[レビュー]Dead Joker – Venture(セルビア/デスメタル)
- 2019.09.16
- セルビア
- Dead Joker, Death Metal, Review, Serbia, クラグイェバッツ, セルビア, デスメタル
セルビア中央部の街クラグイェヴァツ(Kragujevac)出身のデスメタルDead Jokerの1stアルバム。1994年作品。自分がゲットしたのは2017年の再発盤で、セルビア旅行中に参戦したArsenal Fest会場で入手できました。確か700円くらいだったかな。
周辺情報的なもの
Metal Archivesによると、バンドの結成は1990年。1991年と1993年にはそれぞれデモをカセットでリリースしています。セルビアあるいは旧ユーゴスラヴィア諸国のメタルバンドとしては、かなり早い時期から活動しているバンドと言えそうです。
そして1993年には、本作”Venture”のレコーディングが行われ、翌1994年にカセットでリリース。彼らのデビューや本作リリースの1994年の次期というのは、ユーゴスラヴィアの各地で紛争が起こっていた厳しい時期で、それを思うと本当に、よくぞリリースしてくださった、と感謝しきり。
この”Venture”アルバムは、1997年にバンド自身によってカセットで再発され、2001年にはボーナストラック2曲を追加して、”ActⅡ”というタイトルでもリリースされています。この”ActⅡ”、はじめはそのタイトルからして、2ndアルバムかと思っていたのですが、よく確認するとどうやら同じ内容。
さらに2017年には、”Venture”のタイトルで再び再発。自分がゲットしたのはこの仕様です。・・・ということで、本作は事実上彼らの唯一のフルアルバムといえるでしょう。
本作のレコーディングメンバーは、Gogec氏(ヴォーカル)、Miki氏(ギター)、Marko Sujica氏(ギター)、Zlatko氏(ドラムス)、Fritz氏(ベース)の5人。現在はオリジナルメンバーはGogec氏とMarko Sujica氏の2人の模様。
Dead Joker
ドゥーミーなイントロから続けて繰り広げられる彼らのデスメタルは、いい意味で時代を感じさせる(?)まさにオールドスクール・デスメタル。どことなく昔のDeicideっぽいウネウネ感も感じるスタイルにも感じられますが、一方音質は地下臭満載。
90年代初期の音源としては標準的な音質ではないかと思いますが、厚みがありながらちょっと不鮮明で、もこもこした音質でいかにもアンダーグラウンドというかフェティシズム感満載というか。
そのせいか実際やや地味に聴こえたり、何やってるか気付きづらいところもあるのがちょっと残念でもありますが、それも一つの味わいでしょう。その分濃厚なオールドスクールデスの風味。
ザクザク感は薄めな分、不穏なうにょうにょ感が漂いまくるギターリフ、せわしない変拍子を入れてきたり、刺々しいブラストビートを叩き込むドラムス、やや単調な気もしつつドスの効いたグロウルを聴かせるヴォーカルなどが相まったその音像は、まさにオールドスクール。
個人的に特に印象的だったのは5曲目。本作で1・2を争うアグレッシブさを持つ曲で、頭からブラストビート、高速2ビートに乗せて残忍な冷たいリフがせわしなく繰り広げられます。これはクール。
ライブ観ました!
さて、このDead Joker、幸運なことにライブ観戦の機会に恵まれました。観たのは彼らの地元、セルビアのクラグイェバッツで開催されたArsenal Festというロックフェスにて。ある種のレジェンドといってよさそうなこのバンドを生で観られるなんて、有難すぎる体験。
その時の様子は↓の記事でもちょっと紹介しています。
[ 聖地巡礼??]セルビア&ボスニアひとり旅~Arsenal Fest参戦@クラグイェバッツpart1[メタルツアーも]
ライブ観てた時点では、彼らの曲の細部までは把握できていなかったので、正直どんなセットリストだったかは記憶にないのですが(汗)、ベテランの風格漂う堂々としたライブだったと記憶してます。ただ同じトーンの曲が多いので、そのせいかやや地味に見えたことも否定できないのですが・・・。
あとは余談ですがこのDead Jokerのライブ後、同じステージで次のライブを観てる時、普通にヴォーカルのGogec氏が客席でライブ観てたのを目撃した気がします。勘違いでなければ。特に人だかりになるわけでもなく、ホント普通に他のお客さんと談笑してましたね。
セルビアンデス・レジェンド
本作が登場した1994年という時代を考えると、やはり彼らはセルビアあるいは旧ユーゴスラヴィアのデスメタルレジェンドと言ってよさそうな気がします。例えばスラッシュメタルだとBombarder、ヘヴィメタルだとAnnathemaかな?と並ぶ様な。ブラックメタルだと誰だろう??
ともかく前にも書きましたが、そうした、旧ユーゴスラヴィアでのメタル黎明期の時代、しかも当時は紛争の最中でもあるという状況の中で見事にバンドとして存続し、今日まで活動を続けているという事実を思うと、やはり彼らはレジェンドの称号にふさわしいのではと、勝手に思ったり。
それから彼らのYouTubeチャンネルには、新作のプレビュー動画が上がってて、今年(2019年)にその新作がリリースされるっぽいアナウンスがあります。これも非常に楽しみですね。無事スムーズにリリースされることを祈りたい。
彼らのBandcampページで本作”Venture”が聴けます。みんなで聴きましょう。↓
https://deadjoker.bandcamp.com/releases
追記:上記の新作のお話ですが、遅れて2020年に新作”Ambivoilent”がセルビアの名門Grom Recordsよりリリースされました。↓記事で紹介していますのでご参考に。
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