[レビュー]War Atrocities – Necromantical Legions (クロアチア/ブラックメタル)
- 2021.03.13
- クロアチア
- Black Metal, Review, Serbia, Thrash Metal, War Atrocities, クロアチア, スラッシュメタル, ブラックメタル
クロアチア出身の(たぶん)一人ブラック・スラッシュメタル、War Atrocitiesの7曲入りEP。2015年作品。ドイツのWitches Brewというレーベルからのリリースですが、現在は閉鎖してるのかな。手書きナンバリング入り700枚の限定だそうで、自分のは23/700になってます。
関連情報
もはや例の如く、関連情報に乏しい中であれこれまとめていかねばなりませんが・・・
Metal Archivesによればバンドの結成は2011年。仕掛け人であるWastelanderなる人物によって始動しました。2014年にはデモ”Intöxicated Madness”をリリースしていて、ここではWastelander氏が全てを手掛けてます。
この記事書きつつ調べものしてて初めて気付いたのですが、このデモ音源はバンド公式Bnadcampでフリーでダウンロード出来るようになっています。皆で聴きましょう。今のところ未聴ですが追って紹介できたらと思います。
そして翌2015年にリリースされたEPが本作”Necromantical Legions”になります。本作でもギターをはじめ楽器の多くをWastelander氏が手掛けてますが、ベース担当として、同郷のブラック・スラッシュArmatusやKrucificadores(いずれも未聴)のNesveti Alkar氏がゲスト参加しています。ドラムスについては明記されていないので不明。
古き良き香りの復古
斧と剣って得物のカバーアートのイメージからして、勝手に爆裂撲殺系というか、ウォーブラック(あんまり詳しくないですが)あたりの音を想像してたのですが・・・
実際聴いてみると完全に昔のCeltic FrostやHellhammer崇拝してそうな、オールドスクールな香り満載の野蛮系ブラック・スラッシュのあの感じ。あとはところどころにBathoryみたいな陰気な洞窟感?でしょうか。
ということで、スラッシーなキレとか攻撃性というよりは、ちょっと湿り気のある黒塗れのカルト風味が香る作風です。
音質の感じはクリアで分離も良く、打ち込みかも?なドラムスの音も不自然さは全然ないので、聴いてて非常にスッキリした耳あたり。それでいてギターのほんのりエッジが濁った感じが、いい具合にノスタルジックという、現代に蘇った80’sサウンドな趣が素敵です。
真っ暗な中で怪しい何かがうごめていてる、ダンジョンシンセ風のイントロが幕開けを告げる1曲目。これは同郷のクロアチアのブラックCidiumやGrobのDuje Pelaić氏の手によるもの。
続けて、眠れる邪悪を呼び起こす鐘の音から、闇の饗宴が始まる2曲目。ちょともこもこしたギターのトーンや、程よく間のある刻み、ドラムスのテンポ等、かなりCeltic Frost風。聴いた時はこの感触に思わずニヤリ。
スプラッシュ(でいいのかな?)シンバル連打で、「ダダダダーン」とスタートの3曲目。この曲のリフは昔のBathory風かな。オーセンティックなメタルリフ&テンポですが、1stウェイヴの頃みたいな(?)色彩で黒くなってるのが素敵。複雑すぎない、よく言えばプリミティブなノリが心地よく、ノスタルジックささえ香りそう。
続く4曲目はスラッシュというよりはブラック’n’ロール風な感触でしょうか。アクレッシブさは控えめですが、なんだか程よく心地よいノリが美味です。
ここで鈍器撲殺風の破壊力を発揮する突撃チューンが炸裂する5曲目。やっぱりギターリフの端々にCeltic Frostみたいな所も感じるのですが、それがもはや鉄板の格好良さを演出するという事で、まる。後半では一瞬ヤケクソ気味のブラストビートも飛び出したりして、なかなかスリリング。
ラスト7曲目はBathoryの1stアルバムから、”Armageddon”のカヴァー。なのですが、楽器のトーンが結構違うので、この記事まとめるまで気付きませんでした(汗)。なんだかこれまでの曲たちと雰囲気違うなとは感じましたが・・・
いいにおいのブラッケンロー
さてこのWar Atrocities、やってることはまんまオールドスクールで聴く者によっては非常に懐かしさを感じそうなブラック・スラッシュ。その点で言えば目新しさは全く無いので、こういうの欲しいなら黙って本家のCeltic FrostとかHellhammer、あるいはBathoryでも聴いてりゃいいじゃん、なんてことにもなりそうですが・・・
さらにはその意味で既視感ならぬ既聴感(?)満載の本作”Necromantical Legions”なので、聴いてて「あぁCeltic Frost方面の感じね」なんて納得してしまうと、細かなディティールを聴き逃しそうになる感が否めない><
とはいえ聴いてると非常に味のある雰囲気を運んでくる作品なので、ブラック、スラッシュ、時々ロケンローなBGMみたいに流してると、その空間にとってもいい香りが広がります。
あとは全7曲28分程の再生時間のEPになりますが、あんまり食い足りなさも感じず、個人的にはフルアルバムと同じ感覚で聴けて、かつ食傷気味にもならずといういい塩梅。ほら「EPって曲数少ないしスルーでいいか」ってなりそうなフォーマットな気がしますが(自分だけ?)、これはそんなこと言わず普通にチェックリスト&再生リストに入れてブン回してその香りと味わいをエンジョイしたい一品。
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