[レビュー]Necro Forest – Absence of Light (クロアチア/ブラックメタル)
- 2021.02.05
- クロアチア
- Black Metal, Croatia, Necro Forest, Review, クロアチア, ブラックメタル
クロアチア出身のRawブラックメタル、Necro Forestの2012年の6曲入りデモ音源にしてデビュー作。バルカン地域のアンダーグラウンドのバンド達の作品を数多くリリースしてる、セルビアの名レーベルGrim Reaper Records盤。手書き番号入りでした。自分のは30/50になってます。
関連情報
バンドのスタートは2012年。最初は仕掛け人であるLycanthrop氏の一人ブラックとして始動しています。その後Niteris Cultum氏をメンバーに加えて、1stデモである本作”Absence of Light”をリリースしました。
CD盤には明確な記載はないのですが、Metal Archivesによるとパートの分担はLycanthrop氏がドラムス以外全て、Niteris Cultum氏がドラムプログラミング、ということになっています。
それから、発見したインタビュー記事によると、歌詞のテーマは主にスラヴのペイガニズムと歴史、キリスト教への宣戦布告と、狼男伝説といったものが中心になってるそう。調べてみるとLycanthrop、というかlycanthropyというワードが、狼つきや狼狂を示すワードということなんですね。
本デモの後はいくつかのスプリット盤などをリリースした後、2015年に1stフルアルバムをリリースしています。また、その後もバンドメンバーを増強しつつ、スプリット盤を中心にリリースを続け現在に至っています。・・・が今のところ他の音源は未聴。。。
狼狂によるRawブラック
ということで、Necro Forestというバンド名からしても、香しいブラックメタルの予感が漂ってきそうですがその音像は果たして・・・。
1曲目は、静寂の中狼の遠吠えがこだまするイントロ。昔聴いてたHate Forestの音源(狼イントロはScythiaだっけ?)を思い出したりして、勝手にワクワクがつのります。
そしてザラザラとノイジーなトレモロリフで一気にRawブラックメタルになだれ込む2曲目。そのノイズの粒感は例えばDarkthroneの名作“Under a Funeral Moon”を連想させる地下音源そのものなのですが・・・ワクワクは実はここまで。打ち込みのドラムスが入った途端にギターとドラムスのリズムがバラバラに崩壊。その意味ではある種凶悪とも言えなくもないのですが、リズムが意味不明で個人的にはズッコケました><
気だるい感じ、というかヨレヨレの冒頭のリフから、これまたリズムとリフがハチャメチャっぽい3曲目。ヴォーカルは金切り声の絶叫でわめき散らしてて、なんだか凶悪でカッコイイんだか単にポンコツなだけなのか訳が分からなくなってきそう。ブラックメタルにおいてはイカレてるのが正義、とするならば、結構な高得点が出そうです。
そして4曲目は、録音が違うのか、音質は前の2曲に比べマイルドに。リズムの方ももうちょっと合ってる気がする1曲。いややっぱりリズムは気のせい?なんて随分混乱させられます。曲の中盤ではちょっとデプレっぽい陰鬱さとうめき声で薄気味悪さを出してます。
続く5曲目ではまたザラザラとノイジーな音に逆戻り。途中からはヤケクソ気味な高速ブラストビートも飛び出したりしてちょっと驚きますが、基本耳に付くのはザーザー言ってて何やってるか不鮮明なギターのノイジーさと、ドカドカ鳴ってる、テンポ合ってるか謎なドラムスに、ギャーギャーうるせえヴォーカル。。。
そしてラスト6曲目は、雷鳴とそれに続く雨音にほわんとしたシンセの音が重なる不吉なアウトロ。ネクロな森といえばそんな雰囲気とも取れそうな一品です。
クロアチアの森
・・・と、聴いててなんだか、凶悪で騒々しいまさにRawなブラックメタルな本作ですが、さすがにつくりは粗削りにすぎる、といったところになるでしょうか。好き嫌いはともかく、個人的にはやりたいことやればいいんじゃない?って思うので、これはこういう作品ということで聴いてました。
ブラックメタルは何でもあり、と断じていいのかは分かりませんが、割とパーソナルなものであるという気もしてるので、インタビュー記事中で、”Our music is our feelings, our way of thinking and our way of life. We live for metal music.”と語ってる通り、Lycanthrop氏が表現するとこうなる、ということの表れなのでしょう、きっと。
あとは、Forestつながりか分かりませんがこの作品聴いてて、もしかして案外惜しいところまで来てるんじゃないかという、希望的観測について。
ウクライナのHate Forestの作品たちが、不鮮明な中にギリギリ捉えられるバランス感覚で、渦巻く怨念を見事に封じ込めてるのを、Necro Forestの本デモを聴いて思い起こしたりするのです。というのも、彼らNecro Forestもあともうちょっとしたバランスの取り方でHate Forestみたいな恐るべきブラックメタルに肉薄できたんではないか、みたいな。
実際のところ両者には比較にもならない違いがあるのは否定できませんが、なんとなくその構成に近いものを感じなくもない気もするのです。
いやまぁ、筆者の個人的な印象ということで。実際には良くも悪くも、ノイジーな狂気で塗り固められた、ネクロなアングラ音源に違いないでしょう。
参考にしたインタビュー記事は↓でどうぞ。
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