[レビュー]Axecutor – Aggressive Extermination(ブルガリア/スラッシュメタル)
ブルガリアの首都ソフィア出身のオールドスクール・スラッシュAxecutorの2014年のEP。バルカン地域の良スラッシュ勢をいくつも手掛けるStormspell Recordsからのリリース。
関連情報
相変わらず本ブログでご紹介するバンド達って、情報源に乏しいことが非常に多いのですが、このAxecutorも例にもれず・・・Metal Archives頼りになりそうです。
バンドの結成は2010年。2012年にはデモ”Speed Metal Assault”を発表しています。それに続くのが2014年のEPである本作”Aggressive Extermination”になります。
この頃のバンド編成はTedo “Tormentor”氏(ベース)、Dzhadzhev “Witcher”(ギター)、Naso “Enforcer”(ギター)、Vidas氏(ドラムス)、Blasphemer Panzer氏(ヴォーカル)という5人。
YouTubeには2015年のフルセットのライブ映像があって、本作の曲はもちろん、貴重なデモ音源からの曲も聴くことが出来ます。↓
この後の彼らの足取りの詳細は不明なのですが、Metal Archivesによると現在のラインナップは、初期メンバーのTedo “Tormentor”氏と、Catacombs氏(ドラムス)、S.H.氏(ギター)というトリオ編成になっているようです。
新加入のCatacombs氏とS.H.氏は、本ブログでも紹介した同郷ブルガリアのデス/ブラックPlagueのメンバーです。Plagueの方は確かに結構スラッシーな要素も多い音楽性だったので、その点では違和感の無い納得の編成と言えるかも知れません。
本記事執筆時点ではこのEP”Aggressive Extermination”が彼らの最新作ですが、新編成での彼らAxecutorの音楽がどんなものになるかも、期待したいところですね。
Catacombs氏とS.H.氏によるブラック/デスPlagueは↓記事で紹介しています。
良い香りのオールドスクール邪悪系
さて、CDにはRaw Oldschool European Thrash Metalと表現されてる彼らAxecutorですが、その音は果たして何を伝えてくるのでしょうか。
ジワジワと薄気味悪く恐怖を掻き立てるギターのイントロから導かれる1曲目。一気にスラッシュメタルになだれ込む瞬間は、そのギターのトーンやドラムス&ベースのドスンと厚みのある響きがなんだかとってもSlayer。“War Ensemble”の冒頭のキメのドン!ドン!のあの感じ?個人的にはそれすなわち超格好良いという事を意味しますが・・・
2曲目はこれまたSlayerみたいな邪悪系トレモロリフ&高速2ビートで炸裂します。ここではスドドド・・・とブラストビートまで飛び出して、スラッシュメタルの枠にとどまらないアグレッシブさも披露。爽快かつ暴力的で、スラッシャーの皆さんは首もげ注意?でしょうか。
ここで初めて登場するBlasphemer Panzer氏のヴォーカルはダミ声系のデスヴォイスで、それも邪悪系の色合いにたっぷり貢献していますね。
跳ねるようなリフ&リズムと、目の回りそうなうにょうにょ系リフが行ったり来たり、という3曲目。これは聴いてて非常にスリリングで、ファストパートではライブでサークルピットが巻き起こりそうな様が目に浮かぶようです。
4曲目は比較的スピード感は控えめで、オーセンティックなヘヴィメタル風味が香る一品。基本スラッシュ大爆発な本作にあって、ここでほんのちょっと一息、というところでしょうか。もうちょっと地下臭さというかカビ臭さみたいなエッセンスを足すと、Celtic Frost系統の暗さや色合い雰囲気に寄りそうな気がします。
5曲目では再びSlayerみたいな疾走で・・・ギターリフから放たれるパルスがブンブンしてる刻みがReign In Bloodアルバムあたりで聴いたような響きに近い気がします。中盤に切り込んでくるギターソロはキリキリと掻きむしり系?と思いきや案外高揚感を放つという、ヒロイックな瞬間も。
ラスト6曲目はなんだか随分雰囲気違うなと思ったら、MIdnightの”Black Rock’N’Roll”のカヴァーだそう。原曲を知らないのでコメントできませんが、タイトルの通りなんだか黒塗りのロックンロール。
お墨付きバルカンスラッシュ
全体的には、スラッシュメタルど真ん中の格好良さと爽快感・攻撃性を、昔のSlayerみたいな邪悪なトーンでまとめ上げたという、安定感抜群の仕上がりと言ってよさそう。
あまり新鮮味は感じないかも知れませんが、やっぱりバルカンのスラッシュメタル勢はこういう事やると非常に巧いというのを、ここでも確かめられる作品。
もう自分がガタガタぬかすより何より、本ブログ的名レーベルStormspellが見出したという事で、クオリティは折り紙付き(?)な彼らAxecutor。このStormspellからのスラッシュを思い起こすと、セルビアのHorror Piknik、同郷ブルガリアのHadesにThe Outer Limitsとその審美眼たるや・・・てなもんです。
切れ味と重厚さを兼ね備えながら、邪悪な質感もしっかり漂う、見事なバルカンスラッシュが炸裂する6曲20分。繰り返しになりますが新編成での新作にもとっても期待したい。
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