[レビュー]War-Head – ..Still No Signs of Armageddon (クロアチア/デスメタル)
クロアチア出身の3人組デスメタル、War-Headの2ndフルアルバム。2011年作品。イギリスのDenim&Leather Rocordsなるレーベルからのリリースで、中古で出てるのを発見してゲットした品。
関連情報
あんまり情報の見当たらないこのWar-Headですが、バンド公式Facebookページによると、オールドスクールスラッシュとデスメタルの組み合わせでのデスラッシュを標榜しています。
バンドの結成は2002年。2003年と2004年にはそれぞれデモをリリースしていて、そのレコーディングはバルカンメタル界の超重要人物Honza Kapák氏が所有するHellsound Studioで行われたそうです。このHonza氏はセルビアのブラックメタルBaneやThe Stone等々、数々の作品に様々な役割で関わっていて、このWar-Headともつながりがあったことには驚きです。
2008年には自主リリースで1stアルバム”No Signs of Armageddon”を発表しましたが、その配給は主に旧ユーゴスラヴィア地域のみにとどまっていたようです。
そして2011年に本作”..Still No Signs of Armageddon”がリリース。レーベルからの公式リリースは本作が初なので、本作が事実上の1stフルと考えることもできそうです。
この”..Still No Signs of Armageddon”なるアルバムタイトルが気になったのでMetal Archivesで収録曲を見ると、収録曲は2008年の”No Signs of Armageddon”と同じ。一方で録音は異なることから、同内容のリレコーディングと思われます。
本作のメンバー編成を見ると、おそらく結成メンバーと思われるDario Turčan氏(ヴォーカル・ベース)とVladimir Sužnjević氏(ギター)の2人と、Eldar “Piper” Ibrahimovic氏(ドラムス)という3人編成。Metal Archivesによると、Vladimir Sužnjević氏は一時、ブラジルのあのVulcanoのライブメンバーとして参加していたらしい。
このトリオ編成は、後に続くアルバム2作品でも変わらずで、同ラインナップで2014年と2019年にそれぞれ3rd、4thアルバムをリリースしています(・・・が未聴)。
本編 ー マシナリーな破壊音
バンド自身はその音楽性をデスラッシュと称していますが、本作を聴いたところの印象はあんまりスラッシュ味を感じない、どちらかというとカッチリと硬質なデスメタル。
楽器それぞれの音質がかなりクリアで輪郭のはっきりした質感に、その分離も随分はっきりしていて、聴いててだいぶ硬質で冷徹な肌触りの音が鳴ってます。
個人的にはそんな音色で鳴ってるオールドスクール系のデスメタルと捉えてますが、曲調というか雰囲気は何故かCarcassのNecroticismアルバムを思い起こします。なんだろう、スピード感や炸裂感は抑え目の、パッと聴きやや地味目なデスメタルという個人的なイメージ(思い込み?)と重なるのです。
ズドンと重厚なイントロから幕を開ける1曲目。どちらかというとなんだか重苦しい雰囲気が支配的な曲調ですが、「Attaaaaaaaaack!!」とか「We are War-head!!」といったDario Turčan氏の雄叫びが印象的。上の方でCarcassっぽいって書いたのは、このヴォーカルの濁った爬虫類風の響きに引っ張られてるからかも知れません。曲後半でちょっと飛び出すカドの立ったブラストビートは重火器掃射のイメージ、でしょうか。
続く2曲目はギターリフのハンマリング(のはず)のウネリがなんだか冷笑的で不気味。ここでは少しスピードを上げてスタスタと疾走する場面も。リフだったり曲構成なんかは、割とダイレクトというか、ブルデスみたいに目の回るせわしなさやドロドロ感は感じません。マシナリーな冷たい殺人機械系ですね。
3曲目もなんかCarcassで聴いたような気がする雰囲気の曲。ミドルテンポでやや地味目に冷徹で重苦しいデスメタルが繰り出されます。
そして本作のハイライトの1つとも言えそうな、ある種のキャッチーさというか不思議な歌心を持つイントロに導かれる4曲目。独特のグルーヴ感が漂う横ノリ(?)リフから一転、ドカスカと疾走して見せるギャップは、シリアスとコミカルを行ったり来たり。曲後半のブレイクの後、ドラムソロから、ベースラインが重なり、ギターのメインリフが登場する構成がなんだかダンサブルで耳を引きます。
高速2ビートからブラストビートと、本作中でも屈指の炸裂感を放つ5曲目。ところどころで不穏なスローパートも挟みつつ進行していきますが、曲後半のブラストビート連射はまさに機銃掃射の如し、でなんだかワクワクしそうです。
なんだかどこかで聴いたような気がするのに思い出せない(泣)ギターリフがジワジワと迫りくる7曲目は・・・その後打ち鳴らされる本作最高速のブラストビートがクールです。硬くキレのあるスネアドラムの音作りのおかげで、ズババババ・・・と、その空気を切り裂く衝撃波は鉄筋のビルをも破壊するまさに核弾頭。。。というのは言い過ぎ?
そしてラストの8曲目は曲全編に渡って疾走感みなぎる一品。ギターリフに重苦しい刻みが多い(気がする)本作の中ではちょっと異色気味の、ちょっとメロディアス感さえ漂うトレモロリフと高速2ビートが印象的です。全体的に地味目でスピード感も抑え目な本作ですが、ここではリミッターも完全解除、バシバシと打ち鳴らされるドラムスのビートはさながらソニックブームの様相。
個人的にはここでようやく、「キタキタ!」なんてほくそ笑んだりしてたのですが、本作はここでおしまい。なんとも言えない後味です。
硬質なスルメ系
全体的にはやや地味目な曲構成ながら、かなり硬質な楽器隊の響きが無慈悲さを冷たく伝える作品のように思います。その中で時折見せる炸裂感は意外と強力。
流して聴いてるとあんまり曲のアグレッシブさには耳がいかないのですが、レビューに当たって改めて聴いてみると案外アグレッシブなパートもちりばめられてるのに気づきます。
総じていえばどちらかというと即効性というよりは、聴き込むほどに味が出そうなスルメ系?個人的には、ここまで硬質で冷たい響きの音のデスメタルってあんまり知らないので、その意味では結構面白いアルバムでした。
彼ら自身の言う、”デスラッシュ”味というのは正直本作中ではあまり感じませんでしたが、後に続くアルバム達にはそんな雰囲気も現れてくるのでしょうか。。この感じでよりスラッシーに進化しているとしたら、なかなか面白いことになりそうですが、果たして。そんな期待もしつつ音源探しもしたくなる作品でした。
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