[お知らせ]本ブログ発!ネットラジオ番組 ”WWHYH Radio Show” がはじまりました![Undergrand Radio]

メタルヘッドと読む『ドバール・ダン なおちゃんのユーゴスラビアへの旅』

メタルヘッドと読む『ドバール・ダン なおちゃんのユーゴスラビアへの旅』

ちょっと古くて素敵な絵本をゲットしました。

布コラージュと文・横倉文子  スケッチとエッセイ・中山豊子(1999)『ドバール・ダン なおちゃんのユーゴスラヴィアへの旅』窓社。

ユーゴスラビアでこんにちは

作者の横倉さんは、80年代に旧ユーゴスラビアのベオグラード(現在のセルビア)に滞在。この本は(おそらく)その時に製作が始まったようです。

お話の舞台は旧ユーゴスラビア。なおちゃんは初めて飛行機に乗って、ユーゴスラビアという国にやってきました。初めて見る町並みや、ほがらかな人々、素敵な文化。なおちゃんの楽しい旅のおなはしが、布コラージュの優しい色彩とタッチで描かれます。

タイトルの「ドバール・ダン」はこんにちはの意味で広く使われるあいさつ。Dovar danでたぶんGood Afternoonになるようですが、時間を問わず使われたりもするようです。あいさつの言葉はたしか他にも、ズドラーヴォ(Zdravo)やチャオ(Ćao)というのもあったと思います。

ちりばめられたバルカンの魅力

この絵本の全編にわたって、小さな主人公のなおちゃんの目を通して、ユーゴスラビアやバルカン地域の魅力がちりばめられています。

はっきりと名前が出てくるもの、文章の雰囲気に封じ込められているもの、暖かなイラストのちょっとした表現に見え隠れするものなど様々。

明記されてる都市は、現在のクロアチアの有名な都市ドブロブニク、セルビア北部の都市のノヴィ・サド、そしてボスニアの首都が置かれているサラエボ。特にサラエボはプリンツィプ橋(ラテン橋:第1次大戦のきっかけになった暗殺事件のあった場所)や、青空市場についてのやわらかな記述もあります。

青空市場にはパプリカやプラムが―。みたいな文は、さりげなくバルカンの食文化を映し出してます。パプリカはバルカン名物のアイバルの材料で、ほとんど国民食?のようなので。

 

アイバルについては↓記事もご参考に。

[バルカン実践!]バルカン名物 パプリカペースト・アイバル編[取り寄せてみた]

セルビア&ボスニアに行ったら絶対食べたいご当地グルメ11選 [ホンモノの味]

↑サラエボのページの一部。

↑サラエボ旧市街で撮った写真。なんとなく同じ雰囲気ですね?

 

ほかには、ネレトヴァ川にそって―。美しいめがねみたいな橋。という表現は、きっとボスニアの名所のひとつのモスタルの事。こんな風に、ちょっとした表現に各地の魅力が表現されています。

イラストのいくつかは、きっとセルビアの首都ベオグラードがモチーフでしょう。坂道にお店が並ぶ様子はきっとあの坂道で、背景に要塞?聖堂?の影が見える公園はたぶんカレメグダン公園。そんな風に、小さなご当地っぽさを見つけながら、素敵なコラージュ絵を眺めるのがとても楽しい。

↑石畳のにぎやかな通りはきっとスカダルリヤ通り?お店のキリル文字は「Suvenir」になるのかな。

 

ほかにも印象に残った表現をさらに見ていくと・・・

赤い小さな電車(トラムかな?)、ラキアでかんぱい、トルココーヒーのカップにカイマックチーズ。

おもわず頬が緩むような、バルカンのキーワードが1冊に凝縮されています。

 

小さななおちゃんの瞳を通して見る、ユーゴスラビア。どこかのメタルヘッドの旅行記(笑)よりも遥かにみずみずしく、きらきらとした感性にあふれた魅力でいっぱい。

 

その旅行記(笑)は↓記事などご参考に。

[ 聖地巡礼??]セルビア&ボスニアひとり旅~サラエボ編part1[メタルツアーも]

取り戻せない童心を思って

実はこの本を手に取ったきっかけというのは、ほとんど表紙の絵がすべてでした。いわゆるジャケ買いというやつです。

バルカン地域関連の本を探している時に偶然発見して、表紙の伝統衣装の女の子の絵の、独特の風合いというかナチュラルな色彩に一気に引き付けられました。

見るからに、単なる絵ではないことには気付きつつも、「切り絵かな?」くらいにしか思っていなかったのですが、それは実は布のコラージュ。確かによく見ると、生地の織り模様や、独特の色の濃淡が見て取れます。

同時に、コラージュならではの(良い意味での)絵の歪みがあって、まるでそれが、幼い少女の目に映ったユーゴスラビアそのものを表現してる様に感じられるのです。少し大げさ?でしょうか。

なんというか、幼い日のみずみずしい思い出を振り返るような、ノスタルジックでちょっとセンチメンタル感?あるいは大人になってからはもう取り戻すことの出来ない、童心というものを強く想起させる印象というか・・・。

なんだか抽象的な表現になってしまいますが、そんな風に思うとつい、この表紙から目が離せなってしまう、そんな魅力あふれる絵本。そしてひとたび本を開けば、かつてのユーゴスラビア、今ではクロアチアやボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビアなどのおだやかで素敵な風景に心奪われる、愛らしい1冊です。

 

Translate »