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[レビュー]Claymorean – Eulogy for the Gods (セルビア/フイーメイル・エピックメタル)

[レビュー]Claymorean – Eulogy for the Gods (セルビア/フイーメイル・エピックメタル)

セルビア出身のフィーメイルVo・メロディック・エピックメタルClaymoreanの5thフルアルバム。前々作、前作と同じくアメリカのStormspell Recordsからのリリース。

本ブログ的にセルビア産バンドでも屈指の勢いとクオリティを持つバンドの一つ。勝手に推しまくってるバンドの、待望の最新作です。

関連情報

インタビュー記事によると、アルバム制作のスタートは2019年、Dejana女史のヴォーカルのアイデアがそのスタートになったんだそうです。

パンデミックによって進行は緩やかであったものの、翌2020年には新ドラマーのMarko氏の加入に伴い、ドラムパートのレコーディングがスタート。ブックレットによればヴォーカル、ギター、ベースは2020年から2021年春にかけて収録された、とあります。

そんな本作の編成はバンド仕掛け人でもあるVladimir Garčević氏(ギター)と、Goran Garčević氏(ベース)のGarčević兄弟に、Vladimir氏の奥様Dejana Garčević女史(ヴォーカル)、メロディックメタルAtlantidaやÆterniaで活躍してたUroš Kovačević氏(ギター)、本作から新加入のMarko Novaković氏(ドラムス)を加えた5人。

 

収録曲のうち1曲目の”Hunter of the Damned”と、2曲目”Battle in the Sky”は2020年の先行デモからの新録。

ボーナストラックの8曲目”Blood of the Dragon”は、Blazon Stoneなど多くのプロジェクトを手掛けるCederick Forsberg氏のペン&演奏による曲で、シングルとして既にリリースされていたものですが、今回の収録にあたってはCederick氏によるギターソロ以外の全パートが新録になってます。

この先行デモとシングルはまとめて↓記事で紹介していますので、関連情報と合わせてご参考にどうぞ。

[ミニレビュー]Claymorean – Demo 2020&Blood of the Dragon(セルビア/フィーメイル・エピックメタル)

メンバーは「よりストレートなメタルアルバム」、「メンバー全員が制作のプロセスに関わることでよりオーガニックに」と語る本作。本ブログ的に超待望の新作、その音像ははたして・・・。

本編 珠玉の8品

本編の1~2曲目”Hunter of the Damned”と、”Battle in the Sky”は前述のとおり先行のデモから。新たに録音されたその音作りはさらにダイナミック&クリアになり、各パートの分離も抜群。

デモ自体の音質も十分で聴いてて不満はありませんでしたが、本作での音作りは過去最高の出来栄えかも知れません。とてもタイトに洗練されてるというか・・・個人的にはドラムスの音がかなりデカめに配置されてるのがお気に入り。

 

アルバムの冒頭を飾る”Hunter of the Damned”、アップテンポ&ちょっとロックンロール風に進行しながら、体を震わせる迫力でツーバスがドコドコ響いてるのがかなり強力。バスドラムに限らず、スネアやらタムやらの爆裂感も良い意味でサイコーに騒々しくて素晴らしい。それでいて決してノイジーではなく、あくまで澄んだ響きで鳴ってるのがナイスです。非常にキャッチーで初聴きの皆さんのツカミも良さそう。

2曲目は重厚なスローテンポで繰り広げられる一品。リフの音数が少なめな分、ここではDejana女史のヴォーカルが冴えます。デモのレビューでも書いてた気がしますが、前作”Sounds from a Dying World”で覚醒したその歌唱をもはや完全にモノにして見せたかの様。とりわけハイトーンのハスキー(?)な絞り出し具合が非常にメタリックで、アツイものを感じます。

続く3曲目はアメリカのVirgin Steeleのカヴァー。なのですが原曲全く知らず、ヒント無しの初聴きの時は、なんだかこれまでのClaymoreanのトーンとは大幅に異なる爽快感と軽快さあふれるメロディに、「これは新基軸か??」と驚きました。。。実際はカヴァーなのですが。爽快さと軽快さの点では、本作のハイライトのひとつと言って良さそうな輝きを放ってます。Dejana女史のヴォーカルの伸びやかさもお見事。

