[レビュー]Omega Lithium – Dreams in Formaline (クロアチア/フィーメイル・インダストリアル・ゴシック)
- 2021.03.23
- クロアチア
- Croatia, Female, Gothic Metal, Industrial Metal, Omega Lithium, Review, インダストリアルメタル, クロアチア, ゴシックメタル
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クロアチアのフィーメイル・インダストリアル・ゴシックOmega Lithiumの1stフルアルバム。2009年作品で、ゲットしたのは翌2010年にボーナストラック入りで再発されたたぶん北米盤。
・・・なのですが、アレ?ジャケ絵のカードが入ってるだけで、ブックレットが入ってない。コンディション無視で中古で買ったのでアレですが、クレジット関係見れないのはちょっとイタい。
関連情報
フィーメイルゴシック・インダストリアルという、ジャンル的にも比較的メジャー(?)なジャンルだけあって、インタビュー記事もいくつか発見できたので、そのあたりも参考にしながら、関連情報を見てみましょう。ブックレットがないので、ネット情報が頼りです。
インタビュー記事によると、バンドの結成は2007年にさかのぼります。Malice Rime氏(ギター・シンセサイザー)が、親しい友人であるZoltan Harpax氏(ベース)、Torsten Nihill氏(ドラムス)の2人に声をかけるところからスタートしたようです。この頃にはAndrea Zuppaniなる女性シンガーが在籍してた模様。バンド名であるOmega Lithiumというのバンド名はその頃に決まったらしい。
それから2008年に女性シンガーのMya Mortensen女史が加入。インタビューの時系列からするとMya女史は加入当時18歳という若さだったようです。ここで本作”Dreams in Formaline”のラインナップが完成します。
バンド名に関しては、「Omega」はギリシャ文字の最後の文字であること、「Lithium」はいわゆる向精神薬として使われることから、合わせて人類を治療する最後の薬という意味合いになるんだそう。
Wikipedeiaでディスゴグラフィーをみると、デビュー作品は2007年のEPということになってますね。そしてそれに続くのが1stフルである本作”Dreams in Formaline”になります。それから2011年には2ndアルバム”Kinetik”がリリースされています。
ホルマリン漬けの夢
バンド自身のインタビューの言葉を借りると、彼らのサウンドは、エレクトロなバックグラウンドにアグレッシブなギターリフを載せで、それらをゴシックのタッチでまとめ上げたもの。実際聴いててまさに言葉通りの音像です。
影響を受けたバンドとしてはRammsteinやNine Inch Nails、Type O Negative、Ministryなどを挙げる彼らですが、リスナーからの比較対象としてはLacuna CoilとかDeathstarsなども挙げられてるみたい。筆者の分かる範囲では確かに、女性Voとコンパクトな楽曲の分かりやすさや、メロディーの取っつきやすさなんかはLacuna Coil、そしてやや陰鬱でミステリアスな冷やりとした空気感なんかがDeathstarsのような感じも。
印象的な曲を拾ってみると・・・
インダストリアルらしいデジタル感を満載にして、ちょっと陰鬱に幕開けを告げる1曲目。Mya女史のヴォーカルは低めのトーンの歌声で、クールビューティ風でしょうか。楽器隊のサウンドに負けない堂々たるサイバー空間の語り部って感じで、サビではある種の神々しささえ放ちます。
硬質なギターリフと電子音が冷たく響く2曲目。どこか暗い水面に浮かぶような仄暗いミステリアスさです。曲自体のインパクトはたぶんやや薄めな気もしますが、その淡さと繊細なモノトーンの色彩がゴシック風味。
・・・と思うと、続く3曲目はよりゴシック・ロマンス的耽美感の装飾に彩られた一品が登場。冷酷な重量感のギターリフと冷たいピアノの音色、忍び寄る不穏さの歌メロが織りなすそれは、さながら身も凍る悲劇と、断頭台の鈍い輝きのイメージ、といったところでしょうか。
SFチックな電子音と、跳ねるようなテンポが印象的な5曲目。本作中でもたぶん最もキャッチーな部類に入る曲といえそうです。キャッチーとはいえ、ポップな甘さではなく、ほんのりニヒリスティックな冷ややかさを保ってるのがOmega Lithiumの色彩感覚でしょう。”アーンドロメダぁ~”の歌唱が妙に耳に残ります。おそらく本作中で聴けるインダストリアル・メタル要素のハイライトのひとつ。
そして必殺のゴシック・フェアリーテール7曲目。このアルバム中での一番のお気に入り。タン・タン・タンと叩きつけるように打ち鳴らされるピアノの音色の鮮烈さといったら!そしてそれに追い打ちをかける分厚いギターの音が、ズドーン。ピアノの繊細さとギターの狂暴性のコントラストに滲む鮮血の狂気がお見事。ワルツのリズムで酔いしれましょう。ゴシックの色彩のピークを打つのがこの曲かな。
・・・さて。ここまで聴いてると、以降の曲たちは大体、こういった印象の通りで、そろそろ満腹になってくるというか、なんだか惰性で聴いてるだけになってきます。自分の耳では。その点ではMya女史のヴォーカルもやや単調に聴こえなくもない。
逆に言えばそれこそが、アルバムの最後まで品質感や色合いの良さを保ってるってことの証とも言えそうではありますが。。。曲それぞれのクオリティのばらつきは(たぶん)少ないし、音作りも洗練されてるので、雰囲気は実際結構いい感じで、テキトーに流しててもなんとなく割とおしゃれ?
目覚めて殺伐インダストリアル
・・・あれこれ書きつつも懺悔すると実は筆者、インダストリアル方面のエレクトロ感がどちらかというとニガテなんですが。。。
それでも、とりわけ歌メロはユーロロック・メタルらしい滑らかさと肌触りだし、エレクトロ感もそこまでドギツくない(と思う)ので、自分みたいにインダストリアルに疎くても結構聴けます。例えば自分なんかはどちらかというとフィーメイルモノというアプローチで聴いてた気がしますが、そんな風にフィーメイル・ゴシック方面の作品としてもイケそうな間口の広さもあるといって良さそうです。
割と即効性の高いサウンドで一発目からその音楽性をつかみやすいのが強みですが、一方でそのある種のキャッチーさが、賞味期限というか耐用年数の短さをうっすら予感させてる気もします。
インダストリアル、って言葉に絡めていいのか分かりませんが、大量生産&大量消費される音楽の一つで、しばらくは聴く者を魅了しつつも、「次」が現れれば見向きもされなくなる、そんな移り気で殺伐とした何か。
なんだか何書いてるのか分かんなくなってきそうですが、そのへんにどうも、時代を超える愛聴盤にはなり切れない香りを感じるのです。。。
という事で、興味あるみんなで聴いて、末永く愛してあげたい1枚。
Omega Lithium – Dreams in Formaline
参考にした記事たち↓
Omega Lithium – September 2009 Reflection of Darkness
Omega Lithium Interview – Sonic Cathedral
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