[レビュー]Ashes You Leave – Songs Of The Lost(クロアチア/フィーメイルゴシック・ドゥーム)
クロアチアのリエカ(Rijeka)出身のフィーメイル・ゴシックメタル、Ashes You Leaveの5thアルバム。2009年作品。当ブログでは初めてクロアチア産の音源に注目となりますが・・・個人的にはセルビアやボスニアに比べて予備知識もあんまりなく、これまでいろいろ聴いてきた中にクロアチア産ってあったかなぁ、という程度なので・・・いろいろ勉強しながらご紹介したいと思います。。
周辺情報的なもの、いつもの
インタビュー記事やMetal Archives情報を見ていると、彼らはMy dying BloodやAnathema,Paradise Lost,CathedralといったUKドゥームに最も影響を受けているんだそうで、3rdアルバムあたりまでは、そうしたデス・ドゥーム寄りの音楽をやってたようです(今のところそれらは未聴)。
バンド名の由来はCathedralの曲から。そのあたりもUKドゥームからの影響が明らかな感じですね。
その後の作品からは少し?ゴシック要素も増しつつ、5作目となる本作では、派手な曲展開などは少なめなドゥーム感とフィーメイルゴシックらしいメロウさをバランスさせた作風になっています。パーマネントなメンバーにヴァイオリニストがいるのが、ちょっと特徴的?結構いそうで、意外と多くない気がします、個人的に。
またドラマーのInsanus氏は同郷のブラックメタル、Black Cultにも在籍してて、またギタリストのBerislav Poje氏はSaathaenの名で元Black Cultという事になってますね。
それからシンガーのTamara Mulaosmanović 女氏は本作のみの参加のようです。調べてると、前作と次作ではそれぞれ別のシンガーがヴォーカルを取っているみたいです。という事はもしかすると、結構アルバムごとに印象が違ってるのかも知れません。音源入手できたら、そのあたりも聴きどころになりそうです。
―追記。
前作、”Fire”アルバムの記事もよければ参考にどうぞ。↓
さらにメンバーが関わってるブラックメタル、Black Cultも↓で取り上げてます
幽玄なるフィーメイルゴシック・ドゥーム
ざっと聴いてみて聴こえてくるのは、バンド自身影響を公言してる通り、Anathema(実はあんまり詳しくない汗)っぽい質感も感じられる、メロウなフィーメイルゴシック。個人的には気だるい感じが初期The Gatheringっぽく聴こえたり、儚さと地味さの際どさとヴァイオリンのイメージが中期(?)Tristaniaを思わせたり、です。
うっすらとキーボードの音が乗ってふんわりとした空気感を漂わせたり、沈み込む様なギターリフがドゥーミーだったり・・・全体に大げさなドラマティックさやインパクトはないのですが、淡くて物憂げな感じがゴシックらしいといっていいんではないでしょうか。
フィーメイルゴシックというとフィーメイルシンフォ系なんかと境界が際どかったりしそうですが、こちらはもっと耽美的というか・・・なので、甘すぎなのとか、ほとんどポップメタルスレスレなやつはちょっと、という気分でも浸れそうです。
Tamara女氏の歌声は透明感のある、澄んだタッチで、淡いです。その分線が細いともいえますが、淡々とゴシックするには良いんではないかと。
朗々とした、これまたゴシックメタルど真ん中な男性声から始まり、男声グロウルとTamara女氏の掛け合いがいかにもな淡い1曲目聴いて、正直、”うーん、ありがち”と思いつつも、2曲目のピアノの涙を誘うメロディにちょっとドキっとしたり・・・
個人的に白眉だったのは6曲目。アコースティックギターに導かれ、ドラムスとヴァイオリンの音色をバックに儚げでファルセット気味な歌声がのる、ドリーミー?でちょっと土臭い温もりの漂う一品。アルバム全体を通してやや線の細めのヴォーカルだったり音づくりだったり、するのですが、この曲はそれが見事に曲調とマッチしてて素敵。通じにくそうな例えですが、そう、USのTodesbondenのあの肌触りです。
そして締めくくりの9曲目。幽玄なヴァイオリンとギターメロディーに導かれ淡々と進む、きっとほとんどアウトロ的なインスト風の1曲で・・・・Ah~ah~ah~ah~と最期の囁きが胸に突き刺さるラストのパートが切なすぎます。
なんというか、聴きながら、「このまま死なせてぇ・・・」って気持ちにさせる、これこそがゴシックたる死の香り。ゴシックメタル聴いてて、時々そういう瞬間というかパートにめぐり合いますが、それこそがゴシックモノの醍醐味だと、個人的に思います。
暗黒耽美の佳作
なんだか微妙なのか褒めてるのか分らない文章になってしまいましたが、全体になかなか良い雰囲気を持つ作品だと思います。淡い中にも、ところどころに心を動かす瞬間がちりばめられていて、暗い美しさみたいなものがよく表現されてる気がします。
甘すぎず地味すぎず、幽玄なドラマ性とドゥーミーさが程よく溶け合った、いい具合にビターな作品。本文中で触れたバンド達や、他には・・・ええと、Theatre Of Tragedyあたりが好きだとたぶん圏内?
あとは自分が買った再発盤使用のCDには、エンハンスド使用で、本編にも収録されてるカバー曲のビデオクリップ(映像は特筆するもの無し)が入ってました。Placeboって(ゴスロック?)のカバーみたいですが・・・全然知らない。。コレ知ってなきゃマズいやつなんでしょうか・・・。
↓参考にした記事
Ashes You Leave Songs That Were Lost then Found: The Interview
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