4曲目はズドンとスローに進行する重厚さが印象的。雰囲気は前作”Sounds from a Dying World”のエピックドゥーム的な感触を踏襲したものになるでしょうか。星の瞬く夜空の静寂と、篝火越しのほんのり呪術めいた歌唱は、一見(聴?)地味っぽい一方で、実はジワジワ来る味わい深いドラマティックさも合わせ持ってます。

前述の爆音ドラムスのバカスカ感がここで冴えわたる、アップテンポの5曲目。非常にマッチョな鋼鉄感が炸裂のパワーメタル。純粋に格好良く、熱い、絵に描いたようなヘヴィメタル感、でしょうか。ここではDejana女史のヴォーカルももはや屈強なヴァルキリーの様相。強く、美しい。

それから6曲目は再びスロー&重厚に、彼らの持ち味の一つであるドゥーミーな色合いが重苦しく展開してゆきます。それでいてメロディーは決して暗いものではなく、内なる炎が静かに揺らめく勇壮さが滲み出る渋さです。後半のギターソロも情感たっぷりエモーショナル。

7曲目は本作で一番の疾走感を持つ一品。と言ってもメロスピ程ではありませんが、パワーメタル的骨太感と、それをグイグイ押してゆく強靭なリズム、さらにサビでは空をかける様な高らかなメロディーが乱舞し、疾走感と共に、ドラマティックな高揚感がここでピークを打ちます。素敵にお見事。

 

そしてラスト8曲目はボーナストラックで、シングルとしてすでにリリースされた”Blood of the Dragon”の新録。これもスロー&重厚なドラマティックな曲で、ジワリジワリと盛り上がりを見せていく展開が渋い。個人的にはThe Elder Scrollsシリーズ、とりわけSkyrimのDragonbornのテーマあたりと重なるイメージです。

即効性よりも味わい深さが際立っていて、気づけば聴いてない時でもそのメロディーが頭の中をループしてるような、そんな魔力が封じ込められてますね。

 

前作”Sounds from a Dying World”は↓もご参考に

[レビュー]Claymorean – Sounds From Dying World(セルビア/フィーメイル・エピック・パワーメタル)

粒よりの好バランスの強力盤

さて、このような彼ら彼女らClaymoreanの待望の5thアルバム”Eulogy for the Gods”。通して聴くと確かに、前作で印象的だった終末的ドゥーミーさというか、陰りのあるエピックさを残しつつも、もう少しオーセンティックなヘヴィメタルの色合いに寄った感じがします。

前作の色合いを残したドゥーミー感を伴うスローな曲から、ヘヴィメタル的ドライブ感満載のアップテンポ曲、高揚感たっぷりの疾走曲まで、うまくバランスされた構成になってると思われます。

そして1曲1曲が(たぶん)粒よりの良質さで、少ない収録曲数ながら、それぞれがきちんと印象的で高品質。パッと聴き地味に聴こえる瞬間もあるかもですが、それでいて各曲のカラーははっきりしているので、聴いててダレることもなく、散漫にもならず、です。おかげでアルバム全体としてもかなりキャッチー。全体の構成もスッと入ってくる馴染みやすさ。

 

ただ個人的には、全8曲のうち、1曲がカバーで、3曲が先行デモとシングルからの曲ということで、なんだか喰い足りなさが残るのが正直なところ。待ちに待った待望の新作だけれど、完全な初見の感動みたいなものがやや薄かったのは、追っかけが過ぎて先行の音源たちを聴きすぎた自分が悪いのか。。。

そしてそれを喰い足りなさというのは贅沢すぎる不満でもあるのですが。

 

作を重ねて、Claymoreanとしての円熟味や安定感も発揮してみせる秀作。本ブログ的待望の新作は見事に彼ら自身の実力を封じ込めた強力盤といえるでしょう。お見事。

Amazon様↓
Claymorean – Eulogy for the Gods

参考にしたインタビュー記事↓

https://epicmetalblog.com/2021/07/04/interview-claymorean-part-i/

https://epicmetalblog.com/2021/07/06/interview-claymorean-part-ii/

https://www.femalefrontedpower.com/interviews/interview-dejana-garcevic/

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