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[レビュー]Krvolok – Šakali (セルビア/ブラックメタル)

[レビュー]Krvolok –  Šakali (セルビア/ブラックメタル)

セルビアの北部の都市ノヴィ・サド(Novi Sad)出身のブラックメタルKrvolokのデモ音源。2014年作品。セルビアのアンダーグラウンドレーベル、Grim Reaper Recordsからのリリース。このプロCD-R盤は120枚限定リリースらしく、Discogsでセルビアから取り寄せたコレは77/120になってました。

関連情報

Metal Archivesによるとバンドの結成は2009年。ギタリストのDanilo Komnenić氏と、シンガーのMilan Kovačević氏によって結成されました。ですが残念ながら2015年には解散してしまっているようです。

本作のリリースまでにはいくつかデモやEPがリリースされているようですが、詳細不明のものもあったり。内容の分かる作品のそれぞれの収録曲は1曲のみとか2曲とかなので、7曲入りの本作は事実上の1stアルバムに相当と捉えられるかも知れません。

とはいえ、7曲で約17分という再生時間なので、聴いてるとあっという間ですが。

本作”Šakali”時点のラインナップは、Danilo Komnenić氏(ギター)、Milan Kovačević氏(ヴォーカル・ベース)、Bruno Mihajlović(ギター)、Milan Klinko氏(ドラムス)の4人。

ブックレットの背表紙には、Teach your kids to Worship Satan… And burn your local churchという物騒な言葉が載せられていて、まさにド直球のブラックメタル感を放つ装丁になってます。

ブラッケンドR’n’R???

そんなサタニズム満載なブックレットのワードや、カバーアートの逆十字架と狼と思しきモチーフなどの雰囲気から想像するに、きっと音の方もブラックメタルの王道を行くスタイルなんだろうなと、勝手に思ってたのですが・・・

見事に肩透かしを食らいました(汗)。呼び知識ゼロでセルビア産ってだけで買ったのでなおさら。。

アトモスフェリック系に出てきそうな広大で幽玄な冒頭部分から、ドゥーミーな”Ave Satanas”ってコーラスに流れていくイントロの1曲目。ここまでの質感は間違いなくブラックメタルのそれ。

なのですが、2曲目以降、ちょっとずつ想像してた音と実際の音楽のギャップに混乱してきます。

この2曲目、荒涼としたリフの感じはブラックメタル的寒々しさで、低く唸るようなヴォーカルは呪術的。とすると一体何がそんなに違和感なのよ、となるのですが、ドラムスのリズムと、中盤切り込んでくるギターソロが妙にロックンロールなノリなのです。

Metal Archivesをよく見ると、ジャンルの欄がBlack ‘n’ Rollになっててなるほど納得。

まぁちょっと違うけど、Satyriconの“Fuel for Hatred”なんかも結構ロックンロール風だったし、あんな路線なのかと思いながら聴き進めてみます。

やっぱり3曲目以降も同じ様なノリで、ギターリフの影のある感じやヴォーカルはなんとなくジメジメと怨念じみた雰囲気な一方で、リズム感とギターソロが妙にカラリとしてて、不思議な感じ。

その点で言えばどの曲もだいたい同じ様なノリを持つのは共通してて、もはやブラックメタルというよりは、ブラッケンド・ロックとでも呼びたくなるくらい。個人的にはあんまり聴いたことの無いコンビネーションというかスタイルなので、初聴きの時はなかなか驚きました。というかある意味呆気にとられて、何が起こってる音楽だったのかすぐには掴めませんでしたね。

どの曲も2分台とかなりコンパクトで、曲構成やリフはかなりシンプルなので、その辺もロックンロール感に一役買っているのでしょう。一方暗めの音階というかメロディー感にはやっぱりブラックメタルが香ってて、なんとも不思議。

さんざんロックンロール風と書きつつも、アルバムラストの7曲目のリードギターのハモり具合はIron Maiden風?・・・そういえば聴いててどこかのパートはAC/DC風に聴こえた気もするし・・・ロックや正統派メタルのノリに、ブラックメタルのトーンを乗せたという感じになるのでしょうか。

なんとも不思議な音楽です。

また、音質はクリアで分離も良いので、そのへんはブラックメタルというよりはいわゆるHM/HR的。その分のダイレクト感も、ロックンロールらしさでしょうか。デモ音源なので勝手にちょっとチープな仕上がりを予想してましたが、作品としてかなり真っ当な出来上がりになってると思います。

辺境の変り種

自分が無知なだけなのかもしれませんが、こういうスタイルって案外珍しいのではないでしょうか。セルビアに限らず、メタル界全般で。

その点ではオリジナリティはばっちり、ともいえそうなのですが、作品として聴く者から好評価を得られるものなのかというと全くの謎。個人的には未だにどういうテンションで聴いたら良いかよく分からないでいます。

例えばブラックメタルのように暗黒のアート作品とか、邪悪の塊としてそれに触れるのか・・・それにしてはノリがカラリとしてるし・・・あるいはロックンロールあるいはいわゆるヘヴィメタルとして鋼鉄感をエンジョイすべきなのか・・・だとするとちょっとその割に内向きなほの暗さが過ぎるような・・・

みたいな堂々巡り。自分自身は別に音楽聴くのにあれこれ能書きは必要ないし、好きなら好きだし、なんか受け付けないならそれはそれ、というので充分だと思ってますが、一定の理解の仕方も欲しいところで、やっぱり未だに聴いてて不思議な音楽でつかみきれてません。

ブラックメタルのちょっとした変わりダネということにしておけば良いのかな?変わったスタイルに興味のある方は一度チェックしてみると面白いかも知れませんね。

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