[レビュー]Odar – Zavjet Dalekom Snu(ボスニア・ヘルツェゴビナ/ブラックメタル)
ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ出身のブラックメタル、Odarの1stにして唯一のフルアルバム。2008年作品。これまたちょっとググッただけでは全然情報見つからなくて・・・地下世界は秘密を解き明かそうにも、なかなか大変です。
周辺情報的なもの
やはりほぼ唯一の手がかりとなるMetal Archivesによると、2008年に限定カセットでリリースされた後、翌2009年にCD化されているようです。時期ははっきりしませんが(2011年周辺?)、本作リリース後残念ながら解散してしまっています。
レコーディングでドラムスを担当してるKurvar氏は、同じくボスニアのブラックメタルKrvやテクニカルメロデスSilent Kingdomにも在籍していたようで、
また、exベーシスト氏は同郷のブルデスFestival Of Mutilation絡みだったり、ライブドラマー氏もまたFestival Of Mutilationにいたり、ボスニアのフィーメイルゴシックのThe Loudest Silenceでライブに出てたり、セルビアのBaneにいたり・・・だそうですね。
どこかに書いてた気がしますが、こういう人脈見るに、バルカンのメタルシーンはジャンルの垣根みたいなものはあんまりないんでしょうか。
もうちょっとソースがあれば、人物相関も整理できそうなんですけど。。
↓Festival Of MutilationとBaneはよければこちらを参考にどうぞ
[Review]Festival Of Mutilation – Gods Of Infernal Desolation(ボスニア・ヘルツェゴビナ/デスメタル)
荒涼系ブラックメタル?
さて、前述したように彼らの唯一のアルバルとなる本作ですが、全体的にはどことなくペイガン風味も感じられる、荒涼とした雰囲気が漂うブラックメタル。
実際彼らがペイガンブラックを標榜してるのかは分からないんですが、パッと聴いたところあんまり印象に残らず、全編をモノトーンっぽいミステリアスさが覆っているというあたりが、個人的にペイガン風味がするというか、東欧産らしいなぁという印象です。
おそらく、音質もそうした印象を与えるのに影響してるんでしょう。プロダクションはあまり良くなくて、ブラックメタルらしい(?)、中音域に全部まとまってて低音と高音がやや不鮮明な音。
その音が独特の空気感を漂わせるヴェールのように曲を覆っていて、不鮮明さがミステリアスさになり、ミステリアスさがほの暗い東欧のオーラを生み出す・・・みたいな?
よく言えばこんな風に誉め言葉っぽく表現できますが、実際のところ悪く言えば、取り立てて印象的な曲やパートがあるでもなく・・・特筆するところのないB・C級ブラックメタルと言っても間違ってないとも思います。
自分自身最初何度か聴いてて、正直コレ聴かなくても何にも遅れをとらないやつという印象でした。
ただ、ここのレビューのためにもう少し回数聴いてみると、このB級臭さというか、全編特に大きな起伏もなく、淡々と、荒涼としたブラックメタルが鳴ってるのが案外味わい深いものに感じられ・・・
例えばファストブラックみたいにその攻撃性でもって熱くなる、とか
シンフォブラックみたいに美しくて涙する、とか
そういうんではなくて、ミドルテンポで進むパートが多い印象で、ただ淡々とモノトーンの風景が聴こえて、ぼーっとそれに浸ってるという
そんな味わい?だと思います。
繰り返し聴いていると、ところどころ、聴きどころはきっとあって、うっすらとした淡いメロディーが聴こえたり、案外ブルータルっぽい爆走パートが挟まれてたり、よく聴くと決して平坦な音楽ではないのが分かります。
音質のせいで、それらは決して目立つものではないのですが。。。
個人的に1番印象的だったのは5曲目。6分半とちょっと長めの曲で、特に前半の勇壮なコード進行と粗削りなブラストビート、メロディーの組み合わせが本作のハイライトの1つになってると思います。全体がモノトーンな質感の中にあって、ここはちょっと胸が熱くなってしまいます。・・・がやっぱりメロディー感はペイガン風ではないかと思います。
なのでサタニックなブラックメタルというよりは、ペイガンあるいはちょっとアトモスフェリック系な趣。
”ザ・辺境ブラック”
良くも悪くもこれはまさに”ザ・辺境ブラック”、という事でいいと思います。コレ聴いて好きになっても、たぶん誰ともその感動を分かち合う瞬間なんてやってこない、そんな1枚。
話題になって、あちこちで高評価されてる=名作・必聴盤。。。なるほどよく分かりますが、本作にはそんな光は一切当たることはなく、信じられるのは自身の耳と心、感性だけ。
しかもその聴きなれない音楽は、文字通り辺境の地から届けれられてて、一体それをどう受け止めていいかも確信が持てない。
ひとり薄暗い森へ足を踏み入れて、その秘密ともただの虚無ともつかないものに触れる・・・そんな感覚が本作にあって、これこそ、”ザ・辺境ブラック”って感じ、しません??
なんだかだんだん訳の分からない文章になってるのは十分自覚あるのですが、例えばこのレビューが全く印象に残らないものだったとして、
それと同じようなトーンがこの作品に漂ってる、というのが最も良い例えになるかもしれません。いい意味でも、悪い意味でも。
いや、こんな駄文と偉大なるブラックメタル・アートを一緒にすんな、ってのも重々承知でございます、ハイ。精進いたします。
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