[レビュー]Suffering’s the Price – Skull Tower (セルビア/ビートダウン・ハードコア)
セルビア南部の都市ニシュ(Niš)出身のビートダウン・ハードコアSuffering’s the Priceの1stフルアルバム。2014年作品。ゲットしたのはCD-R仕様なのですが、デジタル盤についてくるアートワーク類と内容は変わらないので、ほとんどコレクター向けな感じでしょうか。
少し前置き
本ブログではブラックメタルを中心にバルカンのメタルを紹介していますが、実は自分はハードコア方面は全くの門外漢。かなり昔にConvergeをちょっと聴きましたが、どのアルバムかも覚えてないし、冷たく無機質な感じだけど音そのものはデスメタルみたい?というくらいの印象しかありません。
ほとんど、ハードコアって何?デスメタルとドロドロ感が違うだけじゃね?だからデスコアってその中間みたいな雰囲気な気がするよね。なんて状態です。。
じゃあ一体なぜこれを書いてるかというと・・・
このSuffering’s the Priceというバンドを知ったのは、例のごとく(?)オンライン英会話。セルビアの講師と話してて、その講師の近しい人(友人だったか恋人だったか忘れました><)がやってるバンドという事で紹介してくれました。
ハードコアはそれほど趣味ではないので、参考程度に気に留めていただけだったのですが、ある日偶然CD盤音源を発見。デジタル盤がBandcampで聴けるのは分かってましたが、やっぱりどうしても頭から離れなくて、結局買ってしまいました(中古ですが)。
そのセルビアの英会話講師とは↓で話してます。最近見かけないなぁ。
関連情報
という事で予備知識も全くない状態ですが、バンドの情報を見てみると、結成は2011年とあります。公式Facebookページによると、セルビアで最もブルータルなハードコアバンドの1つと称していますね。
本作は2014年にリリースされた1stアルバムです。他にはスプリット盤をリリースしていて、曲のいくつかは他のコンピレーション盤にも収録されたらしい。
本記事執筆時点(2019年10月)の情報ですが、公式Facebookページによると、彼らは”Misanthropic Manifest”というタイトルで2ndアルバムのリリースを予定しているとのこと。リリース日などは近日発表という事になっています。
あとは、明確な関連付けの確認は取れないのですが、アルバムタイトル”Skull Tower”はおそらく、彼らの出身の町ニシュ(Niš)にある、同名のそれを指しているものと思われます。実際アルバムの背面カバーアートには、それらしいイラストが描かれています。
なんでもセルビアがオスマントルコの支配下にあった時代に建てられた、セルビア反乱軍の、本物の頭蓋骨を埋め込んで作られた建造物なんだとか。
冷たく重厚なマシナリーサウンド
さて、ハードコアについてあれこれ書くのはこのブログでも初めてなのですが・・・聴いてての印象は、かなりガッチリ硬質で冷たささえ感じる音作りの、マシナリーサウンド。その音で時にはザクザク刻んだり、時には高速ビートで爆走したり、また時には急転直下のビートダウン(使い方合ってるのか??)と、容赦なく行き来する様は、まるで殺人機械というか破壊兵器。
先入観交じりの個人的イメージだと、連射兵器というよりは、どちらかというと爆発物あついは炸裂兵器風の音っぽい気がします。例えばジャンルが違いますが、デスコア(?)のSlaughterboxのキチガイベタ打ちバスドラムは、ほとんどミニガンみたいな連射ぶりな一方、こちらはもっと・・・って何の話でしょうか(汗
1曲目はいきなり重く引きずるようなリフの硬質な響きがクール。後半、モッシュパート(でいいのかな)でスローにうねった後炸裂するブラストビートが気合入ってます。なんだかトゲトゲしい感じ。
2曲目は、メタル方面の自分の耳には、そのリフとテンポがところどころ、ちょっと”God Hates Us All”アルバムの頃のSlayerのように聴こえます。
4曲目の頭に鳴ってる楽器は・・・なんて名前だったか思い出せないのですが、確かバルカン地域のトラディショナル音楽で使われてるものの1つだったはず。ということで、ここではほんのわずかですが、彼らがバルカンの国セルビア出身であることが現れているといって良さそうです。
それから特に印象的だったのは・・・
冒頭の、「―この国の真の支配者って奴は、この国の全て、諸君らの存在自身をも所有してて、だから君らには選択の自由なんてものはねぇ。―ヤツらはとんでもない額の金を使いやがる。そりゃもう盗みだよ、ヤツらが欲しがるものを手に入れるためのな!(拍手喝采)―つまり彼らが望むのはそう、従順な労働者ってやつだ。」云々といった雰囲気のダミ声演説が印象的な8曲目。
曲自体は他とそう変わらない雰囲気ですが、こういう姿勢がハードコアっぽい、ということでしょうか。なんて呼ぶんでしたっけそういうの・・・Anti-Politicsでいいのかな。
あとは、ラスト10曲目は、Shattered Realmというバンドのカバーとのことですが・・・原曲知らないのもあって全く気付きませんでした。曲調も全く違和感無くて、アルバム本編と同じテンションのままの、ヘヴィでマシナリーなハードコアになってます。
ハードコア素人と聴く・・・
ハードコア素人の自分にとっては、この音というのは硬質で無慈悲なスタイルの”メタル”に聴こてしまうので、ハードコア的に本作がどうのこうの、という事を語れないのですが・・・。前述のようにとにかく音の輪郭部のはっきりした、そのせいかかなり冷たく硬質な感触のヘヴィさに聴こえます。
そしてメタルコア勢(?)にありそうなメロディの甘みや様式美成分も一切無い男らしさというか・・・あれ?それってハードコアって事?ひたすらバキバキとリフとリズムでぶん殴られ続けてるような。
あとはゲロゲロブヨブヨ方面のスラミングデスを製氷機に入れてガチガチな音に振ったら、こういうスタイルに近いような気もします。ストップアンドゴーの感触というか、スローパートのドムドム感あたりがなんとなく。いやスラミングデスもそんなに詳しくないですが><
セルビアという地域が、ハードコアにとってどういう位置づけになるのかは全く分かりませんが、聴いてて全くチープさやショボさを感じたりしないので、きっと品質は上々だと思います。
あとは・・・ハードコア素人の文章を最後まで読んで下さった皆様に感謝をしつつ、彼らのBnadcampページでは本作を無料でフルで聴くことが出来るので、ぜひみんなで聴きましょう。
本作”Skull Tower”のBandcamp内作品ページは↓
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