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[レビュー]Dalkhu – Descend… into Nothingness(スロヴェニア/ブラックメタル)

[レビュー]Dalkhu – Descend… into Nothingness(スロヴェニア/ブラックメタル)

スロヴェニア出身のブラックメタルDalkhuの2ndフルアルバム。2015年作品。ロシアのSatanath Recordsと北マケドニアのDarzamadicus Recordsとの共同リリースらしい。500枚限定という事になってますね。

関連情報

バンドの始動は2003年。それまで自身のエクストリームメタルに対するヴィジョンを示すバンドを模索していた(らしい)J.G.氏によってスタートしたそうです。当初は彼自身のためのプロジェクトといった活動だったらしいのですが、Berstuk氏なるシンガーの加入によりバンドはより大きなものになっていったのだとか。

その後、フルラインナップのバンドメンバーが揃い、2006年にはデモ”Ars Goetia”を制作。そして2010年には1stフルアルバム”Imperator”をリリースしました。

この頃は地元スロヴェニアを中心にライブ活動も結構行っていたようですが・・・2014年には本作”Descend… into Nothingness”の制作を開始。この頃のメンバーは中心人物のJ.G.氏(ギター・ベース)と、P.Ž.氏(ヴォーカル)の2名になっており、セッションドラマーにSpawn of the void氏を迎えていますね。

その後は2018年に3rdフルアルバムとなる”Lamentation and Ardent Fire”をリリース。本記事執筆時点での最新作になっています。

暴虐とドラマとメロディのコントラスト

さて、彼らDalkhuの2ndフルアルバムとなる本作ですが、暴虐的でドラマティックでありながら、メロディックでエモーショナルな瞬間をも織り交ぜて情景が移り変わるようなデス/ブラックといった印象の作風。

デスメタル寄りの、結構ウェットな湿り気の重めの音作りは、楽曲の異形感というか異世界感を醸し出すのに一役買ってます。あわせて、P.Ž.氏によるウェットでドスの効いた低音グロウルがそうした暗黒世界を良く表現してて、ある種の色気さえ感じそうです。

そんなデス/ブラックの邪悪が蔓延る音像の中にあって、時々メロディアスだったりドラマティックだったりする瞬間を配置してメロブラみたいなある種の泣きを誘うあたりが印象的。彼らに影響を与えたバンドの1つにDissectionをあげるように、メロディの質感とか歌心は確かにスウェディッシュかもしれません。物悲しく、でもどこか秘めたる熱さを感じさせるあの感じ、です。

 

ドクンという心臓の鼓動にシンクロして、ドラムスとギターがドドンと鳴り響き、邪悪が目を覚ますような冒頭1曲目。ドロドロと歪み濁ったギターの轟音と打ち鳴らされるドラムスのリズムが荒れ狂い、かと思いきや夢見るようなトレモロによるメロディーが甘美に響く瞬間が入り混じるという振り幅にドキっとしそう。ですがこれこそが彼らの真骨頂とでも言えそうな手腕です。

本作中でも最も印象的な瞬間となるであろう3曲目冒頭は、泣きのリフとメロディーが幽玄に響く神々しさ。ここでは完全に一級品のメロブラを聴かせます。中盤では思い出したかのようにブラスト爆走を見せたりして、甘美さに酔ってるリスナーを逆に拍子抜けさせたりしますが・・・この物悲しい泣きのドラマはお見事。間違いなく本作のハイライトであり創造性が見せる奇跡の瞬間に他なりません。

鐘の音が鳴ってるようなアルペジオにハッとする4曲目。跳ねるような裏打ちのリズムのどこか軽快で、ドロドロとした異形の世界観の中にあって、どこか一瞬明るい光が差すような瞬間でもあります。曲後半ではそんなメロディ感と勇壮なブラストビートが融合してなんだかダークなヒロイックさ。

5曲目は途中切り込んでくるトレモロのリフが不思議な音階を奏でていて、シリアスなのにどこか人を喰ったような雰囲気でもあります。終盤の悲壮感漂う単音リフの応酬に、エモーショナルなメロディ、そしてブラストビートというコンビネーションはいかにもブラック/デスの暗黒の叙情美といったところでしょうか。

ラスト7曲目は10にも及ぶ壮大なデス/ブラック絵巻で、混沌としたギターリフと緩急行ったり来たりのリズム、時に切り込んでくるメロディで、彼らDalkhuの音楽性とか作風をここに集約した様な一品。

 

一方で、いい要素がたくさん散りばめられているのに聴いてて引っかかりに乏しいのがちょっと残念な器用貧乏感?ブラックメタルらしい暗黒感とか、デスメタルみたいなドロみ、そしてアツかったり泣けたりするメロディ感、どれも非常にいい感じなのに決定的な瞬間に乏しいのです。

なんだか流して聴いてると結構いい感じのメロブラみたいに聴こえて好印象なんですが、こうしてレビューしようとじっくり聴くと、イメージ程は聴いてて感動も薄いという不思議。。。

ブラック・デスの美しき色彩

とはいえ、決して質が低いとかそういう事ではきっとなくて、恐らく楽曲の構成要素がほんの少し散漫なのか仕上げ不足なのか、そういう事だと想像します。

彼らDalkhu流のダークさとメロディのコントラストなんかは結構秀逸なので、あんまり細かい事を深く考えないで、全体の色彩だったりトーンだったりタッチだったりを味わうのがよさそうなアルバムになってる気もしますね。

その点では、ブラックメタルとデスメタルの非常に良い混ざり具合で、そうした彼ら特有のバランス感覚に魅力を感じる方もいそうな気も。個人的には上記の3曲目が素晴らしすぎたので、このためだけに買って聴いても良いくらいの作品です。

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