[レビュー]Infest – Addicted to Flesh(セルビア/デスメタル)
- 2022.02.16
- セルビア
- Death Metal, Infest, Review, Serbia, Thrash Metal, スラッシュメタル, セルビア, デスメタル, デスラッシュ
セルビア出身の爆裂デスラッシュInfestの5thフルアルバム。2017年作品。ドイツのDefying Danger Recordsからのリリース。
関連情報
バンドの結成は2002年、歌詞を含めた楽曲のほぼ全てを手掛けるブレインのVandal氏を中心に結成されました。
本ブログではこれまで、彼らの2ndフル”Onward to Destroy”と、
3rdフルアルバム、”Everlasting Genocide”、
それから現時点での最新作となる6thフル”Psychosis”をご紹介しています。
5thフルアルバムとなる本作の編成は、バンドの創始者でありブレインでもあるVandal氏(ギター・ヴォーカル)、Tyrant氏(ギター)、Zombie氏(ドラムス)の3人に加え、Vrag氏(ベース)が新たに参加しています。
Vandal氏、Tyrant氏、Zombie氏の3人は、3rdアルバム”Everlasting Genocide”当時から、2021年の最新作”Psychosis”アルバムまで不変で、セルビア産バンドの中では継続的に安定したラインナップで活動を続けているバンドの1つと言ってよさそうです。
このラインナップはなかなかに強力な顔ぶれで、Zombie氏はセルビアのブラックメタルの始祖バンドのひとつSimargalのドラマーでもあり、The StoneやMay Result、Vehementerにも関わってた人物。Vrag氏は現在はThe Stoneのベーシストとして活躍しています。
それから役割は不明ながら、ゲストに同郷のブラックメタル重鎮The StoneのKozeljnik氏、同じくThe StoneやブルデスDaggerSpawn等々多くのバンド&作品で活躍してるNikola ”Usud” Janković氏、さらに元スウェーデンの老舗デスVomitoryのRonnie “Ripper” Olson氏も参加している模様。
もはやセルビアのエクストリームメタル界の手練れ大集合みたいな様相ですね。スバラシイ。。。
本編 – セルビアの破壊兵器再び
さて、これまで本ブログで取り上げた彼らの2nd、3rdアルバムはポーランドのVaderをかなり連想させるスタイルの、爆撃&爆速型デスメタルというかデスラッシュをぶちかましてくれる作品でした。そして最新作となる6thではその爆裂系のスタイルを踏襲しつつも、時に重厚かつ荘厳な例えばBehemothあたりの神秘性漂うパートも切り込んでくるという新基軸を見せてきた充実の意欲作だったのが記憶に新しい。
そんな作品たちの間でその存在を示す、彼らの5作目となる本作”Addicted to Flesh”。果たしてどんな炸裂音が飛び出すのか、聴いてみましょう。。
銃声のSEに、突撃の雄叫びがとどろくイントロ1曲目。ジャンジャン、と迫りくるような緊迫感の雰囲気作りがナイスで、これから幕を開けるであろう彼らInfestによる蹂躙劇に期待が膨らみます。
冒頭からテンションMAXでドカドカとデスラッシュ全開で襲い掛かる2曲目が本編の幕開け。相変わらずVandal氏による「うがぁぁあぁ」の咆哮がVaderにそっくりで笑顔になりますね。
そしてある種究極のデスラッシュ・アンセムになるであろう3曲目。その名も”Deathrash Legion 666”。強烈な頭打ち高速ドラムスのビートが叩きつける中、叫ばれるその曲タイトル・・・思わず一緒に叫んでしまうアツさ。これはシビれる格好良さ。細かいことは一切抜きに、直感的に聴いた感触そのままに、その迫力、勢い、エネルギーを感じ取れる一品でしょう。
4曲目も引き続き爆速デスラッシュ全開って様相なのですが、ここでは要所で、同郷セルビアのブラックメタルの重鎮Kozeljnik氏がゲスト参加。ミステリアスで呪術的なコーラスを聴かせて、楽曲に独特の怨念めいたスパイスを効かせてます。なんだろう、戦場で倒れた者達の思念、てな感じでしょうか。。
ややスピードを落として、うねりを伴いながら地獄の業火がたぎる様な雰囲気でジワリと迫る5曲目。中盤のギターソロがいいアクセントになってて、心地よいグルーヴ感?でライブではモッシュも捗りそう。
そして続く6曲目。前半は比較的オーセンティック(?)なスラッシュメタル的ザクザク感でメタリックにズンズンと迫ってきますが・・・時おり切り込んでくるメロディがメロデスかと思うほどメロウでエモーショナルで素敵。かと思うと曲後半では再びいつもの爆裂デスラッシュに舞い戻りドカスカ炸裂。一辺倒にならない多彩さとドラマ性。こういうところはちょっとした新基軸と言えるのかも。
そしてお約束のVader味の咆哮が再びこだまする7曲目。タメの効いた5・6曲目から空気は一転、粉塵舞い上がる戦場の火薬の香りのデスラッシュ。切り込んでくるギターソロがちょっとヒロイックでドキドキします。後半のナレーションの様な普通声のコーラスは、再び登場のゲストのKozeljnik氏によるものと思われます。
無慈悲なデスラッシュの爆撃と一斉掃射はなおも続き・・・
曲中盤の正統派デスメタルみたいなドロみのトレモロリフが邪悪な8曲目。キレキレのデスラッシュ感だけでなく、湿り気を帯びた不穏で怪しいデスメタル感は、やっぱり要所できちんと飽きさせないタッチの変化を配置してきてるのかなと思わせます。
そしてラスト9曲目は冒頭のバトルドラム?みたいなドコドコ打ち鳴らされるリズムが印象的な一品。最期のあがきか、あるいはトドメの一撃か、ギターリフやフレージングは結構特徴的で、作中屈指、耳を引くスリリングさで迫ります。セルビアが誇る破壊兵器Infestによる蹂躙激は、果ての果てまで無慈悲に蹂躙を続けます。
無心で破壊と蹂躙にひれ伏す
・・・基本的にはこれまでの作品での作風から想像できる通りの、終始押せ押せの爆裂デスラッシュが相変わらず炸裂しまくってて素晴らしい内容で、安心して楽しめる強力盤。相変わらずサイコー。
加えて、さりげなくスローダウンのパートで深みを演出してみたり、統一感を失わない程度に色合いの異なるリフを混ぜてみたりと、多彩さというか円熟味も増してきた様な気もします。
それから印象的なのは、ギターソロの分量というかキャッチー度がかなり上がってる事。これまでの作品はそんなにソロって前面に押し出されてなかった気がするのですが、本作は要所で曲の格好良さを引き上げるいい仕事しまくってます。さらにアツく強力に仕上げるスパイスというか、キメの一撃みたいな瞬間になってますね。
そんなこんなで、ちょっとした小技を効かせつつ、変わらず恐るべき破壊力で仕上がった本作。
彼らはあくまで徹頭徹尾、爆裂暴走デスラッシャー。「これでもくらいやがれ」と言わんばかりの炸裂ぶりとみなぎるテンションの高さ&緊迫感。あんまり何も考えず、その爆音に身を委ねて好きなだけ暴れまわるのが似合う作品でしょう。
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<参考にしたインタビュー記事↓>
https://www.deadlystormzine.com/2018/01/interview-infest-lyrics-are-focused-on.html
https://www.metalfan.ro/en/interviuri/zoran-sokolovic-vandal-infest-music-is-our-connection-5930.html?print