[レビュー]Kolac – Bastard Son Is Dead (セルビア/ブラックメタル)

[レビュー]Kolac – Bastard Son Is Dead (セルビア/ブラックメタル)

セルビアの首都ベオグラード出身のブラックメタル、Kolacの1stフルアルバム。オリジナルはポーランドのMoon Recordsからカセットで2011年にリリースされていました。筆者がゲットしたのは新バンドロゴへの変更と、CD化にあたってリミックスが行われた、2013年のプロCD-R仕様。確かDiscogsでセルビアからお取り寄せした品です。

関連情報

このCD盤は名目上、Some Kinds of Distroというレーベルからのリリースということになっていますが、インタビュー記事によると、実際は彼らのセルフリリースなんだそう。このSome Kinds of Distroは彼ら個人でやってるディストロで、単にその名前をカバーに載せてる、という事情らしい。

本作の前には、デモやスプリットがいくつかリリースされていて、セルビアのバンドにしては結構多作と言えるかも知れません。そのデモの1つ、2009年の”…No God”は本ブログでも紹介しています。

[レビュー]Kolac – …No God (セルビア/ブラックメタル)

このデモについては、彼ら自身がインタビュー中でターニングポイントになった、とかよりシリアスになったとか語っているように、彼らの北欧荒涼系ブラックメタルを下敷きにした音像を確立した作品でした。

そしてリリースされた1stフルアルバムが本作”Bastard Son Is Dead”。これまた挑戦的なタイトルの作品です。

本作のメンバー構成は、Zlorog氏(ギター、ヴォーカル)と、Grob氏(ベース)の2人。この2人はバンドのオリジナルメンバーでもあり、中核メンバーといって良さそうです。加えて本作ではTorkmandukk氏がドラマーとして加わり、バンドとしてより強固なラインナップになりました。

ブラックメタルではちょっと珍しい、白基調のカバーアートは、Ana Serafimovicという人物が手掛けていて、手前の墓標はご覧の通りJesus Chirist、奥の方はAllahと書かれています。まさに反宗教ど真ん中、ですね。。

インタビュー中での回答の感じからすると、彼らは反キリスト教、というよりはカバーアートの通り反宗教という姿勢で、ブラックメタルをやっているようです。

本編 - ファスト時々メロウ

本作はCD化にあたりリミックスが施されたということで、音質は非常にクリア。なんというか、音の分離がかなりはっきりしてる作りでしょうか。”…No God”デモの時点で既に、デモとは思えない音質&品質でしたが、本作もそれに負けず劣らずな品質感です。むしろ、続く2ndアルバムの方がダーティな質感の音な気がします。

改めて聴き比べてみると、”…No God”デモに比べてやはり全体的にクリアな音質です。デモの打ち込みドラムスの音はそれ単体で聴けばほとんど違和感のないものでしたが、比較するとこちらの1stは人間が叩いてるだけあって、やっぱりずっと生っぽい。その点も含めて、全体的によりダイナミックな音作りで、正当に進化しているといえそうです。個人的にはそのドラムスの音がかなり大きめに配置されてるので、そのバカスカぶりがなかなか快感。

 

・・・そんなドラムスが、「今回からは人間のワザだぜ!!」とアピールするかの様なドラムソロから、ブラストビート&邪悪なトレモロリフになだれ込んで行く1曲目。この暴虐感はやっぱり彼ららしい、スウェーデンあたりのブラックメタル勢の質感です。Mardukとかあのあたりの。

2曲目は、昔のBurzum風味のどんよりした感じがやっぱり北欧ブラックメタル崇拝、なイントロから、ドカドカと飛ばしていきます。こちらはノルウェイジャン、なテイストの曲になるでしょうか。特に後半のうっすらとしたメロディーが陰鬱なモノトーン世界を描いてて素敵です。

続く3曲目は、個人的に本作の中でもお気に入りの1つ。全編に渡ってのメロディー感というか音づかいが、ほんのり病的で、ほんのり薄気味悪く、ほんのりメロウという、なんとも絶妙なさじ加減の色合いです。そして飛ばしすぎないドラムスのリズムと相まって、その荒涼感たるやもう。。。

5曲目は、甘さ加減一切なしの爆裂曲で、これは完全に中期(?)Marduk的と言っていいでしょう。ドラストビートがドカドカ鳴り響き、ガリガリかき鳴らされるトレモロのコードが強引に曲を引っ張って振り回して、ヴォーカルが呪詛の叫びをぶちまけてます。

そして本作中で1番の寒空が広がるのが6曲目。これは例えばSatanic Warmasterとか(?)フィンランド勢みたいな色合いというと伝わりやすいでしょうか。そこはかとなくメロウで、スタスタ疾走するリズムとトレモロリフが、まるで灰色の大地を吹き抜ける濁った風みたいな??やっぱりこのモノトーン感の表現が見事です、彼ら。

8曲目は、曲中盤と、後半に配置された、キレてヤケクソ気味みたいに聴こえる怒涛のブラストビートが最高。その前後では、スローなリズムで沈むようなタメを作ってるので、そのコントラストも相まって、キレた炸裂感がなかなかすごい事になってます。“Infernal Fxxking Waaaarrrrr!!!”だそうです。そりゃ大爆発するってもんです。

そして本編のエンディングを飾る9曲目は、また見事な荒涼系ソング。リズムとギターリフの感じやその暗さ加減は、やっぱり初期Burzumに通じる感じでしょう。なんというか、この陰鬱な進行と、時折の疾走感が胸に染みる感じがやっぱり素敵。絶望に崩れおちるでもなく、憎悪に破壊を尽くすでもなく、ただただ呆然と立ちつくすのみ。。。

 

アルバムラストの10曲目は、Mardukの”Bleached Bones”カバー。個人的には原曲というかあのアルバムが大好きって程でもなかった気がしますが、原曲に基本忠実な感じでカバーされています。でーん、でーんと引きずるような重厚感で締ジワジワと締め上げてくるのも原曲同様ですね。ここでMardukのカバーが入ってるあたり、彼らのルーツの1つにそれがあるのはきっと間違いないのでしょう。

2つの魔力

たぶんパッと聴き、ファスト系ブラックとして認識されそうな彼らのスタイルですが、その攻撃性の魅力もさることながら、それ以上に見事な色彩感覚を見せるあたりが案外彼らの真骨頂かも。

その辺は彼らのほか作品でも同じで、時々恐ろしくハッとさせられるような瞬間が飛び出します。

爆裂系で破壊と攻撃の限りを尽くすスタイルと、うっすらとメロウで荒涼とした風景を絶妙な色彩感覚で描くスタイル、そういった2面性と魅力が並び立っているのが彼らのブラックメタル、ということなのでしょう。

・・・とはいえそれらはすでに北欧勢が確立しきってるものでもあるので、だからと言って新鮮味があるかと言えばそうでもないし、彼らにしかないものかというとそうでもないと言わざるを得ませんが・・・それでもやっぱりなかなかに胸を打つ瞬間の数々にハッとさせられたのも事実です。

そういう意味では、安心感満載のオールドスクール・ブラックメタルであることもきっと事実。本作は”…No God”デモのまっすぐ延長上にある作品であり、続く2ndアルバムでも、古き良き香りのブラックメタルを継承する彼らの音楽を確固たるものにした1枚ということに、なりそうです。

 

-参考にしたインタビュー記事-

KOLAC – BLACK TO THE BONE

続く彼らの2ndアルバムは↓記事で紹介しています。

[レビュー]Kolac – Zauvek Crni(セルビア/ブラックメタル)

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