[レビュー]Winterfront – Northwinds(クロアチア/ペイガン・ブラックメタル)
クロアチアの古都、Trogir(トロギル)出身のペイガン・ブラックメタルWinterfrontの1stアルバム。2014年作品。
いかにもペイガンブラックという感じの森と霧ジャケ、しかも白黒、というのが本作の何たるかを表してるようですね、なんとなく。
周辺情報的なもの
彼らの出身地であるTrogir(トロギル)ですが、クロアチアの事はあんまり分ってないので調べてみると、なんでも、アドリア海に面する古都で、世界遺産にも登録されてるんだそうです。
いつもの例にもれず、ほとんどバンド関連情報見つけられなかったので、Metal Archives頼みになるのですが・・・
そのトロギルで2010年にSorr氏(ギター、ベース、ドラムス)とTertt氏(ヴォーカル、キーボード、ギター)の2人で結成以降、デモ・EP・シングルをリリースしています。そしてそれらに続く1stアルバムが本作Northwindsになります。
本作ではベーシストにMutilator氏、ドラムスにHell氏を迎え、フルラインナップが揃っていますね。ブックレットの写真ではコープスペイントもバッチリ決まってます。
収録曲は本作以前のデモやEPに収録されたものがほとんどのようで、録音は不明ですが曲に関しては本作Northwindsを聴けば一通り耳に出来るといって良さそうです。
本作リリースと同じ2014年にはまた、新たにEPもリリースされているみたいなのですが、残念ながらそちらは未聴。
第1印象はとにかくチープ。でもメロディーはなかなか
さて、このNorthwindsアルバムですが、全体を通して結構メロディアスで、ペイガン的勇壮さ漂う曲展開がなかなかドラマティックかなと思いきや、(たぶん)音作りがチープなせいであんまり伝わらないという、マイナーものならではの事態に陥ってる気がしてならない作品。
その音質ですが、全体としてはクリアで、何やってるか不明という事はないのですが、残念ながら各パートの音作り(だと思う)がチープというか、音圧が全然ない感じというか・・・
個人的にはギターサウンドは良さげなメロディー弾いてる分ショボい割に大丈夫でしたが、特にドラムの音は、残念過ぎると言わざるを得ないのかな。演奏自体怪しいというか、速いパートではグダグダになってるように聴こえるうえに、このパサパサ?ペチャペチャ?したドラムサウンドは・・・うーん。
おかげで、”まぁなんかメロディーのあるペイガンブラックみたいな感じだねー。ふーん。”で終わりそうな印象になってしまいます。
自然系?神話系?ペイガンブラック
いきなりネガティブな表現から入ってしまいましたが、ここまでにしましょう。じっくり聴けば、いいところも結構あるのです、たぶん。
これまで触れたように、音質のせいで魅力を損なってるように感じられる点も結構あるのですが、曲そのものはなかなかよく出来てるんではないかと思います。
ショパンの葬送行進曲のあのメロディーで本作の幕開けを告げる1曲目。ドゥーミーな感じで進行した後はちょっと勇ましいリフで進んでいきます。2分半ほどの比較的短い曲で、きっと本作のイントロ的に位置づけられているのではないかと思うのですが、さっそくギャアギャア喚き系のVoが全力で噛みついてきます。なかなか気合入ってます。
続く2曲目はおよそ8分におよぶドラマティックな曲。これまで触れた様に音質のせいでややパッとしない曲に聴こえてしまいそうなのですが、よくよく聴くとこれぞペイガンもの、と唸ってしまいそうないい意味で臭みのあるメロディが満載。中盤のリフは昔のBURZUMっぽいところも。しっかりブラストビートも入れてくれてるのですが、ドラムの音がショボくて迫力に欠けるのが残念。
続いて印象的なのは4曲目。冒頭から、叩けてるか怪しい全開ブラストビートに乗せて、ちょっと寂しげなトレモロメロディーが曲を引っ張ります。そのあとは朗々とクリーンヴォーカルが登場。この辺はペイガンブラックのお約束、でしょうか。
曲構成は似てるかもしれませんが、続く5曲目も冒頭からのブラストビート+ヒロイックなメロディーがなかなかカッコ良さげです。メロディーにはペイガン風の臭みが・・・と書きましたが、それでもキラキラクサメロとは違って、そんなに甘くないと思います。
タイトルトラックでもある6曲目のイントロのメロディアスなリフというかメロディは、凍てつくような雰囲気をよく表してる気がします。まさにNorthwinds。トレモロブリザード系の表現とは違いますが、こちらはなんというか吹雪いてはいないけど、風が身を切るほど冷たい様な・・・。
ブラストビートを使って疾走するパートもありますが、ミドルテンポで聴かせる割合も多めで、なおかつそういったミドルパートの方が耳を引きやすい気がするので、殺戮系とかバトル系?ペイガンというよりは、自然とか神話系?な雰囲気だと思います。
スルメのごとく
個人的には、ペイガン・ブラックの持つイメージのど真ん中を行く、悪くない作品だと思います。
冷静に見れば、メロディーは結構あるけど洗練されてないとか、音がチープとか演奏がショボイとか、あれこれ批判するのは簡単なのですが、そういう点こそがどうも、本作のペイガン風味を引き立ててるような気がしてならないのです。
正直なところ、本作聴いての第一印象は、なんかあんまり取るに足らない感じの、ポンコツっぽいブラックメタルかなぁなんて思ってたんですが・・・
いや、大枠ではこれも正しいと思います。人によってはポンコツ呼ばわりした方が印象としてしっくりくるという方もいらっしゃるでしょう。
ただやはり個人的には、本記事の準備にあたって、繰り返して聴けば聴くほど、やっぱりどこか引っかかる作品でした。バルカン補正かは、これについては(真面目に)分かりませんが、初聴きの印象と、今現在の印象は、いい意味で結構違うと言わざるを得ません。
それが何故かというと、やっぱりよく分からないのですが、聴き込むうち理解が進んで・・・それからその音楽の魅力に気づく、というのはありますよね、特にブラックメタルでも。
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