[レビュー]BegUsToStop – LJ.D. S. G.V.N.(セルビア/デスメタル・グラインドコア)
- 2021.11.23
- セルビア
- BegUsToStop, Death Metal, Grindcore, Review, Serbia, グラインドコア, セルビア, デスメタル
セルビア出身のデスメタル・グラインドコアBegUsToStopの2ndフルアルバム。2021年作品。フランスのデス/グラインド系レーベルMeat 5000 Recordsからのリリースで500枚限定らしい。Bandcampで同レーベルからお取り寄せ。
関連情報
例によってMetal Archivesくらいしか情報源が見当たらない彼らBegUsToStopですが・・・
バンドの結成は2015年らしい。翌2016年にはEP”I Shit on This World”をリリース。こちらは彼らの公式Bandcampでデジタル音源が無料配布されてますね。
それから2019年には1stフルアルバム”Overdose Reality”をリリース。そして続く2ndアルバムが2021年の本作”LJ.D. S. G.V.N.”になります。
アルバムタイトルである、LJ.D.S.G.V.N. はなんだか謎めいてますが、セルビア語でLjudi su govnaになるそうで、英語ではPeople are shitと訳せるらしい。どこかの9人組を連想しそうなフレーズですね。。。
メンバーの編成というか移り変わりは不明な点も多いのですが、本作ではNebojša Đurković氏(ギター)、Damir Copić氏(ベース)、Milan Petković氏(ドラムス)の3人は1stアルバム時から在籍してる中心人物になるのかな。それから新しくフロントマンPavle Bojković氏(ヴォーカル・ギター)が加入しています。
Nebojša Đurković氏はセルビアのブラックメタル重鎮The Stoneの前身であるStone To Fleshや同じくブラックメタルBethorに在籍してたり、スラッシュ/デスのSoul In Cageでもベーシストとして活躍してる人物。
それからPavle Bojković氏はブラックメタルAura MortisやFlesh Cult、スラッシュメタルのRedenikなど多くのバンドでの活動してますね。
炸裂する細マッチョ系?エクストリーム
全体的には、ブルータルデスメタル~グラインドコアの間のどこか、みたいなバランスの音楽でしょうか。個人的にはブルデスの音と雰囲気&リフに、グラインドコアの刹那的構成のコンビみたいな印象です。実際収録曲の多くが2~3分台、長くて4分台というコンパクトさ。
その一方で、リフやリズムの切り替えは多彩なので、聴きごたえも十分。
音質はクリアかつ分離もよく、デスメタルらしいドロみをも越しつつも、余計な歪みを取り除いたスッキリ系。特にドラムスは、ブルデスにありそうなカンカンパコパコした、あの系統の硬い音で、ブラストビートもパパパッと決まってます。
前作は結構凶悪な血みどろ系グチャりファットな音作りで、それはそれで迫力満点だったので、かなり印象が変わって、こちらはタイトに締め上げてきた印象のブルデス/グラインドになりました。
不穏なイントロに続き本編の幕開けを飾る2曲目。デスメタルというかグラインド的なうねりを伴いながらも、要所ではハードコア風(?)な2ビート疾走も聴かせる幕開け。ストップ&ゴーな感触で行ったり来たりする展開がいい具合にキャッチーなツカミになってます。
ちょっと病的な響きのトレモロ&ブラストビートがかなりクールな3曲目。スタスタと2ビートで飛ばすパートも、なんだか低いグリグリ感で素敵。作中でもトップクラスのダイレクト感を持つ曲になりそうですが、小細工抜きのアグレッシブさが満載で素直にカッコいい。
続く4曲目もスタスタバシバシ飛ばしていきますが、ここではちょっとヒネくれた跳ね感のギターリフが印象的です。
薄暗いアルペジオ風単音リフの音階が不穏な5曲目。それと同じ音階のトレモロリフが要所で鳴ってる構成が地味に見事で、暗く、病的で、美しい。ずんずん迫るブラストビートの硬質な響きもスリリングで、本作で最も好きな曲の1つ。ここではどことなくブルデスの様な感触がする気もします。
7曲目、前のめりな3連のリズムとノリがお気に入り。中盤はグルーヴィなスローパートによる重苦しい雰囲気が支配的で、濁った殺風景さを描きます。そして再び曲冒頭の3連リズムが登場して・・・となかなか耳を引く展開。
8曲目は全編スローにジメジメ風に進行。このへんはデスメタル寄りというか、暴走一辺倒ではないコントラストの瞬間というか。
そして雰囲気は一変、スラッシュメタル的なタッチのギターリフも交えてスパスパ疾走するのが9曲目。
ラスト11曲目はどこかカラリとした雰囲気のドライブ感たっぷりの疾走。キメの変拍子&ギターリフはフックも満点。ここまで時には結構陰気な曲も多くありましたが、ここでの比較的スッキリした質感のおかげで、爽快にアルバムを聴き終えることができる、そんなシメの1曲。
安心の品質のブルデス/グラインド
ということで、なかなかいい感じのブルデス/グラインドコアを聴かせてくれる彼らBegUsToStop。2ndアルバムとなる本作でも、軽く及第点は超えてきそうなクオリティの作品になりました。
あえて触れるなら、まんべんなくソコソコ良い出来で、安定感もバッチリな作品なので、ココだ!っていうインパクトに欠ける気もするのが惜しいところなのかも。
何というか、普通に当たり前に良くて格好良い。とはいえこのバンドでなければならない何か、みたいなものはあんまり無い、みたいな。。。そんな贅沢。
たぶんなかなかのセンスのあるバンドのはずなので、例えば音楽的にも地理的にも近そうなブルガリアのEnthrallmentみたいに、継続的に作を重ねて進化を重ねて味わいも増していって欲しいもんです。
あとはなんとなく個人的には、ライブで見れたらメチャ楽しそうな予感。それこそセルビアで観たSacramental Bloodの時みたいに。
前作”Overdose Reality”は↓記事で紹介していますのであわせてどうぞ
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