[レビュー]Sangre Eterna – Amor Vincit Omnia(セルビア/シンフォニック・ブラックメタル)
- 2020.01.01
- セルビア
- Black Metal, Death Metal, Review, Sangre Eterna, Serbia, セルビア, デスメタル, ブラックメタル, メロデス
セルビアのノヴィ・サド(Novi Sad)出身のシンフォニック・ブラックメタル、Sangre Eternaの1stフルアルバム。2008年作品。Discogsでセルビアのセラーに大量注文したものの1つで、セルビアの英会話講師の1人によると、「昔結構流行ったかも」とのことです。
関連情報
Metal Archivesによるとバンド名はEternal Bloodの意味になるそうです。その結成は2005年。翌2006年にはデモを2本発表しているようです。
メンバーはやや流動的のようですが、特筆すべきはその2本のデモでは、我らが(?)BaneのBranislav Panić氏が在籍していて、ギターを担当しています。これ書くのに情報集めてて初めて気付きました。
そして2008年には本作”Amor Vincit Omnia”がリリースされました。ここではギタリストがBranislav Panić氏からBora Jovanović氏に交代しています。Branislav氏はその後自身でBaneを率いていくことになりますね。
その他のラインナップは、ソングライティングの全てを手がけるIlija Stevanović氏(キーボード・ヴォーカル)、Miloš Armuš氏(ドラムス)、Vladimir Bojić氏(ベース)となっています。ブックレットを見ていると、プロデューサーにはセルビアのフィーメイル・シンフォのDemetherなどのDamjan Deurić氏の名前もありますね。
また、ドラムスのMiloš氏はセルビアのレゲエメタルのSenshiに一時在籍していたようです。自分は未だ未聴ですが。。。
そして2012年には2ndアルバムがリリースされています(未聴)。どうやらこのアルバムからはシンフォブラックからメロデス化しているそうですが・・・いずれチェックしたいと思います。
2ndアルバムでは、ソリッドで北欧の香り満載のキラキラメロデスに変貌を遂げています。↓記事で紹介していますので、ご参考に。
セルビアのフィーメイル・シンフォのDemetherは↓記事で紹介しています。ご参考に。
耽美系メロブラ・・・メロデス?
さて、本作”Amor Vincit Omnia”ですが、全6曲入りで、全ての曲は前述のデモ音源2作に収録されているものになります。デモ音源を新録して収録、という事になるでしょうか。
全体の印象は、ロマンティックなキーボードの音色が中心となって楽曲を引っ張っていくシンフォニック・ブラックという感じ。・・・なのですが、ギターリフの刻み方なんかは、かなりメロデス風にも聴こえます。なんというかフィンランドあたりのキラキラメロデス勢が昔猛威を振るってた時期のテイストの様な。。例えばEternal Tears of Sorrowってこんな感じじゃなかったっけ、みたいな。
その点でブラックメタル的な邪悪&暗黒というイメージよりはむしろ、耽美メロデスからちょいゴシック風味、みたいな味付けに聴こえてきます。
オーケストラ風のイントロのメロディーが、セピア色のメランコリックさを放ちミドルテンポで進行する1曲目。”キャアアアァァァ~!!”の絶叫がCradle of FilthのDani Filth氏にうり2つでびっくりします(笑)作品冒頭にこういったちょっと淡々としたミステリアスな曲を持ってくるあたりに、ひょっとすると彼らの耽美志向が表れてる、のかも知れません。
一転して2曲目ではまさにメロデス!なリードキーボードとザクザクしたギターリフが登場。この1曲でほとんど彼らの方向性がはっきり聴いて取れそうな明快さがある気がします。美しいキーボードの音色に、熱くちょっとヒロイックな臭みのギターリフはやっぱりメロデスの定番の手法のお手本どおり?
3曲目も続けてシンフォニックなキラキラメロデスが乱舞してます。ドラムスのリズムはそれほどファストではないので、どちらかというとアグレッシヴさよりは耽美性やロマンティックさが印象的。そして曲の終わりに男性クリーンヴォーカルが入り、再び”キャアアアァァァ~!!”のDani氏風絶叫。
スローテンポでセンチメンタルなピアノの音色が染みる4曲目に続き、5曲目もどことなくセンチメンタルな雰囲気が引き継がれてる1曲。キーボードの音色が美しくどこか物悲しい。そういえばメインとなるヴォーカルは低めににごったグロウル系なのですが、キーボードのきらびやかな音色と相まって、陳腐に醜美の対比ってやつです。
ラストを飾る6曲目。個人的にはこの曲が1番好きかも知れません。メロウでありながら一方で澄んだ空に風が舞うなめらかさが素敵です。やっぱりもはやブラックメタルというよりメロデスの色彩感覚ですが、単純に見事な音の風景が広がってるように感じます。
・・・という全6曲約29分。アルバムとしてはやや物足りない再生時間な気もしますが、たぶんこの調子であと3曲多かったとしても印象はそんなに変わらないはず。すっきり楽しめるうちに聴き終えてしまえるので、これはこれで良いのではないかと思います。
分かりやすさと即効性
ここまで書いておいてアレですが、メロデスって最近はそれほど入れ込んでないので、上記の記述も(笑)くらいのニュアンスで読んでもらったほうが、実際の印象に近いかも知れません。
キラキラ系メロデスとしてはかなり分かりやすいというか、キャッチーな出来上がりなので、さらっと聴くだけでも充分それとして楽しめる内容になっていると思います。セルビアの英会話講師の「流行ってた」というコメントにも充分納得。それほどディープなメタルマニアでなくても、耳にしてすぐに好きになれそうな、そんなさじ加減の作品といってよいでしょう。
逆にその分深みが無いとも言えてしまいそうですが、そのあたりはたぶん紙一重なところで。。。
あとはちょっと惜しまれるのは、音作りがややプアというかチープというか、な所。充分クリアで、特にキーボードの透明感はキラキラ系シンフォと呼ぶにふさわしい出来栄えなのですが、ギターはじめバンドサウンドの迫力がちょっともの足りないように感じられます。
そのへんがもっとガッチリすると、北欧メロデス勢に比肩しうるインパクトが出そうなのですが。
ということで、分かりやすさと即効性充分のキラキラ系シンフォブラック・デス。そのあたりがお好きな方はきっと楽しめる1枚でしょう。
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