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[レビュー]Condemnatio Cristi – At Peace With War (スロヴェニア/シンフォニック・ブラック)

[レビュー]Condemnatio Cristi – At Peace With War (スロヴェニア/シンフォニック・ブラック)

 

スロヴェニア出身のシンフォブラックCondemnatio Cristiの4thフルアルバム。2019年作品。ゲットしたのはMass Catharsis ProductionsからリリースのCD盤で、Facebookの告知によると100枚限定らしい。

関連情報

Bandcampの記載によれば、自らをCinematic Black Metalと称する彼らCondemnatio Cristi。バンドの結成は2009年で、中心人物と思しきCenturio Dictatus(Denis Mauko)氏によって始動したそうです。

あんまり情報がないのですが、これまでに、フルアルバム5作とEPを1作リリースしていて、バルカンのバンドとしては結構コンスタントに活動を続けているバンドの1つといってよさそうです。

各アルバムごとの編成は結構流動的なのですが、4thアルバムとなる本作”At Peace With War”ではとりわけ、仕掛人であるCenturio Dictatus氏の独りブラック状態。すべての楽器パートを自身が担当し、ゲストに女性VoのSara Jeremič女史を迎えています。

どうやらこの4thアルバム以降は、一人ブラック状態になっているようで、続く2020年作の5thアルバムでも、すべての楽器をCenturio Dictatus氏が手掛けています。

美麗ブラックメタル・オーケストラ

さて、ここで初聴きとなるCondemnatio Cristi。果たしてその音像はというと・・・

全体の印象は、フルオーケストラばりに壮麗なオーケストレーション&透明感満載のキーボードサウンドが美しくドラマティックなシンフォニック・ブラック。

シンフォブラックといっても、邪悪で狂暴で劇的といったアグレッシブ路線ではなく、ゆったりとしたアトモスフェリック系の幽玄さや壮大なランドスケープ感(?)に重きを置いた作風で、キラキラと美麗で甘美な陶酔感がとりわけ印象的。

また、Bandcampでは自身をCinematic Black Metalと公言してるとおり、オーケストレーションは確かに映画のサントラを思わせる質感を放ってますね。一方でメタル要素であるギターをはじめとする楽器隊はどちらかというと裏方で音楽の骨格を担ってる印象。ブラックメタル的鋼鉄感を下敷きに、前述の壮麗なオーケストレーションと鍵盤の音色が彩を加えてる、といった感じでしょうか。

 

上述の、まるでサントラみたいなオーケストレーションは、イントロを飾る1曲目から壮大に鳴り響き、音世界の幕開けを告げます。

ダン、ダダダン!な感じで、キャッチーかつ屈強に迫る2曲目。重厚でありながら高貴な響きが美しく格好良くて素敵。Centurio Dictatus(Denis Mauko)氏のヴォーカルはウェットなグロウルから、噛みつかんばかりの叫びまで、結構表現も多彩で、暗雲の到来を告げるかの様。その一方で、キラキラ系のピアノの音色&ゲストSara Jeremič女史のクリーンヴォーカルが、恐るべきコントラストで切り込んできて驚かされます。その瞬間の、良い意味で今何を聴いたのか耳を疑う感じが素晴らしい

3曲目はなんだか昔のDimmu Borgir、とりわけ”Stormblast”アルバムの頃の彼らを思い起こさせる揺られ感(?)が印象的。特にドラムスのリズムがそう思わせるんでしょうか。中盤の比較的穏やかなリフとリズム、うっすらとヴェールの様な装飾を加えるキーボードの質感が耽美で甘美。

4曲目は1分強のインストで、スタッカートの効いた跳ねるようなオーケストラのアンサンブルが、なんだかちょっとパイレーツ風味?も出しつつ、同時にひんやり澄んだ空気感。胸躍るような躍動感が次曲を導きます・・・

そして続く5曲目は本作中屈指のアグレッシブさを放つ、ドラマティックなブラックメタルの嵐。むせび泣くトレモロのメロディが冷たく胸をえぐり、ブラストビートが吹き荒れます。さらにそこに重なるオーケストラが勇壮かつ壮大という、様々なトーンがエモーショナルに交錯する至極の逸品。見事な鮮やかさの色彩です。

 

・・・聴いてるとこのあたりまではかなり美しく壮大なランドスケープ感や色彩感覚に驚かされるのですが、実は以降はちょっとダレてくる様な気もしなくもなく・・・でも続けて聴いてみましょう。

澄んだ夜空に星空が瞬く静寂、みたいな感触の7曲目。曲冒頭のピアノと管弦楽の音色の透明感と鮮やかさにハッとします。曲そのものは、ぽろぽろとピアノの音色と共に、アトモスフェリック系のギターリフ&ゆったりとしたリズムが重なる、幽玄なテイスト。9分弱という長さで、じっくりドラマティックに聴かせます。中盤以降ではなんだか邪悪で不穏な空模様に一転する、重苦しいパートも飛び出します。

ダレてくる様な・・・と書きつつ、よく聴けばやっぱり耳を引く構成美や美麗アレンジが素敵。さりげなくいい仕事してる系、って感じかも。

ラスト8曲目も9分超えの大作。印象は前曲に近い、壮大なジワジワ系でしょうか。やっぱりややダレ気味な気もしないでもない中、後半のブラストビート&泣きのトレモロにドキっとする瞬間が切り込んでくるのがニクい。。

才能輝く好盤

・・・と、ほとんど生録音かと思うようにゴージャスなオーケストレーションが非常に耳を引く作品なのですが、ブックレットによるとそのアレンジはCenturio Dictatus(Denis Mauko)氏の手によるものだそう。素晴らしいコンポーズ力に舌を巻く作品で、後半ややダレそうな感じを受けつつも、やはり見事な出来栄えと言わざるを得ない作品でしょう。

アトモスフェリックあるいは自然派ペイガン方面のブラックメタルの質感に、壮麗で豪華なオーケストレーションの組み合わせが、聴く者をハッとさせる壮大な音世界を生み出してる気がします。

その点では、彼ら自身がCinematic Black Metalを標榜してるのも十分うなずける作品というか作風で、その名に恥じぬ1枚と言って良さそうです。自分がシンフォ方面に結構弱いのもありますが、お見事。かなり好きなアルバムです。

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