[レビュー]Destiny Potato – Lun(セルビア/フィーメイル・メタル/オルタナ)
セルビアの首都ベオグラード出身のフィーメイルメタルの1stアルバム。2014年作品。アルバムタイトル”LUN”は、インタビュー記事によると、Lunaticの略だそうです。
自分が買ったのは日本盤(中古^^;)・・・ということはもしかすると、このブログでこれまで書いてきた中で最もメジャーというか、知名度がある作品かもしれませんね。
すでにご存知の方からすると、”いまさら”感が凄いかも。。。
自分自身は、セルビアを含め、バルカン出身モノを探すようになるまでは全然このバンドの存在に気付いていなくて、CDゲットして初めてこのバンド周辺、いろいろ調べたりしてるところです。
なんでも中心人物でギタリストのDavid Maxim Micić氏は、Djent(ジェント?)なるギタースタイル界では名の知れた存在なんだそう・・・でいきなり自分は、Djentって何?って。。
1つ2つインタビュー探して読んだり、ググったりしてみたりしましたが、明確に記述できなさそうなので、すっとばすことにしましょう。たぶんテクニカル何とか系の、デ・デ・デデッデ・デぅ~ん云々、奇っ怪なリズムとダウンチューニング(多弦ギター?)サウンドがうねうねしてる感じの事なんではないかと、勝手に想像してますが・・・
さて、再生ボタンを押して聴こえてくるのは、どんな音世界、Djentワールド?なのでしょう。
・・・むむむ、コレは良いですよ?
自分は完全にフィーメイル(ゴシック)方面の耳で聴いてますが、
デジタルなコツコツ音からセンチメンタルなビアノのイントロに入って行く1曲目にちょっとわくわくしつつ、
キャッチー&ヘヴィなリフが一気に耳を釘付けにする2曲目”Indifferent”。一体なんと表現したらいいのか、’rollinな縦ノリテイストのリフが素晴らしいです。そして、Aleksandra Djelmas女氏の歌声にさらに驚き。たとえば元NightwishのAnette Olzonみたいな、あの感じをもう少しキュート&ポップ方向に振ったような歌声なのですが、なんというか絶妙に耳と心に引っかかります。歌メロもポップかつキャッチーなので、即効性も抜群。もし好みに合うなら一瞬で気に入るはず。
続く3曲目、”Take a Picture”。ちょっととぼけた感じの歌唱から始まり、続けて一気に重低音リフが炸裂。キュートな歌声とヘヴィリフのコントラストが際立つな、なんて油断してると一転、急に飛び出すAleksandraねーさんのグロウルボイスに度肝を抜かれます。さらにさらに転じて、再びクリーンボイスのサビ(?)に入ると、一気に風景がカラフルに変わるという・・・。
凄いなこの人達。。。
グロウルというかスクリームに関しては、Arch Enemyとかで聴きなれた感じの、女性がやってるそれの系統と同じと言って良さそうです。
ヘヴィリフ、キャッチーでキュートなクリーン歌唱、時々切り込むグロウルボイス、ポップな味付け?アレンジ?、いろいろな要素が絶妙なコントラストを見せながら配置されてるので、驚きつつもぐいぐいと曲に引き込まれてくようです。
なんというか、Slipknot meets Evanescenceみたいな感じというか・・・
ポップ+ヘヴィな感触は昔1stだけ聴いたFlyleafを思い起こさせたり。。
Aleksandra女氏はインタビューで、Corey Taylorのクリーンとグロウルを使い分けるスタイルを大好きと言っているので、Slipknot meets Evanescenceと書いたのもあながち間違ってないのかも。また、昔はジャズを歌ってたこともあったけど、自身ジャズは大嫌いで、歌は基本的に自身で学んできたんだそうです。
さて、曲は続いて、きっと本作のハイライトのひとつになりそうな5曲目、その名も”Love Song“。普通にヘヴィポップなのかと思いきや、急にブラストして驚かせて見たり、楽器隊が黙って可愛らしい電子音でメルヘンワールドになったと思ったら、聴こえる歌声が、”Screw you,Fxxk you. I hate you” で・・・><
ラブソングじゃないのかよとツッコミそうですが、インタビュー記事によると、この曲では愛する一方の憎しみの様なものを歌ってるんだそうですね。
そして個人的に一番ツボだったのが、7曲目”Wall of Thoughts“。これは本作の中にあって一番ストレートにポップというか、いわゆるフィーメイル・ゴシックとかあのあたりのテイストを持つ曲です。自分は完全にHeart of EverythingのころあたりのWithin Temptationに聴こえます、良い意味で。セルビアからのメロウな風が吹くようです。。。
他にも、アコーディオンの音色でちょっとバルカンフォーク風なアレンジを効かせた曲があったり、本編のラスト曲ではたぶん一番Djentっぷりを発揮させてたりと(この曲はちょっとIwrestledabearonceっぽく聴こえるかな?)、非常に多彩で飽きさせない内容になってますね。これでとっちらかってない、まとまりのよさがあるのも見事だと思います。
このあたりは、さすが日本盤が出てるだけのことはあって、きっとそれに見合ったクオリティの作品という事で良いのでしょう。
その国内盤には3曲ボーナストラックが入ってて、そのアレンジも興味深いのですが・・・
ラストの完全デジタルピコピコ仕様のアレンジは駄目です自分。これだけは聴く気がしません自分。ここだけは切り取って下水に流してどうぞ。。。
・・・という事でとても楽しめる作品でした。セルビアというと音楽の産地としては辺境っぽく感じられがちですが、非常に洗練させた音作りという事もあって、露出の展開によってはもっと話題になってもおかしくない出来だと思います。きっといろんなタイプの音楽好きに受け入れられそうな気がします。
参考にした記事↓
http://www.soniccathedral.com/zine/index.php/band-interviews/472-Destiny%20Potato%20Interview
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