[Review]Sarcasm – Revolt. (スロヴェニア/スラッシュ・スピードメタル)

[Review]Sarcasm – Revolt. (スロヴェニア/スラッシュ・スピードメタル)

 

スロヴェニア北部の都市クラーニ(Kranj)出身のスラッシュメタルSarcasmの4thフルアルバム。2006年作品。Discogsでセルビアのセラーから大量に購入したバルカンモノの1つです。

リリースは同じくスロヴェニアのOn Parole Productionsレーベルからで、本ブログでも取り上げたフィーメイルメタルInfidiaの作品もここから出てますね。

関連情報

Metal Archivesによると彼らSarcasmは、スロヴェニアで最初にメインストリームに入っていったバンドの1つなのだそう。

それから、現地のメタルヘッドの間ではどうやら89年の1stアルバムがスロヴェニア、ひいては旧ユーゴスラヴィアの(スラッシュ)メタル界の超名盤になってるという、生ける伝説的バンドっぽいのですが・・・そちらは未聴で本作が初聴きになります。

Metal Archivesで主なリリース作品を見てみると、1989年、2002年、2003年にそれぞれ1st~3rdアルバムがリリースされていて、本作”Revolt.”はそれらに続く4作目。現時点ではそれに続いて、2011年に5thアルバム、2013年に6thアルバムがリリースされています。

メンバー編成は、Aleš Blaznik氏(ギター)、Matjaž Kacin氏(ドラムス)、Easy Mucy氏(ヴォーカル)、Jure Buh氏(ベース)、Tomi Grünfeld氏(ギター)の5人。バンド初期から在籍してるのはたぶん、Aleš氏とMatjaž氏の2人と思われます。

至高の“Terrorist”

さて、いよいよ本編を聴いてみるのですが、彼らの初期作品が名盤と誉れ高い(?)だけに、果たして。

「聴かせてもらおうか、スロヴェニアのスラッシュメタルの出来とやらを」・・・で合ってましたっけ??

 

ちょっとスローなテンポの入りでジワジワと聴く者の期待を膨らませる1曲目。ザクザクしたリフがスラッシーに響きつつも、なかなか炸裂する瞬間は訪れず、ミドルテンポでドコドコと進行。ヴォーカルの歌声はSlayerのTom氏のそれをクリーンにちょっと細くした感じのシャウト系、でしょうか。後半ちょっとだけ盛り上がりを見せるも、結局なんだかやや地味で物足りないまま曲は終了。

2曲目は一転してスタスタ裏打ちビートで速度を上げます。ようやくスラッシュメタル、というかスピードメタルらしくなってきました。リフは邪悪だったり攻撃的だったり、というよりはヘヴィメタルらしい雰囲気を保ってファストに繰り出されるので、その点もきっとスピードメタル的と言えそうです。いかにもヘヴィメタル、なギターソロの乱舞に頬が緩みそう。

 

そして本作”Revolt.”アルバムのハイライトだと断言したい3曲目が登場。その名も”Terrorist”。

実際の曲は大したことはなく、不協和音風のギターリフに乗せてヴォーカルがスロヴェニア語で何か歌ってるのから一転、ロシアンなメロディーで”You’re a fxxkin’ terrorist”と合唱。たったそれだけですが、そのしょうもないアホっぽさが最高。そしてたぶんそれがバルカン産ならではのノリなのです。

そのロシア風のメロディーの元ネタは、たぶん有名な「カチューシャ」じゃないかと推測します。ロシアに何か恨みでもあるのかは謎ですが、見事に作品で最も輝くキャッチーさを放ってます。ゆーあーふぁっきんてぇぇーろぉーりぃーすと。

 

この3曲目がサイコーすぎるので以降はもうどうでもよくなってしまうのですが(苦笑)、個人的な好みでもある、スラッシーに飛ばす曲たちを取り上げてみると・・・6曲目が良い意味でちょっと人を食ったような雰囲気の疾走曲だったり、7曲目では作品中では重厚な部類のギターリフがヘヴィに刻まれ、ここではヴォーカルもちょっとヒステリックに叫んでたりします。

続く8曲目はセルビアのクロスオーバースラッシュNadimačからハードコアっぽさを抜いた様な雰囲気で、いいのやら悪いやらですが、スタスタ疾走&なかなか煽ってくるようなヴォーカルは悪くないと思います。

そしてラストの11曲目も何故か地味に聴こえてしまうのですが、なかなかアグレッシヴなスラッシュチューン。

 

全体の印象は、単にスラッシュメタルというよりは、スラッシュ/スピードメタルと呼びたくなるような風合いの作風。音質はまずまずクリアで、ポンコツ感はほぼないのですが、スラッシュメタルらしいスリリングさをあまり感じない分、ちょっとダルく聴こえがち。それほど気になりませんでしたが、ちょっとプロダクション的にこじんまりとしすぎてるのかも知れません。

ところどころ良い感じの部分も確実にあるのですが、一方でどうも地味さがぬぐいきれず、アツくなりきれないのが残念。

ジャケ絵的にはなんとなくデスラッシュ級の音を思い起こさせそうなだけに、ジャケ買いすると肩透かしを食らうかも?

 

セルビアのクロスオーバースラッシュのNadimačは↓記事で紹介しています

[Review]Nadimač(Надимач) – Po kratkom postupku (セルビア/スラッシュメタル)

バルカンの紙一重なノリに困惑

本作に関しては、非常になんとも言えない印象があって・・・たぶんそれはどちらかと言えばネガティヴな。なんというか、Death Magneticアルバムか、St.Angerアルバムかそのあたり以降のMetallicaがふやけたみたいなイメージで、もう苦笑するしかない感じ。

そして個人的にはその頃以降のMetallicaがダメなこともあって、正直言って特に感動するような瞬間にもほとんど出会えず、でした。

ただ、本作に漂う独特のちょっとユルいノリや、真面目にやっててこうなのかネタorギャグでやってるのか判別不能な感じというのは、彼らSarcasmに限らずバルカン産スラッシュの多くに共通してて、その点は極端に言えば本ブログで大絶賛&神格化(?)してるボスニアのBombarderなどでも同じ。

するとBombarderがクールで、本作”Revolt.”が微妙というのが矛盾して困ってしまいますが・・・どうしても本作のふやけてていまいちキレのないのが惜しまれると言うか残念というか。

もし某B!メタル雑誌にレビューでもされようものなら、30点台くらいをつけられて容赦なく一刀両断にされそうな気がします(苦笑)

とはいえ前述のように、たぶんきっとバルカン産らしいノリはきっちり香ってるはずなので、もうちょっと長い時間彼らの音楽と向き合ってみて、あるいはバルカン産モノをもっと理解してみると、また印象も変わるかも知れません。どうなるか見てみよう、です。

そして何より、3曲目の”Terrorist”のアホなノリが最高なので良いのです。この曲のためだけだったとしても、筆者としては十分。ごちそうさまでした。

 

本ブログイチオシのボスニアのスラッシュ・レジェンドBombarderは↓記事で紹介しています。ご参考に

[Review]Bombarder – Okot Iz Pakla(ボスニア・ヘルツェゴビナ/スラッシュ・スピードメタル)

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