン、ヴィオラ奏者といったゲスト陣が参加しています。

前半スローに入り、ちょっとだけドゥーミー感を匂わせたと思いきや、一転してパワーメタル風に疾走。この本作唯一と思われる疾走パートは、初期NightwishやSonata Arcticaみたいなファンタジックなフィンランド風で綺麗。

そしてさらに場面は展開し、噛み付くような(?)Mark Jansen氏のデスヴォイスの登場です。たぶんゲストで彼が参加してるって事が最大のポイントで・・・Epicaの作品聴いててもそうですが、実は彼のデスヴォイスには個人的にはあまり深みを感じません。

その後はギターソロ、ヴァイオリンソロと続き甘美な音世界は続いていきます。ただ、意欲作は良いのですが、何がしたいのか分からない感というか、注意散漫な感じというか・・・。今のところ彼らは、壮大さを狙うよりコンパクトに1つのテーマでまとまった曲のほうがハマッてる気がします。

 

全体の雰囲気で比較すると、初期Within Temptationはもっと神秘的な響きがあって、一方こちらはもうちょっとオーガニックというか、自然の持つ暖かさみたいなものが香る気がする、というのが両者の微妙な違いかも知れません。

ボスニアが育んだ才能

総じて、目新しさは特に感じないのですが、一方で、必殺の4曲目”Wood Nymph”で表現して見せたように、素晴しい才能を感じる彼ら。願わくばこれから経験を積んでどんどん化けて頂きたい。

正直なところ、個人的にはその神曲”Wood Nymph”があまりにも印象的すぎて、そのせいかアルバム内でもその1曲だけがクオリティ的にやや浮いてるような気がします。つまり、その冴えっぷりのあまり、他の曲がやや弱いというか、線が細く聴こえてしまうのです。。。

逆に言えば物足りない点はそのくらい?欲を言えばサウンドプロダクションがもっとリッチだったら、と思わなくもないですが、きっとそれは贅沢でしょう。

そのあたりへの期待も込めて、次作にも大きな期待をしたい作品。あとはいつかセルビアのExitフェスあたりに出てもらって、頑張ってそれを見にいく事ができたら、最高ですね。

↑この頃のWithin Temptationと非常に重なります。

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